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Episode 60:前編

Episode 60:前編


「センターコートの時限弾(W-I-M-B-L-E-D-O-N)――ポチ君の猛ダッシュと、緑の超感覚」

聖地ウィンブルドンの緊迫と「爆破予告」

ロンドンに帰還したハナコ・ハート刑事、バーバラ・リンド、そしてポケット・ビーグルのホームズを待ち受けていたのは、サマーシーズンの真っ只中に沸き立つテニスの聖地・ウィンブルドンからの緊急要請コード・レッドだった。


「ハナコ姉様、大先生! 大変だべ! 明日のグランドスラム決勝戦を控えたオールイングランド・クラブのセンターコートに、白猫のAIから『伝統の白いボールに、特殊な指向性高周波爆弾を仕込んだ』っていう恐ろしい爆破予告が届いたべ!」


バーバラがホネホネビルの管理ノートを小脇に抱え、ヤードの緊急指令書を広げて叫んだ。

「なんですって!? 世界中が注目するウィンブルドンを人質にとるなんて、白猫のテニス熱もノーリミッツに歪んでいるわね!」


ハート刑事はルブタン・スニーカーの真っ赤なソールをカチリと響かせ、ヤードの警察犬部隊(K-9)の指揮権を即座に掌握した。

コート周辺にはすでに多くの警察犬たちが配備され、クンクンと不審物の捜索スクリーニングを開始していたが、白猫の仕掛けた爆弾は最新のステルスナノテクノロジーで偽装されており、通常の警察犬の嗅覚ネットワークでは「ただのテニスボール」として処理され、完全にスルー(スタンドダウン)してしまっていた。


ホームズのブロック配列と、バーバラの解読

(ふむ。通常の火薬臭ノイズを完全に遮断し、ウィンブルドンの伝統である『芝生のお日様の匂い』と同調する有機フレーバーで包み込んでいるな。白猫め、警察犬たちの優秀な嗅覚を逆手にとった高度な電脳密室トラップか。だが、どれほど自然の匂いに偽装しようとも、そのボールが持つ『物理的な質量(対称性)』の歪みまでは隠しきれん)


「ワン!」と鋭く吼えたホームズは、バーバラがリンド・ファームから持ってきた、上質な羊毛のフェルトで作られたダイスブロックを9つ、センターコートの芝生の上に11ミリの狂いもなく並べ替えた。

[ W - I - M - B - L - E - D - O - N ]ウィンブルドン


「大先生、そのブロックの配置と、コートの自動散水システムのログを見て気づいたべ!」


バーバラが素直な瞳で、芝生の水分グリッドを指差した。

「白猫の爆弾ボールは、審判台の裏にある自動供給マシンの中に紛れ込んでるべ! 散水で濡れた芝生の上を、他のボールよりわずかに『20ミリ』だけ深く沈み込むような重さの非対称アンバランスがあるべ! 決勝戦前の最終テストラリーが始まる次の**【11秒間】**だけ、マシンからその爆弾ボールがローテーションで射出されるタイムラインが逆算できるべ!」


(素晴らしいぞ、バーバラ君! 君のリンド・ファーム仕込みの『土と植物の観察眼』が、白猫のナノ偽装を物理的な重力エラーとして完全に見抜いたな! ハート君、マシンのトリガーが引かれるぞ、私の全速力フルスロットルを信じてくれ!)


センターコートのナイスキャッチ

シュポッ!!!!

激しい音と共に、審判台の裏のマシンから、時速180キロを超える猛烈な速度で「一本の白い閃光」――白猫の爆弾ボールがコートへと射出された!

カウントダウンのタイマーが作動し、ボールが地面にバウンドした衝撃で爆発デッドロックするまで、残された時間はあとわずか数秒!


「バーバラちゃん、カウントをお願い! ポチ君、行きなさいっ!」


ハート刑事の叫びと同時に、ホームズは緑の芝生を蹴り上げ、大英帝国の正義のロジックそのものと化して弾丸のように跳んだ!

空中で美しく反転する、世界一知的なポケット・ビーグル。

白猫が仕掛けた聖地のパズルを、その鋭い牙で見事に「ナイスキャッチ」する世紀の瞬間が、今まさに幕を開ける!

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