0010 ダンジョンと最強プレイヤー1
「やっぱりバレてるよね……」
紬はリビングで掲示板を見ながら、悲痛な声をあげる。
昨日魔法をプレイヤーに向けて放ってしまったことで、掲示板でダンジョンに魔法を放てるモンスターとグレイとウルフが出現したとバレてしまっていた。
「仕方がないか!こうなったら徹底的に強くしよう!」
紬には明確な目標があった。
それはダンジョンを大きくして、迷宮と呼ばれるぐらいの大ダンジョンにしてやろうというものである。
ダンジョンは階層を増やしたり、転移装置を導入したり、いろいろできることが意外に多い。まあ、階層を増やすのには100万DP、転移装置は150万DP必要なのだが。
「今日も頑張ろうね、みんな!」
昨日の魔法騒動のせいであれからプレイヤーは入ってきていない。
そう考えると、今日も来ない可能性が高いのだが、誰かしら来るだろうと紬は深く考えていなかった。
『4名のプレイヤーが侵入しました』
「おっ……きた!さてと、お手並み拝見と行きますか」
紬は気づいていなかった。
入ってきたプレイヤーが紬が最も危惧していた存在だということに。
「おっ、トラップのりこえた。この調子ならここまで来れそうだね」
紬は戦闘の準備をする。魔法の発動をすぐにできるようにイメージを始めておく。
「来たね」
部屋に入ってくる4人のプレイヤーを見て、紬たちは臨戦態勢に入る。
「私たち勇者の栄光は君たちを倒す!」
先頭にいた剣士のプレイヤーが紬にとって衝撃の発言をする。
そう、この4人プレイヤーは勇者の栄光と呼ばれている最強プレイヤーのパーティだった。
「おぅ……マジですか……」
紬は相当驚いていた。
それこそ発動準備していた魔法がキャンセルされるくらいに。
「まぁ……やることは変わらないよね!」
紬は改めて気合いを入れ直し、魔法を発動させる。
「攻撃力強化Ⅰ」
この魔法はクールタイムの関係で、戦闘中に一度しか打てない。そのため、攻撃力の高いゴーレムではなく、グレイトウルフにかけることでヒットアンドアウェイの火力を高めることにした。
「バット!超音波!」
バットは紬の声に合わせて天井から一斉に飛び立つ。一直線にアーチャーと魔法使いめがけて飛んでいき、超音波が放たれた。
見事、放たれた超音波は命中し、DEXとINTを下げることに成功した。
「嘘……!ごめん、私超音波くらった!」
「ごめん、あたしも!」
「ちっ、あいつら連携してきてやがるぞ。どうする、リヒト」
「なにも気にする必要はないさ。僕ら2人で倒せばいい話だろう?2人はサポートを頼むよ」
「わかった」
リヒトと呼ばれた剣士は話を終えると、腰の剣を2つに分解して双剣にする。
彼の剣は、このゲームでも有数の激レア武器だった。
さらに彼に向かって魔法使いは強化魔法をかける。
彼のSTRはゴーレムの高いVITを超える数値となっていた。
「いくぞ!」
剣士は一瞬でゴーレムとの距離を詰めて、攻撃を繰り出す。
「聖斬撃」
剣士から放たれた攻撃はゴーレムのVITを貫通して、ゴーレムのHPを半分削り取った。
「火力高すぎっ……!」
剣士に続くように斧使いもゴーレムに向かって走り込んでくる。
このままではゴーレムがやられてしまう。
しかし、紬はこの瞬間を待っていた。
「ガウッ!」
「……っ!」
全員がゴーレムに注目が集まった瞬間、グレイトウルフが後衛のアーチャーに奇襲した。必中の矢を打てるアーチャーを、STRのあがった攻撃で一撃で葬る。
「逃がすかっ……!」
「ガウッ」
グレイトウルフは剣士からの反撃を高いAGIで軽々と避け、ゴーレムを攻撃しようとしている斧使いの背中に一撃を加えた。
攻撃の喰らった斧使いは体制を崩し、大きな隙が生まれた。
「ゴーレム!」
「ゴゴゴゴゴ!」
「こりゃ、無理だわ……」
ゴーレムの重い一撃を正面から受けた斧使いは、何かをあきらめたようにため息をつき、光となって消えていった。
「なっ……私たちを2人も倒すとはな。想像以上だ」
まだ余裕そうな剣士を見て、紬はにこっと笑って言い放った。
「まだここからだよ」




