0035 イベントと風のダンジョン 2
「わぁ……すっごいいい景色だ……」
風のダンジョンの中へと足を踏み入れた紬たちの前に広がっているのは、ダンジョンの中とは思えないどこまでも広がる草原だった。
「これは中々攻略が大変そうなダンジョンであるな……」
「うん。でも迅からマップを貰ってるから、一応早く終わらせられはすると思うんだけど……。せっかくならね?」
「うむ。言いたいことはわかっているでござるよ」
紬とマサムネは顔を見合わせて、頷いた。
次の瞬間、二人して走り出した。走り出した二人の先には、羊のモンスターが数体危機感もなく歩いている。
「やっぱり最初は自分で攻略しなくっちゃ!」
紬は気づかれる前に一気にスピードを上げ、背後から短剣で連撃を加えた。
羊は耐えられるはずもなく、光となって消えていく。
それに乗じるように、マサムネも右手の剣を大きく振り抜く。
紬に攻撃しようとしていた羊たちは、想定外の攻撃を避けきれず、一発で倒れた。
『マサムネのレベルが上がりました』
「おっ、レベル上がったみたいだよ」
「うむ。新しいスキルも入手できたみたいである」
ナイトの中に入っているマサムネ自体の戦闘能力は、スライムと同等レベル。
しかし、ナイトのおかげで戦闘能力がナイトと同じになり、こうして戦えている訳である。
「あとで試してみたいでござるな」
「うん。進みながら戦おうか」
紬とマサムネは、自分たちの思う正しい方へと足を進めていった。
◇ ◇ ◇
「あ、階段あった」
思うままに行動するようにしてから30分。
紬たちは迅からもらったマップを使うことなく、直感で階段に辿り着いてしまっていた。
「なんと。吾輩はまだ戦い足りないくらいなのでござるが……。新スキルも試せていないでござるし」
「中ボスで試してみたらいいかもね。特にもうこの階層でやることもないし……中ボス戦……やる?」
「やらない選択肢はないのではないでござるか?」
「せいかーい。それじゃ行こうか」
紬とマサムネは、一応強敵に備えた準備をして、階段の前に立ちはだかるモンスター、中ボスの元へと向かう。
「グォゥゥゥゥゥゥ!!!」
紬たちを見つけた、3階建てのビルほどの大きさの羊が大きな雄叫びを上げた。
「いざ尋常に!」
先手必勝、とマサムネが中ボス目掛けて駆けていく。
羊はマサムネ目掛けて地ならしで攻撃する。マサムネは盾で衝撃を防いだ。それでも地面を伝わった衝撃はマサムネに伝わり、マサムネの足を止めた。
「攻撃力強化、速度強化」
紬はマサムネにバフをかけた。
バフを受けたマサムネは、剣を天に掲げてスキルを発動した。
「剛力、硬化」
マサムネが持っているバフスキルも発動し、マサムネのステータスは大きく跳ね上がった。
ここがチャンスと、中ボスはすごい勢いで突っ込んできている。
それを見たマサムネは入手したばかりの新しいスキルを発動した。
「雷撃」
マサムネの剣にみるみるうちに紫色の電気が纏われていく。
紫色の電気が剣を全て覆い隠そうと、目にも止まらぬ速さで纏われていく。
バチッ
電気がスパークしたかのような音が鳴った。
その瞬間、マサムネは大きく剣を振り抜いた。振り抜かれた剣は中ボスの体を大きく斬りつけた。そして、剣に纏われていた電気が、剣を伝って中ボスの体に乗り移った。
「メェェェェェェェェェェ!!」
大きな叫び声をあげて中ボスはその場に倒れた。
体に入った電気は体内で大きく爆ぜ、体のあらゆる器官の自由を奪ったのだ。
「ナイス、マサムネー」
「主人のバフのおかげでござる。バフがなかったら一撃とはいかなかったでござるよ」
「逆に言ったらバフしかしてないけどね」
紬とマサムネは倒した中ボスからドロップしたアイテムを回収した。
特別なアイテムではなかったが、マサムネは初めての紬に対する献上品だ、とニコニコで紬に渡した。
「よし、それじゃ2階層行こう!」
「まだまだここからでござるな!」
紬とマサムネは、ダンジョンに入ってからたったの40分で1階層を攻略し、2階層への階段を下った。
この記録はさりげなく1階層攻略の最高記録だった。




