精鋭たち
会議室を出たディミトリアスとマルヴィナは、速やかに討伐隊の待機所へと向かった。
遠縁である二人の間に言葉はない。
しかし、背負うべき重責を共有する者同士の、静かな連帯があった。
待機所にはすでに二人の青年の姿があった。
「お待ちしておりました、ディミトリアス先生」
黒髪に紫の瞳を持つ青年――クレメンスが静かに一礼する。
背筋はまっすぐで、わずかな緊張が肩に宿っていた。
結界・封印術の専門家であり、十八歳で師範魔術師の位階を得た、二十三歳の逸材だ。
「オイラ、待ちくたびれちゃったよ」
欠伸をしながら言ったのは、ボサボサの黒髪に無精ひげ、着古した衣服をまとった青年――ニコラスである。
場の空気とは不釣り合いなほど気の抜けた態度だが、灰色の瞳の奥には、幻惑術師としての異常な鋭さが潜んでいた。
彼もまた二十歳で師範となった奇才であり、ディミトリアスとは同門の弟弟子だ。
「……状況はお聞きいたしました」
「モーリス先生、闇落ちしちゃって?」
淡々としたクレメンスとは対照的に、ニコラスの口調はどこまでも軽い。
待機所の空気の重さをまるで感じていないようだった。
「自分の弟子を喰っちゃうなんて、激ヤバだよね。一番弟子もでしょ? オイラこんなだけど、どんなことがあってもダニエルだけは絶対に食べないよ。オイラが喰われた方が断然いい」
ニコラスの軽口が続く中、ディミトリアスは無言で地図を広げた。
「この辺りです」
マルヴィナは解析データを元にモーリスの位置を静かに指し示す。
それは国境付近にある険しい山脈。
若き日のディミトリアスがモーリスとともに水脈を調査した場所だった。
湿った土の匂い、冷たい山風、そしてモーリスの背中……。
ディミトリアスは思わず息をついた。
地図を見ていたクレメンスが、不思議そうにディミトリアスに視線を動かしたときだった。
「ねぇねぇクレちゃんもそうでしょ? カルロス君……」
ニコラスがぬうっと地図の上に顔を出す。
「黙れ」
ディミトリアスがニコラスの顔面をはたいた。
「イタタタ。ひどいよぉ~」
顔を押さえてうずくまるニコラスを無視し、三人は再び地図へ視線を戻した。
作戦会議は重く静かに進行していった。




