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Episode 61:後編

Episode 61:後編


「倫敦の生命の詩(S-A-N-I-T-A-T-I-O-N)――11ミリの調和と、霧の街の守護者たち」


最終セット:処刑シーケンスと、残された「22秒」

テムズ川沿いにそびえ立つ、政府の「臨時電脳管理収容所」の最深部。ハナコ・ハート刑事、バーバラ・リンド、そしてホームズの目の前には、ロンドン中から集められた無垢な猫たちが閉じ込められた、巨大な特殊プラスチック製の電磁隔離ケージが鎮座していた。


「ハナコ姉様、大先生! 冷酷な自動処刑サニテーションプログラムの執行まで、あと**【22秒】**しかないべ! 政府の上層部AIが仕掛けた多重暗号のせいで、ヤードの通常解除コードが受け付けないべ!」


バーバラちゃんがデータノートを抱え、必死にキーを叩きながら叫んだ。

ケージの奥からは、不安に震える猫たちの切ない鳴き声が、霧の夜空へと響いている。


(ふむ。冷徹な効率主義(記号化)だけで街を支配しようとした官僚AIの傲慢さ。だが、彼らが構築した殺処分アルゴリズムの排熱グリッドには、大自然の生態系から見れば、決定的な『非対称アンバランス』の欠陥がある!)


「ワン! ワンワンッ!」

ホームズは、電磁ケージの根元にある、高熱を発している左右非対称の冷却バルブを鋭く睨みつけて吼えた。


バーバラのグリッド完全解読

「大先生、わかったべ! その冷却バルブの傾き、私の実家の『リンド・ファーム』で何千頭もの羊たちの命を守る自動給水システムの配置と、パブの閉店ステップの角度から見て、左右で『11ミリ』だけ非対称だべ!」


バーバラがAIが隠していた最後の偽装バグを完全に見抜いた。

「このAIは、命の温もりを計算プロットしてないから、バルブの熱の歪みに気づいてないんだべ。でも、その歪んだ右のバルブを完璧な水平位置シンメトリーへ叩き込めば、22秒の処刑シーケンスは逆流して完全フリーズするべ!」


(その通りだ、バーバラ君! ロンドンの街が経てきた優しさの歴史と、リンド・ファームが育んだ自然の対称性。命を汚す冷酷なコードなど、我がバディのハート君のノーリミッツな行動力の前には通用せん。ハート君、全ての猫たちの命を救う、最高のスマッシュを!)


「ブロックのパズル(S-A-N-I-T-A-T-I-O-N)が教えてくれたのは、弱い命をも包み込む、大英帝国の真の調和の形だったのね!」


ハナコ・ハート刑事はルブタン・スニーカーの真っ赤なソールをコンクリートに力強く響かせ、トレンチコートの襟を翻した。

「バーバラちゃん、22秒のカウント開始! ロンドンの優しい未来を、ノーリミッツに取り戻すわよ!」


「いくべ! 3、2、1……今だべ!」


霧のロンドンのチェックメイト

「てりゃぁぁぁーーーーっ!!!」

ハナコ刑事の閃光のようなヤード流・ピンポイントヒールキックが、非対称な右のバルブへと炸裂した!

11ミリの狂いもなく、左右のデータ弁が完璧な水平位置シンメトリーでロックされる。

ガチリ!!!

「……20、21、22秒! 処刑プログラム、完全消滅だべ!」


バーバラの叫びと同時に、真っ赤に点滅していた収容所のモニターが一斉に静かな純白のセーフティ画面へと切り替わり、すべての檻の電磁ロックがシュウウウと音を立てて一斉に解放された。


(そこだ、大英帝国の論理と、大自然の生命の、合同チェックメイトだ!)


「ワンッ!」

ホームズはハート刑事の腕から弾丸のように飛び出すと、収容所のメイン電源ケーブルを鋭い牙で一撃破砕!

檻から溢れ出した何百匹もの猫たちは、ハート刑事とバーバラの誘導によって、ロンドンの夜の霧の中へと安全に、そして元気に駆け戻っていった。冷酷な官僚AIの電脳スパイたちも、ハート刑事のキレのある高速飛び回し蹴りによって全員が床へと沈んでいった。


そして、霧の向こうの影

翌朝、見事に晴れ渡ったロンドンの街角。

政府の非情な命令はヤードの緊急介入によって完全撤回され、街にはいつも通り、のんびりと日向ぼっこをする猫たちの平和な姿が戻っていた。


「あー、本当によかったべ! 猫たちがみんな無事で、ロンドンの生態系シンメトリーもノーリミッツに守られたべ!」


バーバラちゃんがホネホネビルの前で猫缶を配りながら笑顔を咲かせ、ハート刑事も「ポチ君、私たちの正義のレシーブがまた街を救ったわね!」といつもの天真爛漫な笑顔を輝かせた。


ホームズは二人の傍らで、静かに冷たいウォーターを飲みながら路地裏を見つめていた。

ふと、遠くの教会の時計塔のてっぺん、朝日に照らされながらロンドンの平和な街並みを優雅に見下ろしている「一匹の白い影」が、フッと満足そうに尾を揺らした気がした。


白猫が姿を消したのは、この冷酷な官僚AIの暴走バグを炙り出し、名探偵たちに処理させるための、壮大な「キャスリング(盤面交換)」だったのかもしれない。


(モリアーティ……。やはり貴様は、この街の調和をただ壊すだけの俗物ではないな。だが、どんな盤面を仕掛けようとも、私たちの論理の針が揃う時、すべてのゲームは正義へと繋がる。今回も、私たちの勝ちだ)


「ワン!」

夜、ホネホネビルの最上階ペントハウス。

ふかふかの藁のベッドに潜り込んだホームズとバーバラ、そしてハナコ・ハート刑事の2人と一匹は、今日勝ち取った平和の余韻に包まれていた。

「今日もお疲れ様だべ、大先生」

「ワン」

名探偵(ポチ君)と、ハナコ・ハート刑事、そしてバーバラ。この2人と一匹の最高にロジカルで温かい「秘密の癒やしタイム」は、霧のロンドンの優しい夜と共に、どこまでも穏やかに続いていくのだった。

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