Episode 24:その5
Episode 24:その5
「世紀のロイヤル・ウェディングと、最高級の帰省土産(B-O-N-U-S)」
休暇の終わりと、空前の大結末
北アイルランドでの怒涛の特別休暇(船酔い、古城、SNS炎上、幽霊騒動)も、ついに最終日を迎えた。
帰省の締めくくりは、ハート財閥の親族一同が集結する、政財界の大物を招いた「超豪華合同結婚式」。
そこでもホームズの活躍(とハート刑事の超翻訳)によって、式場を狙った大規模な国際宝石窃盗団が5回連続の連携技で見事に一網打尽にされていた。
「あー、楽しかった! パパもママも名残惜しそうだったけど、ロンドンの街が私たちの正義を待ってるわ! さあ、スコットランドヤードへ帰りましょ、ホームズ!」
ハート刑事は、ヤードから支給されたボーナスを遥かに上回る「実家からの帰省支援金(桁が違う)」を手に、再びテムズ川沿いのロンドン市警本部へと戻ってきた。
トレンチコートのポケットに収まったホームズは、ようやくアイルランド海の呪い(船酔い)から解放され、いつもの凛々しい目つきを取り戻している。
(フッ、ようやく我が戦場に戻ったか。数々のドタバタに巻き込まれたが、今回ばかりはヤードの同僚たちに、英国紳士としてスマートな『帰省土産』を持ち帰ってやったぞ)
広報課の机に並ぶ「国家予算級」の土産物
「みんな、ただいまー! 北アイルランドのお土産を持ってきたわよー!」
ハート刑事が広報課のオフィスに勢いよく飛び込み、旅行カバンを開けた。
机の上に並べられた「お土産」を見た瞬間、ヤードの同僚や広報課長、果ては通りすがりの捜査一課の刑事たちまでが、文字通り目玉を飛び出させて硬直した。
お土産その1: マダムからのお礼の、最高級ダージリン茶葉「ドラゴンの鱗」20缶。
お土産その2: ハート財閥の特製、1本数百ポンドは下らない「24年熟成アイリッシュ・ウイスキー」1ダース。
お土産その3: 誘拐事件を解決した旧家から贈られた、本物の小粒ダイヤモンドが埋め込まれた「特製ウェディング・レプリカカフス」。
お土産その4: そしてホームズが選んだ、犬用最高級オーガニックビーフジャーキー(これはホームズ専用)。
「は、ハート刑事……これ、総額いくらするんだ……? 支給されたボーナスの何倍──いや、何十倍の価値があるんだよ!?」
課長の手がガタガタと震えている。
ホームズは事務机の上に飛び乗ると、短すぎる前足で、お土産の箱の配置を器用に動かした。
頭文字を繋げると、偶然にもこう並ぶ。
[ B - O - N - U - S ](ボーナス / 報奨金)
(ふむ。諸君、これらは私がアイルランドの地で、脳細胞をフル回転させて獲得した『真のボーナス(戦利品)』だ。ヤードの安い給料に嘆く同僚たちよ、これで少しは潤いたまえ)
バディの「超絶ヤード買収」超翻訳
「『B』『O』『N』『U』『S』……ボーナス。……あーーーーっ!」
お土産の配置を見たハート刑事は、ポンと手を叩き、ヤードの仲間たちに向かって満面の笑みを咲かせた。
「分かったわ、ホームズ! あなた、このお土産(BONUS)を使って、**『スコットランドヤードの全職員をハート財閥の財力で買収し、私を次の総監に押し上げるための裏工作』**をしろって言ってるのね!?」
(なぜだぁぁぁーーー!! ただの純粋な善意のお土産が、なぜ君の脳内を通ると『国家警察を揺るがす巨額の汚職計画』に化けてしまうんだ!!)
「確かにさっき、ヤードの広報日誌(写真記憶)で『次期総監選出の推薦枠、受付開始』って文字を見たわ! よし、みんな! このウイスキーとダイヤのカフスを受け取って、ハナコへの清き一票をよろしくね!」
「お、おう……! よく分からんが、ハート刑事に一生ついていくぜぇ!」
高級ウイスキーとダージリンの魔力に負けた刑事たちが、一斉にハナコを胴上げし始める。
(違う! 買収ではない! ……まぁいい。ヤードの士気が(最悪な方向で)最高潮になったのなら、結果オーライということにしよう……)
霧の向こうのオッドアイ
騒がしい広報課の窓の外。
ロンドン名物の濃い霧が窓ガラスを白く染めるその向こう、ヤードの向かいのビルの屋上に、一匹の白い影が佇んでいた。
白猫。
奴もまた、ホームズを追ってアイルランドからこの霧のロンドンへと帰還していたのだ。
お土産のウイスキーの琥珀色の光と、刑事たちのバカ騒ぎを、遠くから静かに見つめるオッドアイ。奴は首を少し傾げると、まるで「おかえり、ホームズ。ロンドンでの次のゲームを始めよう」と告げるかのように、静かに霧の中へと姿を消した。
ホームズは胴上げされるハートのポケットの中から、窓の外の気配を敏感に察知し、不敵に鼻を鳴らした。
(フッ。帰省休暇はこれでおしまいだ。モリアーティ、大英帝国の首都を舞台にした、我々の『本当の推理』を再開しようじゃないか。……このポケットサイズの相棒と共にな)
「ワン!」
ヤードの歓声に負けない、小さくも気高い咆哮が、霧のロンドンへと響き渡るのだった。




