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8話 やらかしちゃった

 ベルモントの町に帰ると空が赤くなり始めていた。

 ギルドに直行し、リイナのいるカウンターへと向かう。


「ただいま、リイナさん」

「あらユウキさん。薬草採取はどうでしたか?」

「結構取れましたよ。換金をお願いします」


 アイテムボックスからラベンダーの束を取り出し、カウンターに置いた。


「えっと、ラーベンダと、後はラージラットの尻尾と魔石もお願いします」

「……」


 あれ?

 反応がないぞ?

 どうした、リイナさん?


「ど、ど、ど、どういうことですか!?」


 アイテムボックスを指差し、声を張り上げた。


 あ。しまった。


「なんでアイテムb、ムグ!」


 咄嗟にリイナの口を塞ぐ。


「リイナさん、しーっ!」


 リイナがひとしきりムガモゴ言ってから、深呼吸を始めた。

 掌が蠢く舌を覆い、吐息で湿り気を帯び始めた。

 ムスコが元気になるが、喝を入れてひっ込ませた。


 同時にリイナも落ち着いてくれたようだ。

 周りの人達は気づいていない。


「ぷはっ。な、なぜユウキさんが商人のスキルを!?」

「あー、なんというかまあ、成り行きで使えるようになっちゃって」

「どんな成り行きですか!」


 納得いかないという顔だ。

 そりゃそうだろうな。


「えっと、ラーベンダを摘み取ってる人達が他にもいて、そのうちの一人を見てたらアイテムボックスを使ってて、真似してみたら出来ちゃった…的な?」

「…よくわかりませんが、実際にスキルを行使してますし、それが使えるという事は…」


 まだ納得いかないようだ。


 沈黙。

 俺は黙秘を決め込んだ。

 だって説明のしようもないし。

 

「それでは計算いたしますので、少々お待ちください」


 黙っていたらリイナの方からこの話を打ち切った。

 考えるのを止めたのだろう。


 カウンターの上にタブレットが置かれた。

 その上に薬草の束をどさっと乗せる。


「結構な量ですね。根も揃っています。えっと…に、にひゃくごじゅうろっぽんんん!?」


 今度は何。


「なんでこんなにあるんですか!?」

「え、なんでって、摘んできたから」

「摘んできたって!いくら何でも多すぎます!ラーベンダの根は地中深くに張られているので、相当力を入れないと抜けないんですよ!しかも千切れやすいので高い器用さも求められます!」


 面倒な薬草だな。


「ラーベンダは花と根が両方揃ってないと薬草として使えないんです。だからこの魔道具で査定して、根が千切れているラーベンダやポイズンラーベンダを取り除くんです。査定基準を満たすラーベンダは1割程度です」


 クソったれなクエストだな。


「それに、このクエストを受けるような低ランク冒険者の場合、大抵体力が持たないんです。一日で10本も採れれば良いほうなんですよ!」


 えー。

 そんなこと言われても返事のしようがない。


「はあ。もういいです。ラーベンダを256本、確かに受け取りました。2560ドルクになります。銀貨二枚、大銅貨五枚、銅貨六枚です。ご確認ください」


 呆れ顔のリイナがカウンターに硬貨を置いた。

 しとやかさが消えている。

 銀貨が千ドルク、大銅貨が百ドルク、銅貨が十ドルクということか。


「続いてラージラットの尻尾と魔石ですね。これは受けていませんでしたけど、たまたま遭遇したんですか?」

「ええ、ちょっと奥まで行き過ぎちゃって」

「災難でしたね。でも大丈夫そうで良かったです」


 アイテムボックスからラージラットの尻尾を取り出すと、リイナが固まった。

 またかい。今度は何さ。


「あの~…ユウキさん?」

「なんでしょう」

「これ、ラージラットの尻尾ではないと思うのですが」

「どういうことでしょうか」

「大きすぎます。ラージラットはせいぜい2歳児くらいの身長ですので、尻尾もあまり長くありません。これはどう見ても長すぎます」


 確かに、これは二メートル程の長さだ。


「本当にラージラットですか?」

「初めて見るんで確証はないですけど、自分と同じくらいの身長でしたよ」

「…それ、多分Cランクモンスターのギガントラットぉ…」


 リイナのキャラが壊れ始めた。


「ギガント?」

「上位種ですよぉ。打たれ強く凶暴なので、普通ならパーティーを組みます。前衛が挑発して後衛が攻撃をする戦略がセオリーなので、長期戦になりやすい相手です」


 それを冒険者なりたての見習い君がソロで討伐してしまったからこんな反応なのか。

 そういえば戦闘中に鑑定しなかったな。

 切り取った尻尾も魔石も、わざわざ鑑定しなかったしな。

 ま、いっか。


「それでギガントラット討伐の報酬はいくらでしょうか」

「四万ドルクですぅ。でも冒険者初日の方がこんな、しかもジョブが…」


 取り乱すリイナの姿を見て、周りがざわつき始めた。

 目立ちたくないんだけどな。

 どうしよっか。


「なんだなんだあ、騒がしいなオイ」


 後ろから野太い声がした。

 振り向くと白髪交じりの髪をオールバックに決めた男がいた。

 シルバーフォックスとでもいうのだろうか。

 いぶし銀で尚且つ魅力的な雰囲気を醸し出した男だ。


 着物のような真っ赤なオーバーコートを羽織り、腰には幅の広い剣を左右一本ずつ帯刀している。


 丸いサングラス越しに睨まれた。

 戦争の最前線にいる兵士の様に鋭く、見透かしてくるような目をしている。

  

「「「お疲れ様です!」」」


 その場にいたギルド職員が一斉に頭を下げた。

 

「あー、良いから良いから。それより、おいアンタ」


 いぶし銀が歩み寄ってきた。

 

「な、なんでしょう」

「ライセンスカード見せてみな」


 威圧されてるわけでもないのに足がすくみ、鳥肌が立ち、寒気を覚えた。

 本能的に分かる。

 この人、強い。


 無言でライセンスカードを出して見せた。


「Fランク冒険者だあ?しかも見習いなんてジョブ聞いたことねえぞ」


 ちょ、暴露しないでよ。


「昨日今日冒険者になったFランク見習いがCランクモンスターをソロで殺れるわけねえな。分かってんのか?不正行為は即刻ライセンス剥奪、この町からも永久追放だぜ」

「不正なんかしていません。このモンスターは俺が一人で倒しました」

「嘘を貫くか。良いだろう、じゃあそれを証明して見せな」


「どうやって…」証明しろというんだ、と言いかけたら「こっちだ」といぶし銀がカウンター左のドアを開け、中庭へと歩いて行った。


 今の今まで目の前にいたのに、一瞬で背後へ移動した。

 どうやって、と頭の中で繰り返す。


スキル 瞬歩 をラーニングしました。

バトルマスター のジョブを授かりました。

バトルマスター の恩恵を授かりました。


 ああ、なるほど。スキルか。


 いぶし銀の後をついていくと、何故かギルド内にいた他の冒険者たちもついてきた。

 中庭を越えると体育館のような建物があり、中には一際大きなボクシングリングと観客席があった。

 いぶし銀はすでにリングに上がっている。


「ここはギルドのトレーニングセンターだ。上がれ」


 ロープのないリングにあがると、ブォンという音と共に何かがリングを覆った。

 

スキル 結界 をラーニングしました。


「結界?」

「良く分かったな。このトレーニングステージでバトる時、周りに被害が及ばないように魔道具で結界を張るんだ」

 

 魔道具で結界を張ったのか。ジョブがないわけだ。

 でも魔道具のスキルもラーニングできるのってチートじゃね。


「バトるって…今、ここで貴方と試合をしろと?」

「ロイだ。Cランクモンスターを一人で殺ったんだろ?手合わせ願うぜ。俺を納得させる様な動きを見せないと免許剥奪、そしてベルモント永久追放だ」


 そんな一方的な。

 観客席が埋まってきてるし。

 こいつら、分かっててついてきやがったな。

 

「分かりました、ロイさん。宜しくお願いします」

「いいのか?今ならまだ魔が差しました、で済むぜ?」

「大丈夫です。問題ありません」


 観客がざわつく。

 見栄を張ったつもりはないのだが、どうやらそう受け止められてしまったらしい。


「そうか。残念だ。リイナ、審判頼むわ」

「は、はい。それでは、両者構えて。始めてください」


 ゴングはないのかなと思いながら、静かに試合の火蓋が切られた。




◇◇◇


斉藤優樹

ヒュム

Lv7

Fランク冒険者

ジョブ 見習い 

    ┗ 狩人

    ┗ 探索者

    ┗ 剣士

    ┗ 拳闘士

    ┗ 重騎士

    ┗ 狂戦士

    ┗ テイマー

    ┗ 魔法使い

    ┗ 神官

    ┗ 考古学者

    ┗ 武器職人

    ┗ 男娼

    ┗ 商人

    ┗ バトルマスター

見習いスキル

 ・サーチ

 ・潜伏

 ・ダブルスラッシュ

 ・ラッシュ

 ・かばう

 ・バーサク

 ・テイム

 ・ファイアボール

 ・ヒール

 ・鑑定

 ・絶倫

 ・アイテムボックス

 ・瞬歩

 ・結界

体力25 (+90)

魔力12 (+70)

筋力21 (+130)

耐久18 (+130)

敏捷17 (+140)

器用17 (+140)


ジャージ サンダル ダガー

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