第5回の裏 「『要塞』? 何だコレ」
つまりは――
揉め事の罰として、割に合わないクエストをやれ。
そういうことなのだ。
これってさあ……。
まさかとは思うけど、誰かがあいつらを唆したんじゃあるまいね?
強くなったセッタに、格安で厄介なクエストを押しつけるってのが目的で……。
今さら、こんなこと考えてもしょーがないのだけど。
「とにかく、準備をしなくっちゃ」
セッタは何か吹っ切れたような顔で言った。
「用意?」
「服を買ったほうがいいって言ったろ?」
「あ、そっか……」
このファンタジーな世界で冒険者やるには……。
中古ジャージではきっついよなあ。
動きやすいのは良いけど、防御力ほぼゼロだし。
てなわけで。
冒険者の鎧や服を扱ってる店に行ったわけである。
しかし……。
「重い……」
革製だっていう鎧に盾。
手甲に脚甲もけっこうな重量だ。
つうか分厚い。
ちょっと臭いもするが、これはしゃーない。
「うーん。素人の娘さんにはちょっと無理かねえ?」
店のおばさんは困った顔で言った。
「配置は後衛なんだけど、念のために防御を固めておきたいんだ」
と、セッタが説明。
「それもわかるけどねえ? 軽くて動きやすくって丈夫、打たれ強い……。ないこともないけど、値段もそれなりにするよ? 大丈夫かい?」
「うーん……。予算はだいたい……こんなもん?」
「おや、張り込むね? ふーん……。なるほど、大事な娘ってわけかい?」
おばさんがちょっとニヤニヤする。
「まあ、なんというか恩人なんだ」
「なんでもいいけどね、こっちとしては良いものを買ってくれるお客は大歓迎だよ」
こういうわけで。
私の装備は決まった。
特製の革服。
同じく革製のズボン。
下には厚手の長袖シャツ。
靴の登山靴みたいだけど、頑丈なやつ。
これも動きやすい。
手袋も買った。
ちょっと暑苦しい気もするけど、命にはかえられないし。
着替え終わってみると――
「おおお……」
自分でもちょっとビックリ。
見かけだけだが、けっこうそれっぽくなった気がする。
着ている服を軽く殴ってみた。
わりと強めに殴ったけど、響くような不快感がない。
振動というか衝撃が薄まってる感じ。
「ちょっと高いけど、それに見合ったもんだよ。刃物にも鈍器にも強い」
店のおばさんは自慢顔で言った。
「ありがとうね、セッタ……」
「いやぁ、そんなの。ホントは危ないから残ってほしかったんだけど」
セッタはすまなそうに首を振った。
「ギルド直接のアレだから、断れなかった。情けないけど……」
「いいよ。ひとりで残されたほうが不安だし」
「そう言ってくれると、助かるな……」
苦笑するセッタへ、
「いや、ホントに残されるほうがキツいんだって! 私、行くあても身内もいないんだから!」
思わず本音をぶっちゃけてしまった。
「そりゃいきなりクエストに出るのは怖いけど……。そうも言ってられないんでしょ?」
「まあ、うん。そうだね」
私の質問に、セッタは言葉を濁す。
そんな彼に私はつい、
「もし何かあるとしたって、死んじゃうとしてもさ……。それでも、一緒のほうがいい」
「……え」
「寂しいし、こわいもん」
「そ、そっか」
「うん」
うわぁ……。
言ってから赤くなってしまった。
頬が熱い。
こんな若い子に、いい年のおねえさんが言っちゃったよ。
いや今現在は同年代だけど?
でもさ?
ほら?
経験値とか精神年齢ってあるじゃん?
そう思いかけたけど、やはり内面はあまり成長で来てないらしい。
ああ、情けないこっちゃ。
***
クエスト決行の日。
私たちはモンスターのいる場所にやってきた。
何か……。
よくわからないけど、ちょっとギリシャっぽい建物の廃墟だ。
あちこちに草や苔が生えている。
そうこうするうち、モンスターが出てきた。
雪駄が素早く反応して、
「ホブゴブリンだ」
そういうことらしい。
って……。
え?
でかくない?
何か人間くらいありそうじゃないか。
ゴブリンって小さいんじゃあ?
いや、こいつらはホブがつくから別種か?
私がボケボケしているうちに戦闘は始まってしまった。
……。
ヤバい。
数が多い。
囲まれそうじゃないか!?
何か、何かセッタを手伝えることは!?
これじゃ足手まとい。
っていうか、私自身がデバフみたいなものだろ、現状!?
何か、何かスキルとか!?
追いつめられ、必死に願っていると――
頭に何が囁いた……。
いや、ひらめいたような?
どっちだっていい!
『要塞』
何だコレ?




