第三十三話 連続戦闘
私が神殿に入ると、魔力の泉のある空間から右に行くと毎度のごとく、松明が次々と点灯していった。
やがてすべての松明に火が灯るとその空間の主が姿を現した。
「あ、君が今度試練に挑戦する魔道士かな!?」
「は、はい!」
私が竜へと視線を移そうとした瞬間、ぐっと私の顔に竜の顔がドアップで現れ、私はびっくりした。
「そうかそうか!僕の名前はフラーウム。じゃあ、早速試練に挑戦してもらおうかな!まず、この試練はとっっっても危険なものだから、一人か二人、助っ人を用意してもいいよ。準備ができたら、また僕のところへ来て。それとも一人で挑戦する?」
「えっ…と、その危険な試練ってどういうものとか、教えていただけるんでしょうか…?」
「内容は簡単。制限時間内に何体のモンスターを倒せるか、だよ。どうする?一人で挑戦する?」
「いや、遠慮しときます。連れの人に相談させてもらいます。」
「それも結構!じゃ、待ってるねー!」
何とも明るい竜だな、という印象を持った私はパッシアさんに手伝ってもらおうと、神殿の入り口に戻った。
「あら、早かったわね。」
「それが…。守護竜のフラーウム様が言うには試練自体がとっっっても危険なものだから、助っ人を一人か二人用意してもいいと…。」
「あの竜、まだそんな試練してるのね…。私の時もそうだったの。じゃあ、お言葉に甘えましょ。助っ人は私が入るわ。あと、回復役が欲しいわね…。そうだわ、少し時間がかかるけど、央都の医療施設で働いてる同僚に回復役を頼もうかしら!」
「同僚って…、宝石将の人ですか?」
「そ!回復のエキスパートだから、今回の試練でも役に立ってくれると思うわ!まずは宿に戻って水晶で連絡を取ってみるわ。」
「分かりました。」
そういうことで、その日は直ぐに神殿を後にした。
宿の部屋で、私がお風呂に入っている間に、パッシアさんはその同僚さんに話をつけたらしく、嬉々とした表情でお風呂上りの私を出迎えた。
「朗報よ、イヴ!同僚のマティが応援に来てくれることになったわ!遅くても明日の夕方には来るらしいから、挑戦するのは明後日になるかもしれないけど、それでも大丈夫?」
「私は大丈夫ですよ。その間にテッラまでの道のりで通った洞窟で、モンスター討伐をしてきていいですか?」
「ええ。いい練習になると思うわ。私も久しぶりの戦闘だから、予行練習したいから、私も一緒にいいかしら?」
「はい、大丈夫です!さっき宿の一階の掲示板に洞窟内の特定のモンスターがドロップするアイテムの納品依頼やモンスターの討伐依頼が寄せられていました。それをこなしながら、ならいいんじゃないですか?」
「お、それは良い話ね。一石二鳥じゃない。その依頼も受けつつ、モンスター討伐の予行練習をしましょ。どうせ、マティが来るのもその洞窟を通ってこないといけないから。」
「洞窟内で待ち合わせでいいかもしれませんね。」
そんなこんなで私たちはパッシアさんの同僚のマティさんという人が来るまで、洞窟内のモンスターの討伐をこなすことにした。
翌日。私とパッシアさんは早速、洞窟にやってきていた。
「さてと…、今日の目標は?」
「えっと、受けた依頼は…。雷コウモリの羽が二十個と、ダークウルフの討伐が三十頭ですね。」
「どれも数が異常ね~。まぁ、受けたからにはそれを達成しないとね!さ、イヴも準備して!モンスターがうじゃうじゃ出てきたわよ~。」
ぐっぐっと肩を回して準備しているパッシアさんの前には複数のモンスターが湧き出ていた。中には今回受けた依頼対象の雷コウモリやダークウルフなどの姿も見受けられた。
「さくっと、やっちゃいましょう!」
「了解です!」
それから、私とパッシアさんは休むことなく数十分、絶えず押し寄せてくるモンスターの群れを捌いていった。
パッシアさんとの連携も慣れてきたところで、パッシアさんが戦いながら私の魔法の使い方の指導をしてくれた。
「イヴは、もう次の段階に進んでいいと思うのよね。私の予想だけど、もう鎌の形態から別の武器への転換ができるんじゃない?もう考えついているんでしょ?」
「ど、どうしてそれを!?まぁ、否定はしませんが…。そうですね。この際ですし、試してみたいです!」
私は一旦ダークウルフを切り刻むと、少し距離を取った。
そして、鎌をくるくると回した。
「(イメージ力が大事…)」
私は以前パッシアさんに教えてもらった魔法の使い方を頭の中で復唱して、思い描いている武器の形態を浮かばせた。
やがてイメージが固まると、私は鎌をぴたりと止め、鎌の柄を地面と平行にし、力を込めた。
すると、鎌の刃が反転するように転換した。そう、私が連想したのは、弓だ。
雪の大地で暮らしていた時から弓を使うことがあったため、弓を使いたかったのだ。そこで思いついたのが、この形だった。
「へぇ、弓ね。考えたわね。さ、それを使ってみてごらん。」
そういってパッシアさんが一歩下がると、私は鎌の柄からぐいっと弓を射るときのように腕を引いた。ちなみに矢は魔力で作った氷属性の矢だ。
力をめいいっぱい溜めて、引き絞るとこちらに突っ込んでくるモンスターの群れにむかって、矢を放った。
すると矢は青白い一線を引きながらモンスターの波に突っ込んでいき、その波を一気に凍らせた。そして、私が弓へと展開した鎌の柄を地面にトンと着くと、凍ったモンスターたちが一気に崩れ去った。
「まぁまぁ!上出来じゃない、イヴ!これならあのにっくき竜の試練も余裕ね!」
「パッシアさん、私情挟んでますよ。」
「あの竜には一泡吹かせてやりたいのよ。」
そういってめらめらと闘志を燃やすパッシアさんに私はこれからの試練は大丈夫なのか、と少しだけ、ほんの少しだけ不安が芽生えたのだった。




