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第17.5話:『ifの彼方で——それぞれの対話』神代レイの空間:灰色の街並み

静かに分岐空間へ導かれたタロットたちは、それぞれの“if”——選ばなかった選択肢と対面していた。その空間は一人ひとり異なり、まるで心の奥底を可視化したかのようだった。空も地面も、記憶と後悔と願いで構成された幻影。だが、そこに映っていたのは紛れもなく、彼ら自身の“もうひとつの可能性”だった。

レイが歩く街は、色を失った風景が続いていた。舗道のタイルも、建物の壁も、空の色もすべてがモノトーンに染まり、風だけが無機質に吹き抜けていく。


そこにいたのは、恋を選んだレイ。愚者ではない誰かと穏やかな日常を送っていた。レストランで微笑み合い、通勤路を手をつないで歩き、休日は映画を観て笑い合う——まるで理想的な恋人同士の姿。


しかし、その笑顔も、言葉も、なぜか薄く透けていた。そこには確かに幸せがあった。けれど、その幸福は、どこか“借り物”のように感じられた。


肌に貼りつくような沈黙が、世界を包んでいる。


「選ばなかった。怖かったから。もし選んだら、壊れるんじゃないかって……」


レイは立ち止まり、幻影の自分を静かに見つめる。


「でも、選ばなかったことで、あの人と一緒にいられた。愚者と……戦って、笑って、泣ける日々があった」


灰色の世界の空に、一筋の光が差す。


レイは微笑む。その顔はどこまでもまっすぐだった。


「今の私には、ちゃんと居場所がある。それが、私の答えよ」

そして——

すべてのifが過ぎ去ったあと。

全員は一つの場所に集い、互いの選ばなかった未来を見送り、それでも“今”の自分を、もう一度見つめ直していた。

そこには、選ばなかったことの意味を携え、今を選んだ“彼ら”がいた。

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