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Episode 43:中編

Episode 43:中編


「1825年の車輪(R-O-C-K-E-T)――仮想のストックトン鉄道」


赤い霧の迷宮と「ロコモーション1号」の幻影

シュウウウウゥゥゥーーーーッ!!

サイエンス・ミュージアムの鉄道展示エリアは、ロケット号の煙突から噴き出した人工的な「デジタルの赤い霧」によって、完全に視界が奪われていた。


さらに奇妙なことに、ハッキングされたプロジェクターが周囲の壁に、世界初の公共旅客鉄道(ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道)が走った1825年のイギリスの田園風景をホログラムで映し出し始めている。


「ホームズ、バーバラちゃん、気をつけて! 博物館の電子ロックが勝手に作動して、このエリア一帯が巨大な『密室の操車場』に変えられているわ!」


ハナコ・ハート刑事は特殊電波測定器を構え、赤い霧の向こうを鋭く睨みつけた。

霧の奥からは、1825年製の「ロコモーション1号」が実際に線路を走っているかのような、重々しい金属音と蒸気圧の幻聴ノイズが響いてくる。白猫が仕掛けた、五感を狂わせる強力な「歴史のかくサイバー・イリュージョン」だ。


(ふむ。白猫め、1825年のロコモーション1号の走行データをダミーの障壁ルークとして配置し、本命である1829年のロケット号のメイン基盤に近づけさせない算段か。だが、この2つの名機を結ぶ鉄路の歴史を素直に紐解けば、幻影の『継ぎ目』は必ず見えてくる)


「ワン! ワンワンッ!」

ホームズは、真っ赤な霧の中を迷いなく進み、ホログラムの車輪が激しく火花を散らしている一点の前でピタリと足を止めた。


バーバラの「ピストン解析ロジック・トレース

「ホームズ様、ハナコ姉様、あのロコモーション1号の幻影のピストンの動きを見るべ!」


バーバラが懐中電灯でホログラムの駆動部を照らしながら、素直な視線で歴史データの矛盾を指摘した。


「1825年のロコモーション1号は、まだ近代的な単一の煙管マルチ・チューブを持たない、古い構造だべ。でも、この幻影のピストンの回転速度は、1829年のロケット号の『高効率ボイラー』の数値で無理やり動かされてるべ! つまり、この幻影の車輪が1回転するごとに、ロンドンの地下鉄の信号システムが【18秒ずつ】過去のダイヤへと狂わされてるべ!」


(その通りだ、バーバラ君! 白猫のデジタル・かくらんは、2つの機関車の構造を混ざ背合わせることで、計算のノイズを生み出していた。1829マイナス1825の差分『4』に、ロケット号の最高時速『45キロ』の係数を掛け合わせた――【180秒(3分)】。この3分間だけ、ホログラムの出力を物理的にオーバーロード(過負荷)させてショートさせれば、かく乱の霧は完全に晴れる!)


「ブロックのパズル(R-O-C-K-E-T)が示していたのは、技術の進化ステップを正確に見極めるためのロジックだったのね!」


ハート刑事は、ルブタン・スニーカーの真っ赤なソールを博物館の床にしっかりと踏み込み、全身のパワーをノーリミッツに引き絞った。


「バーバラちゃん、3分間の秒読み(カウント)をお願い! 180秒間、私のヤード流のキックホールドで、あの幻影の駆動クランクの『実体(中継ノズル)』を完全にロックしてみせるわ!」


「いくべ、ハート姉様! 3、2、1……今だべ!」


鉄路の咆哮

「てりゃぁぁぁーーーーっ!!!」


ハート刑事の電光石火のストレートキックが、赤い霧の奥に隠されていた、プロジェクターのメイン高圧バルブへと炸裂した。

その凄まじい脚力でバルブを完全に固定し、電力を逆流させること正確に180秒――。


バチバチバチッ!!!

「……178、179、180! ショート成功だべ!」

バーバラの叫びと同時に、ロコモーション1号の幻影が不気味に歪んで霧散し、周囲を満たしていた赤い霧が一気に引いていった。


しかし、霧が晴れたその瞬間、展示エリアの最奥に鎮座する「ロケット号」のボイラーのメーターが、限界寸前の真っ赤なゾーンを指して激しく点滅を始めた。ロンドンの全鉄道網を大パニックに陥れる最終電磁パルス(チェックメイト)の発射まで、残された猶予はあとわずか。


(かくらんを破ったな。よし、最終局だ。1829年の名機の心臓部を、本来の純粋な歴史の姿へと還してやるぞ!)


「ワン!」と鋭く吼えた名探偵ホームズを先頭に、2人と一匹は最終解除コードが眠るロケット号のボイラーの喉元へと突入するのだった!

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