② アストの弱点
食堂はあるが、朝食は部屋に運んでもらい、それを平らげたルナは、直後錠剤を取り出し噛んで小さくしてから飲み込んだ。
余裕を持って学校に着けるわね。
ルナは出る直前に時計を見てそう確信した。
通学路は学生で溢れており、学校へ近づくにつれて段々と増えていった。
「わっ!!」
「おはよう、シュカ」
「ちぇー。ルナも驚かないかー」
ルナの背後から気配を消して声をかけたシュカは思っていた反応が得られず、口を尖らせた。
シュナはそんなシュカを追いかけるように後からやって来る。
「ま、まって……。あ、おはよう、ルナ」
「おはよう。シュナ」
その後は3人で談笑しながら、登校した。
誰か、何かを忘れているような気がするが、ルナは気のせいだと思うことにした。
入学してから1日目にして朝礼ギリギリに教室に入って来た者が3名。
リヒトとツバサ、ツバサに背負われているアストだ。
「ツバサ、起こしてから来いよ」
大急ぎで走って来たツバサは乱れる呼吸を必死に正している。
ウィリデと言葉とまだ寝こけているアストに朝の違和感の正体に気づいたルナは申し訳なさそうに3人に近づく。
「ツバサ、リヒト、ごめんなさい。私、兄さんが朝に弱いことをすっかり忘れていたわ」
ルナはツバサとリヒトに謝った。
「いや、大丈夫だ」
息を正したツバサはそう言った。
しかし、よく起きないな、とツバサは正直に思った。
かれこれ、ツバサたちが起こし始めて30分はこの調子だった。
一度、起きはしたが、着替えてすぐに二度寝をし、そこからずっと起こしていたが、一向に起きなかったため、遅刻ギリギリの時間になってしまいそのままツバサは担いできたのだ。
「誰でもいいから起こしてくれ」
アレクがあきれながらそう言うと、心得たとばかりにルナはアストに近づく。
「兄さん、起きなさーい」
「んー」
ルナはアストの体を優しく揺さぶり、声をかけたが、返ってきたのは返事、寝言にもとれるだろう。
アストは再び寝息を立てる。
ルナは兄に対して怒りをあらわにした。
普通はルナが怒るのは滅多にないのだが、昨日の部屋への侵入と兄妹ならではの情緒が合わさったのだ。
「兄さん、いい加減起きないと怒るわよ」
青筋を立てて、ルナはにっこりと笑顔で最後の注告をする。
今度は返事さえもない。
ルナはゆっくりとアストの耳元に近づく。
間近でその様子を見ていたツバサは見てしまった、ルナの青い瞳が完全に座っていたことを。
「兄さん、起きなさい。さもなば……」
「起きます!起きさせていただきます!!」
アストも危機を感じ、カッと一気に目を開けた。
「ルナ、心臓に悪いからやめてくれ。起こすならもう少し優しくして……」
「なら、早く1回で起きなさい、アスト」
ルナの肩を思いっきり掴み、恐怖に震えながら懇願するアスト。
いい加減、自分で起きろ。と内心毒づくルナ。
何が起こっているのかさっぱり分からない周囲というのが入学1日目、0組の朝の出来事であった。
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2026/07/15 加筆修正




