第三十四話 癒し手
私が新しい武器の使い方を会得してから、順調にモンスターを狩っていき、その一日で目標の素材アイテムと討伐数をクリアすることができた。
明日にはパッシアさんの同僚という宝石将のマティさんが来て下さるらしい。それまでにはもっと強くなろうと意気込んで、その日は終了した。
宿に戻り、お風呂をいただくと、パッシアさんは例のマティさんと水晶で連絡を取り合っているらしく、ベッドの上で寝転がりながら会話をしていた。
私は会話の邪魔をしないよう、もう一つのベッドに座り、髪の毛をタオルで拭いていた。
「ごめんねー、イヴ!気を遣わせちゃって!マティ、順調にこっち向かってるって。今はウェントゥスで一晩泊まってから洞窟を通るって言ってたから、明日も何か依頼をこなしつつ洞窟でマティを待ちましょう。」
「はい、分かりました。今日使い始めた弓の練習ももっとしたいですし。」
「あれくらいできれば十分だと思うけど?」
「まだまだです。弓で照準を合わせるんのがまだぎこちないんです。」
「イヴ。そんなに完璧主義じゃなくてもいいんだからね?」
「完璧主義…、そうかもしれません…。今まで何でも一人でこなさなきゃいけなかったので、それが仇となってるのかもしれませんね…。」
「雫を集めている中とはいえ、私にも頼っていいんだからね。」
「ありがとうございます、パッシアさん。」
私がへにゃっと笑うと、パッシアさんは”この可愛いやつめ~”と私の頭に乗ったタオルでわしわしと私の髪の毛を拭いてくれた。
少しじゃれあってから、パッシアさんはお風呂へと入って行った。
私はついに明日例のとっっっても危険な試練に挑戦するのだというプレッシャー―と戦っていた。
翌日。私とパッシアさんは宿屋から出て、街の掲示板の前に立った。
「今日はどんな依頼を受けましょうか…。」
「あ、イヴ、こんなのはどう?”鉱山内を蔓延るモンスターの討伐”ってやつ!」
「それ、いいですね。あともう一つか二つくらい受けておきたいですね。」
私がそういうとパッシアさんは直ぐに”これとこれ!”とあっという間に決めてしまい、クエストを受けることを街のギルドハウスに行って受注をした。
ギルドハウスというのは、どこの主要都市にもある、ギルドと呼ばれる魔導士の組合のことで、それに登録しておけば、いつでも掲示板に貼られた依頼を受けることができる。
「この依頼ですが、もう既に受注しているチームがおります。現場で合流してモンスターの討伐に当たっていただきますが、どうされますか?」
「えっと…。」
「他の知らない魔導士と組むのも慣れないでしょ?マティが来るまでそういう依頼は断っときましょ。すみません、それは辞めておきます。」
「分かりました。それでは、合計二件の依頼を受注、ということでいいでしょうか?」
「はい。宜しくお願いします。」
私が対応に戸惑っていると、脇からパッシアさんが顔を覗かせて、代わりにギルドハウスのお姉さんと会話をしてくれた。ギルドハウスのお姉さんから依頼の受注書を受け取ると、パッシアさんは”行くわよ”と私の手を引いてくれた。
「マティはまだいいけど、私も他の魔道士と依頼で組まされることがあるけど、気の知れた仲間以外の魔道士とのチームアップなんて、やりにくいったらありゃしないんだから。ああいう時は断っておくのが一番よ。」
「そうなんですね…。あの手の依頼は人気があるんですか?」
「ああ…、そうね。初心者とか中級者クラスの魔道士が受けることが多いかもね。イヴはもう初心者の領域を出ちゃってると思うから、あの手の依頼は別に受けなくてもいいのよ。」
「私ってもう初心者じゃないんですか?」
「何言ってるの。もうとっくに卒業してるわよ。カエルレウム様のところでそれを実感してると思ったわよ。」
「あー…、あの手のモンスターとはもう二度と戦いたくないですけどね…。今でも思い出しただけでお腹が変な感じがします。」
私とパッシアさんは目的の洞窟までの道すがら、そんな話をしながら向かっていた。
洞窟に着くと、パッシアさんがランタンに火を灯してくれた。
「さてさて、今日もいっちょ行きますかー!」
パッシアさんがぐっぐっと準備体操をし始めたので、私もそれに倣って同じように体を伸ばしたり、縮めたりをして準備運動をした。
その間にも洞窟のあらゆる通路からモンスターがにじり寄ってきていた。
「さぁ、かかってらっしゃい!」
パッシアさんのその元気な掛け声と共に襲い掛かってきたモンスターと私たちは対峙した。
しばらくすると、私たちの周りにはモンスターが消えて代わりに出てきたドロップアイテムで埋め尽くされていた。
それを一つ一つ拾って回収しいると、私の目の前を黄色に輝く蝶が舞った。
「??」
私がそれを不思議がって首を傾げていると、蝶は私の鼻の頭に止まった。
すると、私の体の中にあった疲労感が無くなって行った。
「ん!?」
「あ、イヴも蝶の回復、受けたのね。ってことは…。」
「パッシア~、じゃなくて、ガーネット!お待たせ!」
「マティ!」
パッシアさんがランタンで照らした先の洞窟の通路から足音が聞こえてきて、私もそちらの方を見た。
すると、現れたのは私よりも少し背が低いかと思われる身長に、パッシアさんと同じ騎士のようなデザインの服に、女性らしい黄色のフリルスカート、ニーハイソックスにブーツが目に入った。頭には少し大きめのエメラルドグリーンのベレー帽をかぶっていた。どこかで聞いた話だが、治癒魔法が使える魔導士が集まるギルドでは、そこに所属する魔導士にどんなデザインでもいいからベレー帽を被る、とそんな話があるらしい。
「(ということがこの人が治癒魔法の使い手の宝石将…通称”癒し手”のトパーズ…)」
私もパッシアさんがお風呂に入っている間などに宝石商などについて調べたことがあった。現在いる宝石将の面々の話は頭の片隅に覚えていたのだ。
「初めまして。あなたがイヴちゃんね。ガーネットから話は聞いているわ。今回はあの竜の試練を受けるのね。頑張りましょう!」
「は、はい!宜しくお願いします!」
そうして、私たちは新たな魔導士とチームアップを組んだ。




