19話 俺のほうが彼女を幸せにできる!
帝都にやって来ていたシュラ。成り行きで空戦をしてしまい、2機を撃墜。
また彼のスコアは伸びたのだが、この突発的なイベントにより時間を取られてしまった。
ご祝儀をもらいホクホク顔のリオからの提案で、聖地に一泊することになった。
疲れたシュラがベッドに横になり、ウトウトしていると、ドアがノックされた。
「ん? ハ~イ!」
ベッドから起き上がり、ドアを開けると――そこにはピンク色のジャケットを着た、少女が立っていた。
「ああ、君か!」
シュラはちょっと動揺した。
髪型が違っていたので一瞬だれだか解らなかったのだが、ピンク色のジャケットを見て事なきを得た。
これが違う服装だったら、朴念仁のシュラには全く解らなかっただろう。
(ふう……マニューバなら、改造されてても元の型が解るんだけどなぁ)
「あの……ちょっといいかな? 話したいことがあって……」
「どうぞ! 一人で退屈していたところだから」
シュラは、女の子を招き入れて、椅子に座らせ――。
テーブルには椅子が一個しかないので、シュラはベッドの縁に腰掛けた。
「自己紹介がまだだったね、俺は辺境エスランのシュラ」
「私はリンよ、よろしく」
彼女は椅子に座ると脚を組んで、ちょっと気取って見せた。
「あ、そうだ! 君、お腹減ってない?」
「え? あの……ちょっと減ってるかも……」
「それじゃ、夕食を食べながら話そう! ここって、カレーは食べられるのかな?」
「食べられるわ。何回か泊まって食べたことがあるし……」
「そうか! じゃあカレーに決まりだね! ちょっと、お婆さんのところに行って頼んでくるよ」
「う、うん」
(ちょっと! なんか、凄い調子が狂うんだけど!)
リンの困惑など、シュラが知るはずもない。
部屋を出て、宿屋のフロントまでやって来た。
「あの、食事を頼みたいんだけど。カレーを二人前」
「はいよ~――あんた一人で、そんなに食べるのかい?」
「お客が来てるからさ」
「ははぁ……」
婆さんが、シュラの言葉にニヤニヤしている。
リンは、この婆さんにシュラの部屋の場所を聞いたのだ。
「さすが、辺境の英雄様は、手も早いねぇ」
「あの……青のナグネータさん、伝記を読みました!」
「おやまぁ! 英雄さんに読んでもらえるなんて光栄だよ! そのうち、あんたの伝記も出版されて子供たちに読まれるかもね」
「いやぁ俺は、そこまでは有名じゃないし、あはは……あの、ナグネータさんのマニューバはどうしたんですか?」
「今は、孫が乗ってるよ」
それを聞いたシュラが、ホッとした表情を見せた。こうやって、ナイツからナイツに、機体が受け継がれるわけだ。
「注文ですけど、お酒じゃない飲み物も頼めますか?」
「ぶどうのジュレでいいかい?」
ジュレというのは、果汁で作ったこの世界の飲み物だ。
発酵させると酒になるが――この世界では、そのまま飲む場合もある。
「それで、お願いします」
夕食を注文し、シュラが部屋に戻ると――リンは退屈そうに、脚をパタパタさせていた。
「ごめんよ。すぐに料理は来ると思うから」
カレーのスープを穀物にかけるだけから、すぐにできるはずだ。
「うん……」
「髪型変えたんだね。似合っているよ」
「あ、ありがと……」
リンが脚のパタパタを止めて、赤くなる。
これも、シュラの妻――マキの教育の成果だ。
(マキの髪型がちょっと変わったり、飾りをつけたりしたのを見逃すと、凄い怒るからなぁ)
「それで、話を聞くけど……」
「実は……」
リンが話かけたところで、ドアがノックされた。
「はい」
ドアを開けると、トレイを持った宿屋の婆さんだった。
「はいよ~、カレーとジュレを二人前ね」
「ありがとうございます」
「しっかりやんな」
婆さんはニヤリと笑うと、引き上げて行った。
「食べながら話そうか」
「うん」
スプーンでカレーを掬い、口に運ぶ。鼻から抜ける香辛料の香りと、穀物の甘味。
「ふぅ……美味しいな。これってお土産にできないのかな?」
「お土産にするのなら、缶詰があるよ」
「缶詰?」
「うん、金属の筒に入ってて、1ヶ月ぐらい保つの」
「へぇ――明日、お土産に買って帰ろう」
しばらく、二人で黙々とカレーを食べていたのだが、シュラが切り出した。
「あの機体は、ピンクカメオってナイツが乗っていたと思ったけど、君は娘なのかい?」
「うん……」
「でも、あんな酷い状態で受け継いだの?」
「母が撃墜されたって聞いて――知り合いの運送屋が機体を回収してくれたんだけど……」
それで預けた工房がまずかったらしい。
(金だけぼったくられて、あのザマなのか……)
「お母さんから、ナイツの教育は受けていなかった?」
「小さい頃に飛び方は教わったんだけど、あまり乗らなくなってしまって」
彼女は、ナイツになるつもりはなかったらしい。
「普通はナイツに憧れるのに」
「あちこち飛び回って、めったに帰ってこないお母さんを、ずっと一人で待っていたのよ! マニューバさえなければ――ってずっと思ってたわ!」
リンは、そう言うと、カレーをむしゃむしゃと食べ始めた。
シュラと、彼の父親も似たような感じだったので、ちょっと共感している。
(彼女の気持ちも、少しは解るけど……)
シュラも、1人で父親を待っていたが、寂しいと思ったことはなかった。彼が人一倍、孤独に強かったせいもあるのだが。
リンはその後、孤児になってしまったので、生活をするためにナイツになった。
孤軍奮闘で頑張っていた彼女だが、回りにいた大人があまりよろしくなかったように思われる。
「今でも、マニューバから降りたいのかい?」
「……働いてみて、母が大変な思いをして仕事をしていたのは解ったわ……」
「昼に言ったけど、マニューバを直して完調になれば、もっと楽に飛べるようになるよ」
「本当に、私もあんな風に飛べるようになるの?」
リンが、スプーンを置いたまま、じっとシュラを見つめている。
「ああ、彼女――ヒエンの中には、過去の飛行記録や戦闘記録がすべて記録されているはず。勿論、君のお母さんのもだ」
「あなたは、本当にマニューバと話せるのね。私もモールスで、彼女の本当の名前がヒエンだと知ったわ」
「俺は、稀人みたいだからね。魔砲も撃てるし」
「それって本当?!」
リンが椅子から立ち上がった。それぐらい、ナイツで稀人というのは少ない。
「ああ――君のお母さんは?」
「解らない……魔砲を撃ったのを見たことがなかったし」
「ヒエンの話だと、テンプルナイツにも、ゼロとかヒエンの仲間がいるようだけど」
「ゼロ?」
「俺のマニューバだよ。ここからも、彼と話ができるから、退屈しないで済むよ」
「すごい! じゃあ、私のマニューバとも話せる?」
直接は話せないが、ゼロを介して話せば、会話はできるようだ。
「まぁ、間接的には」
「彼女――って、私のマニューバは女の子なの?」
リンの母親も、ヒエンのことを女性扱いしていたので、彼女も不思議に思っていたらしいが、これで合点がいったようだ。
「ゼロの話では、マニューバに性別はないみたいだけど、オバサンみたいな話し方だったよ」
「ふふふ、本当に?」
リンが笑っているので、シュラが冗談を言っていると思っているようだ。
残念ながら――朴念仁のシュラには、女の子の前で洒落た冗談などを言う能力は、備わっていない。
「これは本当だよ。たまに、よくわからないことを言っているけど、ゼロには通じているようだし」
「私のマニューバも機体を直したいのかな?」
「それは勿論だと思うよ。君に修理箇所を伝えてほしいと言ってたのは彼女だし」
「うん……」
「ゼロも――マスターと一緒に大空を自由自在に飛ぶのが、マニューバの本懐だと言ってたし」
「マスター?」
「直訳すると、ご主人様――みたいな意味らしい」
「あんなに自由自在に飛べたら、そりゃ気持ちいいよね……」
カレーを食べ終わり、ジュレが入ったカップも空になったが――イマイチ踏ん切りがつかない彼女に、シュラは首を傾げている。
(う~ん、直した方が絶対にいいと思うんだけど……あ! そうか)
シュラは、彼女の決断が鈍っている理由が解ったようだ。
「修理の予算の心配をしているなら、俺が援助してあげるよ」
「え?! でも赤の他人のあなたに、そんなことを頼むなんて」
「なにを言ってるんだい?! あんな素晴らしい機体が、ロクな整備を受けずにヨロヨロと飛んでいるなんて、この世界の大きな損失だよ?」
それに――すでにシュラは、辺境でも有数の資産家なのだが、金があっても使い道を思いつかない。
大好きなマニューバのために使えるなら、それは本望といえた。
「でも……」
「別に、お金をあげる――とは言ってないんだよ。機体が完調になれば、いくらでも稼げるだろ? 働いて返せばいい」
「もし返せなかったら?」
「その時は――彼女は俺のものになる」
それを聞いたリンが激昂して椅子から立ち上がった。
「それじゃ、あなたは最初からそのつもりで!」
「自分のマニューバの不調も解らずフラフラ飛んでいるナイツよりは、俺のほうが彼女を幸せにできる!」
ドヤ顔のシュラに、リンが唖然とする。
まるで女の取り合いなのだが、それが本物の女じゃなくて、マニューバというところが、シュラらしいといえる。
「あ、あなたなんかに、私とお母さんのピンクを渡せるもんですか!」
「それじゃどうする? あのままだと、あのマニューバはいずれ墜ちるぞ?」
「う、うぐ……」
言葉に詰まったリンが、ペタリと椅子に腰掛けた。
「どうせ、壊して飛べなくなってしまうなら、俺のところへ嫁がせたほうが彼女も幸せじゃないのか? 勿論、お金は払うよ。そのお金で君は普通の生活をすればいい」
「わ、解ったわよ! この変態!」
再び、椅子から立ち上がったリンが叫んだ。
「え?!」
シュラが真顔になる。まるで借金の形に娘を貰い受けるオヤジのような発言を繰り返していたのだが、彼にはまったく自覚がなかったようだ。
(変態なんて言葉は心外だな。俺はマニューバのことを思って言っているのに)
彼が心配しているのは、あくまでマニューバのことで、目の前にいる少女のことはどうでのいいのだ。
「で、でも――私の身体を使えば、少しは安くしてもらえるんでしょう?」
身体をくねらせて、ツナギの開いた場所から手をいれて自分の白い肌をアピール――そんなことをやってみたリンであったが、顔は真っ赤だ。
(あ~もう! 超恥ずかしいんだけど!)
「それは、やぶさかじゃないけど、実際に機体をエスランまで運んで、中身を見てみないことには、なんとも言えないね」
(俺がやったように、機体の修理やレストアを手伝って、費用を浮かせたいってことなんだろうけど)
「君が無理をさせたせいで、機体にダメージが蓄積している可能性があるし、駆動機関を全バラしてオーバーホールしなくちゃいけなくなるかもしれない」
「そ、そんなに大事になるの?」
「もちろんだよ? そうなったら、費用の桁が跳ね上がると思ったほうがいい」
「ううう……」
「でも――君がその気なら、俺も応える用意があるよ」
「わ、解ったわ! やれば、いいんでしょ!」
リンが意を決して、ジャケットを脱ごうをすると、シュラが立ち上がった。
「ごめんね、引き止めてしまって――同年代のナイツって初めて会ったから嬉しくてさ。でも君が決意してくれてよかったよ!」
「え?! え?!」
シュラに優しく腰を抱えられたリンが、扉の前までエスコートされて放心している。
「俺たちは朝一で飛ぶけど、君はどうする? 一緒に飛ぶ?」
「え? あの、私の機体は遅いから、一緒には飛べないと思う……多分1~2日遅れるから」
「エスランの場所は?」
「む、昔――お母さんと一緒に行ったことがあるから……」
「そうなんだ! じゃあ待ってるからさ! ギュオール運送って所を訪ねればいい。滑走路もあるから、すぐに解るよ。俺もそこで世話になっているからさ!」
「あ、あの……」
「それじゃ、おやすみ!」
外に出されて、バタンを扉を閉じられたリンは、その場に座り込むと頭を抱えた
「もう、なんなのアイツ……」
リンを追い出した、シュラは上機嫌で服を脱ぎ始めた。
(あんな有名な発掘マニューバを持っていったら、レオナさんが喜ぶだろうな)
彼は目を閉じて、ピンク色のマニューバが自由自在天駆ける姿を想像して、悦に浸る。
(そうだ、カレーをお土産に買っていかないとね。マキも喜ぶぞ)
裸になり、シャワールームに入ろうとすると、ドアが開いた。
「あ、あの、さっきの話なんだけど……」
そっと顔を出してきたリンが、シュラの裸を見て固まる。
「ノックしてね……」
「……」
彼女は黙って扉を閉じると、耳まで真っ赤にして、その場にしゃがみこんだ。
「あうううう~見ちゃった……見ちゃったし……」
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――次の日。シュラがベッドの上で起きる。
真っ暗なのだが、多分朝のはずだ。照明をつけて、ゼロに話しかける。
「ゼロ、地上は朝になってる?」
『ああ、いい天気だぞ。絶好の飛行日和だ』
どうやら、ゼロの話では間違いなく朝になっているらしい。
朝食を注文するために、フロントの婆さんの所に行く。
「おはようございます。朝食をお願いします」
「ほい」
メニューを渡されたので、パンとスープを頼む。
「あの――鉄の缶に入ったカレーって、ここで買えるんですか?」
「ああ、買えるよ。何個ほしいんだい?」
「え~と――3つかな」
「はいよ~、小銀貨3枚(1万5千円)だね。すぐに持ってきてやるよ」
1缶5000円の高価な缶詰のお土産である。
「部屋にいますので」
そのまま、リオの所へいく。
「リオ、起きてる?」
バタバタと音が聞こえて、扉が開く。
「おっす! シュラ! ちょっと待っててくれ」
彼が開けた扉の隙間から、女の裸が見える――。
「それじゃ、俺の部屋で朝食を食べて待ってるから」
「おう!」
10分ほどで朝食とカレー缶がやってきて、ささやかな食事。
食器を返して30分ほど待ったのだが、リオが来ない。
シュラがリオの部屋まで行って、聞き耳を立ててみると――。
なにやら部屋の中から女の泣くような声が聞こえる。
(こりゃ、しばらくだめそうだな……)
シュラは仕方なく、荷物を持ってゼロの所へ行くことにしたが――。
(あの女の子に挨拶したほうがいいかな? でも、寝てたら起こしちゃ悪いし……)
迷った末に、挨拶しないことにした。
キーをフロントに返す。
「連れのナイツが来たら、先にマニューバの所へ行ってると言ってください」
「はいよ、あいつはどうしたんだい?」
「どうも、女の人がいるようで」
「ったく、猿じゃないんだからさ。ここは連れ込み宿じゃないんだよ」
愚痴る婆さんだが――ナイツ同士の恋愛ならいいが、プロを部屋に引っ張り込むのは、ルール違反だと言いたいらしい。
「活躍を期待してるよ。そうすりゃ、私も知り合いだって自慢できるしさ」
「妻から危ないことは控えるように言われてますし……」
「そのわりには、昨日みたいなことをしてるじゃないか」
「避けて通れない道は仕方ありませんよ。それより、小さい頃から本で読んで憧れていた、青のナグネータさんにお会いできてよかった」
「ひゃひゃ、褒めても、なにもでないよ」
有名なナイツに会えて、シュラの足取りも軽い。
本の中でしか会えなかったナイツやマニューバに出会えて、一緒に飛べるかもしれない。
彼の胸は高鳴ったが、シュラが子供の頃から読んでいた本なので、データは古い。
すでに廃業したり、引退したナイツも多数いると思われる。
婆さんに挨拶をして、薄暗く長い通路を逆に辿り――地上に戻る。
彼の眼の前に、いきなり広がる真っ白な世界に目が眩む。
「ふぁぁ~」
シュラが思っきり背伸びをした。
(地下にいると、昼なのか夜なのか、解らないよ)
駐機場に並ぶ色とりどりのマニューバを眺めて命の洗濯をしながら、ゼロの所へ向かう。
「ゼロ、調子は?」
『なんの問題もない』
リオが来る前に、マニューバの周りをグルグルと回り飛行前点検を行う。
空戦の時に外されていた増槽も取り付け完了していて、水も満タンになっていた。
通りかかった、整備の人に声をかける。
「おはようございます。整備ありがとうございました」
「おはようございます。昨日の空戦は凄かったですね」
「ありがとうございます」
整備員と世間話をしていると、ピンク色のヒエンが見える。
社交辞令の会話を切り上げると、彼女のところへ向かった。
「おはようヒエン」
『おはようございます』
「昨日、リンと話したけど、君をエスランに連れて行って、本格的な整備を行うことになったよ」
『マスターを説得していただき、ありがとうございます』
(あれ? 今日はちょっと感じが違うな……)
「君を全バラにして、新品同様にするつもりだから、期待してて」
『はい、マスターと一緒に大空を自由に飛べることを期待しております』
ヒエンに挨拶をしてゼロの所へ戻ると、彼が話しかけてきた。
『シュラ、君は私のマスターなのだから、他のナンバーズと話すのは控えるべきだ』
ゼロのその言葉に、思わずシュラが吹き出した。
「ははは、なにそれ? もしかして、嫉妬?」
(前にも――他のマニューバに乗ったら、嫉妬してたような気がしたけど)
『以前にも言ったが――私には、嫉妬などという感情はない。あくまでも事実を言ったまでだ』
「解ったよ。でも、より多くの情報が得られる機会だと思わないかい?」
『シュラの言うことも一理あるのは認める。情報連結できればいいのだが』
「このままじゃ、できないの?」
『情報連結には、アマテラスが必要だ』
「ああ、君たちのお母さんか……」
ゼロと話していたシュラだが、ヒエンの様子が気になる。
「なんだが、ヒエンの様子が妙な感じがするんだけど……」
『君が、ヒエンのことをオバサンっぽいと話していたと伝えたせいだろう』
(ええ? そんなことを気にするのに、感情がないって言われてもなぁ……)
疑問に思う彼であるが、思考ユニットたちはそれを断固否定するのだ。
シュラがゼロと話していると、リオがやってきた。
「シュラ! 悪い悪い!」
言い訳をしている彼だが、その傍らには派手な化粧をして、胸の谷間を強調した上着とミニスカを穿いた女性がいる。
リオはその女性と抱き合い、キスをしているのだが……。
(俺には、昨日のライオンみたいな女の人のほうが、マシに見えるけど。リオはレオナさんも口説いてたけど、どうするのかな?)
「近々また来るぜ!」
「あたいも一緒に行きたい……」
「はは生憎、俺のマニューバは一人乗りでな」
女が涙を流し――愁嘆場っぽいのだが、どこまで本当なのかは微妙なところだ。
本気なのか、それともキツネとタヌキの化かし合いなのか。
シュラは、リオの人間関係には口を挟まないと決めている。
それはいいとしても、いつまでたっても、リオが女とイチャイチャしてて動かない。
業を煮やしたシュラは、マニューバに乗り込むと、離陸待ちのタキシングの列に加わってしまった。
それを見たリオが慌てて、離陸の準備を始めた。
このように、ナイツというのは個人主義的で、癖のある人間が多いのだが――。
(帝国のマニューバ部隊って、どうやってナイツたちをまとめているんだろう)
待機の列に加わって10分ほどで、シュラとゼロは大空へと舞い上がった。
白いマニューバが離陸すると、地下からツインテールの女の子が走ってきて、胸のボタンを閉めた。
「ちょっと! 声ぐらいかけなさいよね! なんなのあいつは!」
慌てる彼女だが、ピンク色の機体は、離陸するのに少々時間がかかる。
途中まででも一緒に――と思っていた彼女は、いきなり諦めざるを得なかった。
(はぁ……)
うなだれる彼女であるが、この機体を直せば、彼らや他のマニューバとも一緒に飛べるのだ。
そう自らに言い聞かせると、彼女は離陸待ちのタキシングの列に加わった。
聖地からちょっと離れた場所で、シュラとゼロが空中待機をしていると、リオの赤い機体がやって来て翼を振っている。
少々呆れたシュラであったが――二人は、仲良く帰路についた。





