おまけ
本編にも少しだけ出た王女様から見たお話です。
ある晴れた夏の日の午後。お城の一室で二人の子供がお茶をしている。
一人は黒髪に青い瞳、利発的な顔の男の子。もう一人は黒髪に琥珀色の瞳、優しそうな雰囲気の女の子。この国の第三王子のシリウス・アンタレスとその姉である第一王女アダラ・アンタレスである。
アダラがシリウスに尋ねる。
「この間のお茶会でスピカに何かしたの?シリウスが来てからスピカの様子が変だったわ。」
「ハンドサインで話していただけだよ。」
「ハンドサインって?」
「声を出さないで意思疎通するために手で出すサインだよ。それでスピカにイザールはハゲって言っただけさ。」
「だからスピカはイザールの頭ばっかり見ていたのね。まったく、あなたたちは何をしてるの。」
呆れたように話すアダラにシリウスが続ける。
「スピカが今度は距離があってハンドサインが見えない時のために、光の点滅の仕方で意思が通じるような方法を考えてるって言っていたよ。」
「スピカって、とってもいい娘なのだけど少し変なのよね。そこも可愛いのだけれど。」
「スピカは婚約が無事に続くか不安みたいだね。その不安をなくすよう努力するのも婚約者の務めさ。」
「仲がよくて羨ましいこと。」
シリウスの甘い言葉を流すように、アダラはお茶を口に含んだ。
ある秋の日の夜、お城の一室で青年と令嬢が話をしている。
一人は何かに絶望した様子のこの国の第三王子のシリウス・アンタレス、もう一人は心配そうな表情のこの国の第一王女アダラ・アンタレスである。
「スピカに婚約破棄されるかもしれない…。もうあの女の調査はやめる。侯爵に土下座しに行く。」
「ちょっと、今調査をやめたら全て水の泡になるでしょう。スピカは事情を知っているわけだし、なんとか引き止めなさい。」
「スピカは恋愛感情ないって言っていたし、私のことなんかどうでもいいのかも。」
いじけた様子のシリウスにアダラは深いため息をつきながら
「どうでもよかったら、今までスピカがやってきたことは何だったの?あなたたちって毎日話しているのに大事なことは伝えてないのね。」
「…自分の気持ちを伝えて拒絶されるのが怖いんだ。情けないよ。」
「スピカがシリウスを傷付けるようなことをすると思う?とりあえずスピカに婚約を維持してもらうよう頼んで、一刻も早く問題を解決しなさい。そして当たって砕けなさい。」
「砕けたら困るよ。でも、もしスピカの気持ちが私になくても好きになってもらえばいい。何があっても結婚する。」
「その意気よ。でもスピカが本気で嫌がってたら止めるわ。」
「姉さんはどっちの味方なんだよ。」
「スピカよ。だって可愛いもの。」
その言葉にシリウスは久しぶりに力が抜けた様子で笑うのだった。
ある晴れた春の日。雲一つない快晴。まるで空も恋人たちを祝っているようだ。
幸せそうに結婚式を挙げているのはこの国の第三王子のシリウス・アンタレスとその婚約者である侯爵令嬢スピカ・ミアプラである。
たくさんの人が祝福する中にこの国の第一王女アダラ・アンタレスとその侍女もいた。
「どうなることかと思ったけれど、無事にまとまって良かったわ。あんなに想いあってるのが丸わかりなのに本人たちは気づかないのだもの。やきもきしたわ。」
「アダラ様がサルガスに嫁がれる前に無事に見届けられてよかったですね。」
「本当に。あのままだったら気になってサルガスに行くどころじゃなかったわ。」
少し不安げな表情でアダラが続ける。
「もうすぐ出立の日だけれど、少し不安なの…。」
「アダラ様なら大丈夫ですわ。それに、万が一上手くいかなくとも私がついております。」
「そうね。ケイトもいるし、スピカが映像付きで話せる魔法具をプレゼントしてくれたから寂しくないわね。」
「今は転移できる魔法具を開発していると聞きました。」
「そしたらすぐに帰ってこれるわね。でも、きっと二人みたいに相手を思いやって自分の気持ちを正直に伝えれば、いい関係になれると思うの。私も頑張るわ。」
花吹雪が舞う中、アダラは二人を優しく見守っていた。
アダラはこのあと無事にサルガスの王太子と恋に落ちます。
拙い文章をお読み頂きありがとうございました。
日間異世界ランキングで、この作品を見たときは目の錯覚かと思いました。
感想、レビューまで頂けるとは思っていませんでした。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
蛇足&駄文失礼いたしました。




