0023 イベントと水晶ゴーレム
「ふぅ、やっとひと段落できそうだ……」
9:00。
イベントが始まってから9時間が経ち、多くのプレイヤーはログアウトして、紬のダンジョンに訪れる人も少なくなってきている。
紬は、イベントが始まってから持ち場でひたすらプレイヤー狩りを行い続けていた。そのおかげで限りなく0に近かったDPは、58000となり、目標の半分を達成していた。
「いやー、これ今日で溜まってしまうのではー?」
紬は明らかに調子に乗り始めた。
しかし実際に、このままのペースでいけば10万DPのダブルスコアさえ見えてくる。そのぐらいのペースなのである。
「そういえば、レベルどうなったかな?」
ツムグ
Lv.16
HP 130 / 130
MP 3 / 85
STR 25(+11)【25UP!】
VIT 0(+5)
AGI 35【15UP!】
DEX 48
INT 42
装備
頭『なし』
体『麻のローブ』
右手『鉄の短剣』
左手『なし』
足『なし』
靴『なし』
アクセサリ『なし』
『なし』
『なし』
ジョブ
『エンチャンター』
スキル
「土魔法:初級」
「隠密」【進化】
「魔力回復:微」
「火魔法:中級」
-「火球」
-「火炎放射」
『付与魔法:中級』
-「攻撃力強化Ⅱ」
-「速度強化Ⅱ」
「うーん……これでいいか!」
紬はレベルアップによって取得したステータスポイントをSTRとAGIに全て割り振った。近接戦闘で戦っている以上、必要になるのはこの2つだった。
STRとAGIは高いとは言えないが、「攻撃力強化Ⅱ」と「速度強化Ⅱ」の効果によって、基礎値に10分間+20される。しかもMPは5しか消費しない。最強のコスパ魔法である。
「MP切れしてるし、一回休憩するか!」
MPは道具による回復と時間経過による回復しか回復方法はない。
しかも、時間経過は1分に1MPと速いとは言い難い速度で回復していく。
しかし、紬の場合は「魔力回復:微」があるため、1分に2MP回復する。たった1MPでも効率は2倍である。適当に取ったスキルがここに来て、紬を大いに助けていた。
「シルト、お疲れ。そっちはどんな感じ?」
「マスター……あいつら何回来るのさ。こっちはもう飽きてくるよ……」
シルトの話によれば、倒すまで挑もうと3時間の間に5回も戦いを挑んできたプレイヤーがいたらしい。しかし、あんまりにも弱くて3回目くらいから面白くなかったらしい。
「もっと強くなってから挑んでほしいよね!戦うこっちの身にもなってほしいよ!」
「う、うん……そうだね」
「やっぱりマスターもそう思うよね!?はぁ……もう嫌になっちゃう」
紬はシルトがストレスが溜まっていることを察して、そっとしておくことにした。これ以上、ここにいたらシルトの愚痴が永遠に始まってしまう。そんな気がした。
紬は逃げる様にして、管理部屋に入った。
「ふぅ……あれは相当ストレス溜まってるなぁ……」
管理部屋に来たはいいものの、特にすることはない。
ログアウトをすることも頭をよぎったが、まだしたくないという気持ちが勝ち、ダンジョンの改装をすることにした。
この調子でいけば、かなりのDPが余る。
なので、先にダンジョンを改装してくるプレイヤーをもっと増やしてやろうと企んでいた。今のDPでできることを見ながら、どこをどうしようかと考えていく。
今の状態だと、手頃なボスがいなく、簡単に狩れるスポナー部屋しか需要が無くなりかねない。そのため、割と倒せる手頃なボスを出すことにした。
とはいえ、手頃なボスといってもどのモンスターがどのくらいの強さなのか、説明を見ても全くわからない。
「ゴーレムならみんな倒せるかなぁ……でもなぁ……倒されるたびに召喚すると、コスパ悪いんだよな……」
DPを貯めるためにボスを召喚するため、どうしてもコスパのいいボスである必要がある。しかし、そんなモンスターがいるはずも……。
「いた!この子だ!」
紬が見つけたのは、今回のイベントで登場した新モンスターの「水晶ゴーレム」
だった。水晶ゴーレムは召喚に1万DPかかるものの、時間経過によって復活することができる。その時間が3時間と比較的長い欠点はあったが、それでも明らかにコスパがいいことに違いはない。
水晶ゴーレムはゴーレムよりも少し強いぐらいの強さで、ゴーレムとは違い、水晶を地面から生やす「晶柱」という範囲攻撃のスキルを持っている。
多くのプレイヤーが来るイベントにも、ぴったりのスキルと強さだった。
「水晶ゴーレム用の専用部屋を用意して……まあ、スポナー部屋の隣でいいか」
水晶ゴーレムのボス部屋は、スポナー部屋の隣、紬のいる通路の反対側に新しく作られる。スポナー部屋から行けるところには、強い敵が必ず待っているということである。
「さっさと改装しちゃいたいし、プレイヤー倒してくるか!」
ダンジョン内の改装をするためには、プレイヤーがダンジョン内にいない様にしなくてはならない。今いる3人のプレイヤーがいなくなれば、新しく来る可能性が低い今が改装のチャンスだった。
「バイバーイ」
紬は後ろから「隠密」でこっそり近寄り、後ろから短刀で一刺し。顔を見られる前に、もう一刺し。残ったプレイヤーは火球で倒す。難なくプレイヤー3人を10秒もかからずに倒し切った。
「よし!改装スタート!」
紬がウィンドウの開始をタッチすると同時に、ダンジョンは大きな音と共に、新たな部屋を作り始めた。




