㉔ アストとルナの思惑
部屋に戻ると、知っている不法侵入者の気配がした。
「不法侵入よ、兄さん」
ルナはゲンナリして、くつろいでいる兄に対して呆れながら言った。
よく兎月にバレなかったものね。
アストならば自力でなんとかしそうではあるため、ルナは何も言わない。言ったところでアストが聞くはずもないからだ。
「それで、何か用事?」
ルナは兄に対して言うような音程でアストに聞く。
乙女の部屋に土足で踏み入っているため、いくら兄妹といえどルナもそこまで寛容ではない。
別にやましいことはないが、勝手に入られるのと許可を得て入るのとはまた別である。
「用がなきゃ、妹の部屋に入っちゃいけないのか?」
全くもって理解していないようで。
ルナはアストの相変わらずの態度に兎月に連絡してあげようかしら?と本気で思った。
「兄さん、神魔の情報は?」
神魔、どんな願いでも対価次第で叶える神をも超える力を持った半天半魔の存在。
古い文献に隠されていたことから、実在はするだろう。
しかし、情報が少ないのだ。
「まあ待てよ。今、調べている最中だ。…後どのくらいもつ?」
「半年もないわ」
「…」
アストが息を飲み、珍しく狼狽えた。
タイムリミットはすぐそこだ。
「ルナ、悔いのないようにな」
アストが学園に行こうと言い出した時には驚いたが、アストなりの気遣いだったのだと今ならわかる。
「もちろんよ」
ルナはアストにとびっきりの笑顔で答えた。
「兄さん、早く寝て、早く起きてね」
思い出したようにルナはアストに語彙を強くして言う。
「ぜ、善処する」
アストは苦虫を潰したような顔をして部屋を去った。
1人残った自室でルナはペンダントを握りしめ、天井の灯りにかざす。
中の風景がより一層鮮明に見える。
ルナは睡魔が襲うまで、眺め、そのまま目を閉じた。




