05-26-0212
Side:ラブ
何故かぼくまでアッシュさんのような規格外にされた気がします。
とはいえ仮にぼくが入るとしても、その規格外は幅が大きすぎる気がしますけどね?
ぼくが規格外に入るギリギリなら、アッシュさんんは遠すぎて見えないくらいでしょう。
そこまで違うという事を理解していないから言えるんです。
まあ、口には出せませんからぼくも言いませんけどね。
そもそも唯のヴァンパイア族と神子は同じカテゴリーではありません。
同じにする事すらあり得ませんし、ハッキリ言えば不敬だと思います。
それもまた口には出来ない事ですし、ぼくもアッシュさんを崇める側には置きたくないですしね。
だからこそ口にはしません。
それはともかく昼食を終えたぼく達は、再び町を出て統率者を探します。
「それにしても、荷車を借りなくてもいいから楽だよ。
歩いていれば済むし、警戒はしているけど音もそこまで立てないしさ。
荷車の音でモンスターに見つかり、その所為で戦闘するなんて事も無いからね。
ありがたい限りさ」
「荷車を借りるお金も払わなくて済むし、本当にありがたいよ。
異空鞄なんて滅多に持てない物っていうか、国宝になってるような物だもん。
普通の者は誰も持ってないよ」
「代わりにアッシュの異空鞄は邪気に塗れてるけどね。
アレはアッシュだから使えるし、他に持てるのはラフィルだけだよ。
それ以外が持つと邪気に汚染される代物でもある。
だからこそ中身は安全だと言えるんだけどさ」
「悪徳なヤツが持ったら狂うか悪夢を見るか。
盗もうとした子供が触れた瞬間倒れ、起きたら悲鳴を上げて逃げて行ったもの。
どんな目に遭ったのか知らないけど、わたしはそんな目に遭いたくないわ」
「そういえばマーヤはたまに触れてるけど、その割には何も無いね?」
「悪意が無ければ大丈夫なんだと思うわよ?
そもそもわたしがアッシュに対して悪意を持つ理由も無いしね」
「まあ、そりゃそうだ。
あたしも持つ理由は無いけど、となると運ぶくらいはあたし達でも出来るのかね?
その辺りは分からないし、ちょっと怖いけども」
「確かにそれはありますね。あまり試してみたい事ではありません。
そもそもラフィル殿は邪獄樹製の武具を持てるくらいです。
ぼく達とは邪気に対する耐性が違いますから、比べられないんですよね。
加護もあって」
その言葉で<烈華>やシャムナさんの目線が、ラフィルさんの髪に向かって集中します。
濃い灰色の髪の時点で邪神の加護は確定ですし、加護を新たに受ける事は出来ずとも、未だに持ち続けるのは可能なようなんですよね。
「おそらく夢に出て来た神核ってヤツの御蔭なんじゃないかい?
言い換えれば邪神はまだ生きてるって事さ。
砕かれたのも肉体だけだし、それ以外が死んでないなら復活できるんだろう。
だから浄化の女神が………」
それ以上は言えませんよね。
口にするとマズい気がしますし、迂闊に話しても良い事なんてありません。
浄化の女神は、今や<狂愛の女神>です。
何をされるか分からない以上は、口を閉じておくのが無難でしょう。
それにジャネスさんが口を閉じた事で何かを悟ったのか、それ以上は何も聞こうとはしない<烈華>とシャムナさん。
この方々も何気に危険を察知する能力は高いですよね。
致命的な失敗はしない感じでしょうか?
そんな雰囲気を感じます。
軽そうに見えて、最も危ない事はしない。
もしくは一番の危険には近づかないって感じですかね?
天然でやっている気もしますが、天然でそれが出来るというのも凄いと思います。
「おっと、荷車を牽いてる奴らが戻って来てるみたいだね。
帰るのは昼過ぎになりそうだけど、それでも笑顔みたいじゃないか。
やっぱりハンターしてるのが性に合ってるんだろうね、アタシ達と同じように」
「今さら別の事が出来ないだけなんだけど、それでも今さら普通の暮らしも出来ないんだろうね。
結局、戻って来て再結成してるくらいだし」
「だろうね。
無理矢理に離れても、きっとコレじゃないって後悔しながら生きる事になるよ。
良いも悪いも、嬉しいも悲しいもやってきたんだ。
ハンターは生き甲斐になっちまってるのかも」
「本当に色々な事があったからねえ。
確かに今さら普通の暮らしは………どこかで破綻すると思うよ、納得できずにさ。
ハンターやってる間は苦しいだの大変だのと思うんだけど、いざ離れるとなると………」
それぞれに色々と思うところはあるんでしょうね。
ジャネスさんは銀級に上がる事が目的だったようですし、それはお兄さんに会ってオーガ族の秘伝を習うって事だったはず。
とはいえ今はそこまで強い思いも無さそうですけどね。
アッシュさんの真似をしたりで強くなっていますし、それもあって急いでいない感じです。
今もまだ強くなれるなら、確かに急ぐ意味も無いでしょう。
ぼくでもそう思います。
こちらに荷車を牽いてくるハンターに挨拶をしてすれ違います。
特に何も無く通り過ぎましたが、その前からも続々とやってきますね?
モンスターが固まってる場所があるんでしょうか?
「さっきの連中は穴兎とか穴鼠だったから、この先に連中の巣があるんだろうね。
良さ気な穴があると取り合いになるっていうし、放っておいても集まるんだろうさ。
他にもモンスターは居るだろうから、統率者も居そうだね」
「次は何だろうね? まさかとは思うけど、巨大な穴兎が出てきたりして」
「出て来るって事は穴を掘ったんだろうけど、その大きさの穴兎や穴鼠だと崩落しそう。
そもそもそこまで大きな穴を掘るとは思えないけども、掘ったとしても使えないんじゃない?」
「なら穴兎や穴鼠じゃ「ギャア!ギャア!」なくて………」
何かの鳴き声のようなものが聞こえたので、ぼく達はそちらの方を確認してみます。
すると大きな鳥が飛んでいるのを発見。
というか、地上のハンター達を狙ってる?
「アヌマー鳥だけど、あの大きさは統率者か。
しっかし何でハンターを狙ってんだろ?
巣を攻撃でもされたかねえ?」
「雛を盗まれたか殺された?
アヌマー鳥は怒り狂うとメチャクチャ攻撃的になるからねえ。
余計な事はしない方がいいんだけど………統率者だと分かんないか」
「確かにね。
普通のアヌマー鳥は知ってるけど、統率者の動きなんて知らないしさ。
案外とずっと攻撃的なのかも」
「そりゃあ厳しいね。
アヌマー鳥って割とやられたらやり返すって感じで執拗だし、倍返しにしてくるんだよ。
そいつがやられても無いのに執拗に襲ってくるんじゃ、大変なんてもんじゃないんじゃないかな?」
「それより襲われてる奴らを助けなきゃ駄目だろ。
また怪我をされる方が面倒だ。
統率者の為に治せとか言ってきたら、マーヤがキレる」
「失礼ね? キレないわよ、治さないだけで」
「キレるより性質が悪い気がするんだけど、でも舐めた態度とるバカが悪いか」
「当然」
ぼく達は襲われている方達を助けに行きましたが、途中でアヌマー鳥というのがこちらに標的を変えてきました。
すると、襲われていた方々が慌ててこちらに大きな声を上げます。
「すまねえ!
あの木の上に巣があるみてえなんだが、木に近づいた途端いきなり襲われちまったんだ。
特に統率者のアヌマー鳥が厄介だから注意してくれ。
そいつ爪で鷲掴みにしてくるぞ!」
なるほど、それで荷車が多少壊れてるんですね。
荷車で守ったんだとは思いますが、派手に壊れているのは大丈夫なんでしょうか?
アレでは賠償を支払わなければいけませんし、マーヤさんへの返済が遠のきそうですね。
っと、まずは鳥をどうにかするのが先ですか。
と言っても、そこまで強いものでは無いでしょうけど。




