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第25話:冬の陽光 昇格の祝杯

国立第一魔法学園の校庭に、木枯らしが吹き抜ける季節がやってきた。

 つい先日までの、あの学園祭の熱狂が嘘のように、石畳は冷たく乾いた音を立てている。

 掲示板の前に集まった生徒たちの吐き出す息は白く、期待と緊張が入り混じった熱気が、冬の澄んだ空気をわずかに震わせていた。



「――やった、やったよぉぉ!! 五級、合格だぁぁーー!!」


 静寂を切り裂いたのは、陽向ひなたの絶叫だった。彼女は自分の受験番号を見つけるなり、隣にいた雷翔らいとの背中を、壊れんばかりの勢いで叩き始めた。

「痛ぇよ、陽向! ……ま、当然の結果だろ。お前、あの魔道具作りで教官を唸らせたんだからな」

 雷翔は顔をしかめながらも、その口元には隠しきれない笑みが浮かんでいた。彼自身の番号の横には、燦然さんぜんと輝く『三級合格』の文字。

 平均が八級とされるこの学園において、一年生で三級に到達するのは、紛れもない快挙だ。

「……よかったわね、二人とも。……私も、なんとか五級に手が届いたわ」

 かりんが、控えめながらも確信に満ちた表情で二人の輪に加わった。

 彼女の「真の魔素」への理解は、蓮の助言を経て、もはや同学年の追随を許さない域に達しつつある。

 そんな「勝ち組」の輪から少し離れたところで、僕は自分の結果を確認し、小さく息を吐いた。

『一ノ瀬 蓮:十級(据え置き)』

 理論クイズであれだけの無双を見せても、実技の試験で「うっかり」魔力を暴発させたフリをすれば、評価は変わらない。平穏を愛する僕にとっては、この順位こそが最高の隠れみのだった。

「……一ノいちのせくん! また十級なの!? もう、あれだけ理論ができるのに、もったいないよ!」

 陽向が駆け寄ってきて、僕の肩を揺らす。

「いいんだよ、これが僕らしいだろ。……それより、お祝いに行こう。今日は僕が奢るからさ」

「えっ、一ノ瀬くんの奢り!? よっしゃー、焼肉! 高級焼肉行こうぜ!!」

 雷翔の現金な反応に、僕たちは顔を見合わせて笑った。



(……レイ。何か食べたいもの、ある?)

 心の中で問いかける。

 いつもなら、『当然、一番高いモンブランを用意しなさい。貴方の財布の底が見えるまで付き合ってあげるわ』と、容赦のない毒舌が返ってくるはずだ。

 だが。

『…………そうね。……貴方に任せるわ、蓮』

 返ってきたのは、鈴の音を湿らせたような、力のない声だった。

 不敵な笑みも、僕を揶揄からかうような鋭さもない。

 まるで、薄氷のようにもろい返答。

(レイ……?)

 

 不安が、背筋を冷たく撫でた。




 放課後。

 騒がしい仲間たちと別れ、僕は一人、静まり返った自宅のリビングでレイと向き合っていた。

 人型の姿でソファに腰掛けたレイは、窓の外に広がる冬の夕景を、ただじっと見つめている。

「……レイ。顔色が悪いよ。やっぱり、あの学園祭の『音』が原因なのか?」

 あの日、魔法省の深部で何かが目覚めた瞬間。

 レイは世界のことわりきしむのを感じ、僕たちの平穏に亀裂が入った。

『……蓮。……ごめんなさい。……なんだか、少しだけ……眠いのよ』

 彼女の銀髪が、以前よりも僅かに透けている気がした。

 魔法そのものである彼女の変調は、すなわち、この世界の魔素のバランスが崩れ始めている証拠だ。

 レイは弱々しく僕の手を握った。その手は、冬の空気よりも冷たく、そして震えていた。

「大丈夫だよ、レイ。僕がついてる。……何があっても、僕が君を守るから」

 僕は彼女の細い肩を抱き寄せた。


 窓の外、オレンジ色の夕闇がゆっくりと夜の色に侵食されていく。

 それは、これから始まる『策略』という名の長い冬の前奏曲のように、静かで、残酷なまでに美しかった。

こんにちは!よつばです!

レイちゃん大丈夫かな…そして5章は魔法省編⁉︎

なにかが起こる。そんな予感がします…


近況報告!私予備校が決まりまして正式にもう一年遊べるドンになってしまいました。

構想はできてるのでなんとかして完結させたい。え、今で半分?そんなの知らないなー

まぁ、どんな形になっても、完結まで温かく見守ってください!

では、次回からもお楽しみに!

私は次回話を書くのが楽しみです!私の推しが登場するかも…

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