第三十二話 土の都市へ
「満腹」でお昼ご飯を済ませた私たちは、ペチナ、プチナ姉妹に手を振ってお店を後にした。
「あの姉妹、このお店をもっと繁盛させるわね。」
「だといいですね!」
私とパッシアさんはお店の名前のように”満腹”になった。私は宝石将になってからもウェントゥスの街に来たら。また来ようと胸に誓った。
「さて、時計回りに行くと次の都市は土の都市テッラなんだけど…。テッラは地下都市でね。ある洞窟を通らないとたどり着けないのよ。だから、その洞窟まで箒で飛んで、洞窟に入ってからは徒歩で向かうことになるわ。」
「へぇ…、テッラって地下都市なんですね。行ったこともその都市のことも聞いたことがないので、ちょっと興味があります。」
「地上が鉱山でね。武器とか作るための鉱石を取る場所なのよ。それで、都市自体が地下に作られたわけ。じゃあ、そろそろ行きましょうか。」
私たちは話している間にいつの間にかウェントゥスの検問所までやってきていて、そこを通過したら、ポーチから箒を取り出した。
流れる動作で箒に座り、ふわりと浮いたパッシアさんに続くように私も箒を取り出し跨って、上昇した。
「じゃあ、テッラへ向かう洞窟までレッツゴー!」
「はい!」
そういって私たちは、ウェントゥスの街を飛び立った。
数十分もすれば地上は森となり、ところどころでスライムモンスターがうろついているのが見受けられた。
それどころか、ゴブリンのような種族のモンスターまでいた。
「ぱ、パッシアさん…、ここら辺の森、危なくないですか?私の戦ったことのないゴブリン?みたいなのもいますし…。」
「今のイヴなら、ゴブリンを瞬殺できるわよ!カエルレウム様が言ってた死神のようなモンスターは相当強いらしいし。それをイヴはたった一人でやっつけたんだから、自信持ちなさいって!」
「そうですかね…。」
イマイチ自信が湧かない私にパッシアさんは隣に並んで飛び、私の背中をバシッと叩いた。
「ほらっ、ぼさっとしてないで、集中!もう少しで洞窟の入り口に辿り着くから!」
「は、はい…!」
私は背中を叩かれたことで一層気合が入って、箒を握る手もぐっと強くなった。
しばらくすると、一面森の景色から山々の景色になってきた。
あまり高さがない山の間を縫うように箒で飛ぶと、前を飛ぶパッシアさんが速度を落とした。
「イヴ、ここで降りるわよ!」
そういうとパッシアさんはふわっと箒から降りて重力に従って下降していった。
私も追いかけて箒を下りた。ひゅうと風を切る音が耳に入ってくる中、地面に着地する寸前で風魔法を発動させて、下降スピードを緩めて、ゆっくりと着地した。
一足先に降りていたパッシアさんは箒を既にしまって、歩き出していた。私も箒をしまいながら、パッシアさんの後を追った。
「ここよ。」
「ここがテッラへの地下洞窟ですか…。」
ひゅおうと風が吸い込まれる音がする中、パッシアさんは腰のポーチからランタンを取り出すと、人差し指の先に火を灯すと、ランタンに火をつけた。
パッシアさんが照らしたランタンの光を頼りに私たちは洞窟に入って、ひたすら歩いた。
道中、もぐらのようなモンスターやコウモリのようなモンスターに襲われたが、パッシアさんが手を出すことなく、私が全て片付けた。
「うんうん、イヴもモンスターの対処が上手くなってきたわね。この調子なら、テッラの試練も…。」
「ん?パッシアさん何か言いましたか?」
パッシアさんの最後の方の言葉が聞こえなくて私は聞き返したのが、パッシアさんは笑顔で”なんでもないわ”と言ってそれ以上は聞くことができなかった。
その後もモンスターを倒しつつ、歩いていると、大きく開けた空間に出た。
すると目の前にきらきらと光り輝く都市が姿を現した。
「わぁ~…、綺麗…。」
「でしょ。テッラの都市の光は絶景に認定されているからね。さ、私たちもテッラの街に入っちゃいましょ。」
そういって先を歩く、パッシアさんの後を追って私も慌てて走り寄った。
「テッラの街の竜ってどんな方なんでしょう…。」
「まぁ、会ってみれば分かるけど、随分破天荒な感じだから、少し注意した方がいいかもね。」
「今まで出会った竜よりも厄介な気がします…。」
「その予感は当たってると思うわ…。」
げんなりとした様子でランタンをかざすパッシアさんに私は苦笑いを溢した。
そうやって話しているうちに私たちはテッラの検問所までやってきた。
検問所の警備員さんに通行を許可してもらって、テッラの街に踏み込んだ。
洞窟の中なのでテッラの街は”眠らない街”として言われるほど、煌々と電飾が光り輝き、目がチカチカしてしまうくらいだった。
「さてと。まずは宿を見つけて、その後神殿に行きましょ。」
「はい!」
私が街の電飾に見とれている間にランタンをしまったパッシアさんに私は同意して、歩き出した。
辿り着いた宿屋はこれまた豪華で流石宝石将の名は伊達じゃないな、と思った。
案内された部屋に着き、少しのんびりした後。私たちは多分夕方であろう、時刻に神殿へと赴いた。
「それじゃ、行ってきますね。」
「何かあったら、叫んで私のところまで来なさいね。」
「これから行くのが怖くなるじゃないですか!」
そうやって脅すパッシアさんが笑っていないのを見て、私は冗談ではなく、本気で言っているのだと感じ、しばらくしてからこくりと頷き、神殿の中に入った。




