Episode 55:後編
Episode 55:後編
「千秋楽のブレーカー落としと、ヤード流・超連打バスター(B-U-R-N)」
15時の決戦、配電盤を狙え!
「あと5秒だべ! ホームズ様、ハート姉様、あのレバーを落とすべ!」
バーバラがのした工作員たちの山の上で、息一つ切らさずに叫んだ。
放火予告の15時まで、残り時間はわずか数秒。ビルのエアコン配管に仕掛けられたプラズマ点火チップが、ネットワークを通じて一斉起爆する直前だ。
(させるか! 白猫の残党ども、クリエイターたちの城を君たちの理不尽な炎で焼き尽くさせはしない!)
ホームズは弾丸のように配電盤へ向かって跳躍した。狙うはハート刑事が『ンルブ(N-R-U-B)』の超翻訳で割り出した、B回路、Uライン、R端子、N相の主電源レバーだ。
「ワンッ!!!」
ホームズが前足でレバーの先端をガシャリと踏み抜くと同時に、ハート刑事のルブタンの夏仕様ヒールが、レバーの根元へと正確無比な追撃を叩き込んだ!
「てりゃぁぁぁーーーーっ!!!」
ガチャン!!!
14時59分59秒――。
ビルの全電力が一瞬で完全遮断され、ハッキングされていたメインサーバーは強制シャットダウン。
エアコンの配管に仕込まれた点火チップは、火花を散らす寸前で完全に「沈黙」した。ホネホネビルは、未曾有の炎上危機から間一髪で救われたのだ。
ヤードの格闘練習所への招待状
「ふぅ……! 電磁ロックも解除完了、放火テロ完全阻止よ、ホームズ! バーバラちゃん!」
ハート刑事は、気絶した工作員たちを手際よく手錠で数珠繋ぎにしながら、興奮冷めやらぬ様子でバーバラを振り返った。
その瞳は、いつになく熱くきらめいている。
「それにしてもバーバラちゃん、今の羊追い式グラップリング、凄まじい破壊力だったわ! でもね……プロの刑事(私)から見せてもらうと、まだ野生の粗削りさが残っているわね。もっと技の『キレ』を磨けば、世界一の護身術になるわ!」
「技の、キレだべ……?」
バーバラが自分の両手を見つめて首を傾げる。
「そうよ! よし、決まりね! 今度、私がいつも体幹とキックを極限まで鍛え上げている、**『スコットランドヤード(警察庁)の秘密格闘練習所』**に連れていってあげるわ! あそこには世界中の最新のコンバット理論が集結しているの。バーバラちゃんの野生のパワーにヤード流の洗練されたキレを加えたら、それこそ向かうところ敵なしよ!」
(……おいおい、ハート君。一般の女の子をヤードの秘密訓練施設に拉致して、一体どんな『超人』に仕立て上げるつもりだ。今のままでも十分、熊を素手で倒せそうな勢いだというのに……)
ホームズは呆れ顔でため息をついたが、バーバラは「ヤードの練習所!? 行ってみたいべ! もっと強くなって、みんなのビルを完璧に守るべ!」と、目を輝かせて大喜びしている。
絆のプロレス・マニア
(まぁ、何はともあれ、これでビルに火をつけようとした悪党どもの野望は、完全に灰になったわけだ。ビル防衛戦としても……今回の『水揚げ』は、バーバラ君の意外な才能の開花も含めて、文句なしの満点かね)
ホームズはトコトコとフロントの絨毯へ戻り、バラバラになっていた『B-U-R-N』のブロックを、満足そうに前足で片付けた。
「さあホームズ、事件も解決したし、さっそくバーバラちゃんを連れてヤードの練習所に直行よ! まずは私のルブタン流・空中回し蹴りのステップから叩き込んであげるわ!」
「それは楽しみだべー! ハナコ姉様、よろしく頼むべ!」
二人の熱血女子が拳を突き合わせる横で、ポケット・ビーグルの天才警察犬(刑事補佐)は、少しだけ未来のヤードの訓練兵たちの同情を誘うように、クンと鼻を鳴らした。
(やれやれ。次にホネホネビルを襲おうとする命知らずな悪党(白猫の残党)がいたとしたら、次からは『ヤード流のキレをまとった野生の骨殺法』で、文字通り瞬時にマットへ沈められることになるな……。まぁ、それもこのビルの平和のためだ)
「ワン!」と、危機を乗り越えて活気を取り戻したホネホネビルに、世界一知的な生の声が一鳴き。
炎の危機をプロレス翻訳と野生の力で捻じ伏せた凸凹トリオの絆は、ロンドンの夏空よりも熱く、そしてどこまでも陽気に燃え上がるのだった。




