⑦自己紹介-1
「ここが、君らが過ごす教室だ」
教室の鍵を開けて、ルナたちを手で中へと促す。
教室内は清潔で、長机と椅子が並べられている。
「好きな場所に、前から座れ」
男の言う通り、ルナたちは全員が席につく。
「改めて、俺はアレク・トーラ。君らの担任だ。
アレクと呼んでくれ、教科は座学全般」
アレクはチラッと扉の方を見て、ため息を漏らす。
呆れている仕草でさえも、色っぽい。
耐性がある人がこの場に多いのか、誰一人として頬を赤く染めることはしていない。
「おはよう、ウィリデ」
扉を無言で開け、新緑の髪に左右の瞳の色が違う男が座り込んでいた。
アレクは、男を見下す。
「お、おはよう。アレク」
男は若干裏返った声で挨拶を返した。冷や汗が止まることなく流れ続けているのは、遅刻がばれ、何事もなかったかのように中に入ろうとしたからだ。
「君、これで何回目だ?」
「50回、くらい?」
「今日でちょうど、その倍だ。おめでとう」
何がおめでたいのだろうか。
少なくとも、アレクは明るい声でこう言っているが、その目は常に冷ややかである。
男はこうも、祝い事のように言う同僚が恐ろしくてたまらない。
それはキレる。特に、入学式という晴れやかな場で遅刻をしたのだから。
満場一致で初対面の男たちの関係性が友人のような間柄なのだろうとルナは感くぐった。
「説教は後でする、カティアも交えてな。
自己紹介をしろ。ウィリデ」
「ゲッ」
命令口調で男に言うと、渋々ながら起き上がる。
「オレは、ウィリデ・フィーリア。副担任で、担当科目は実技全般だ。十分死なねぇようしごいてやるからな」
左右で色の違う瞳を細め、からりと笑ったが。
先程までの場面を見ている身からしてみれば、どのような顔をすればいいのだろうか。
それに、実技全般とスルーしたが、座学全般とはなんなのだろうか。
この学園は本当に大丈夫だろうか。
ルナは守銭奴の見た目幼女な学園長の時にも思ったことが再びよぎった。
まさか、自己紹介だけでこんなに長くなるとは・・・。
続きます。19時に更新します。
小話 ウィリデの遅刻
ウィリデ「今、何時だ?」
入学式真っ只中に目を覚ます。
通知を見ると、アレクからカンストしたメールが届いている。
ウィリデは昨日カティアが何か言っていたような気がしたが、ゆっくりと現実から目を背けるように支度を始めた。
ウィリデ「行くか」
そして、玄関の扉を開け、重い足取りで学園へと足を踏み出した。




