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虹の魔道士Ⅰ  作者: あず
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第十九話 不自然な雨

私とパッシアさんは灼熱の大地からイグニスの街に帰ってきてから、一泊して温泉を最後まで楽しみ、それから水の都市アクアを目指して飛び立った。


「イヴも箒で飛ぶのに慣れてきたんじゃない?」


「はい、だいぶ慣れましたね!」


私は隣を並んで飛ぶ、パッシアさんの方をちらりと見た。わき見運転が一番危ないとパッシアさんから一番に習ったことだったからだ。


私とパッシアさんがそれなりのスピードで飛んでいると、あっという間にイグニスの街は見えなくなり、次第に雲行きが怪しくなってきた。


「これは一雨来そうですね…。」


「どうする?濡れてでもアクアの街まで飛んでく?」


「この時期の雨は体に堪えますので、降り出したら、どこかで雨宿りした方がいいですね。」


「分かったわ。少しでもアクアの街まで近づきましょう。」


「はい!」


そういって飛ぶスピードを格段に上げたパッシアさんに私も負けじとついて行った。



私の予想は当たっていて、しばらく箒で飛んでいると、ぽつぽつと雨が当たってきた。

まだ、アクアの街は遥か遠方で、振り出してからも飛んでいれば着くだろうが、少し雨に濡れなければならない。風邪を引くのも面倒なので、私とパッシアさんは地上近くで見つけた小さな村で雨宿りをすることにした。


「ふぅ…、近くに村があってよかったわね。」


「そうですね。ラッキーでした。それにしても…。」


私が少し濡れた髪をタオルで拭きながら、外の様子を覗き込んだ。

外はザーザーと本降りになり、雨で視界が奪われるほどだった。


「アクア近郊で、ここまで降るのは珍しいですよ。」


「そうなの?」


「はい。私も雪の大地からオーロラまでの道のりでアクアの街を通りますから。雨が降ることはまぁまぁあるんですけど、これは異常です。何か魔力を感じます。」


「確かに…。微量だけど、魔力を含んでるわね。イヴ、よく分ったわね。」


「えへへ…。少しは魔力を感じ取れるようになってきました。」


「魔力を含んでるってことはこの雨は誰かが意図的に降らせているってことになるわね。」


「そうですね…。一体誰が…。」


「旅のお方ですかな?」


私とパッシアさんが雨宿りしていた建物からギィッと扉を開けて出てきたのは杖を付いた老人だった。


「あの、雨宿りさせてもらってます。すみません。」


「いえいえ、いいんですよ。突然の雨も最近になって増えてきたんですよ。あなた方も言っていたでしょう。この雨は魔力を含んでいる、と。この雨はアクアの都市の守護竜、カエルレウム様の涙なのです。」


「守護竜…カエルレウム様…?」


「はい。昔から突然の豪雨は守護竜様が嘆いておられるのだと、言い伝えられてきました。」


「そうなんですか…。守護竜の影響なら、魔力を含んでいても辻褄が合いますね。」


「守護竜に何かあったのかもしれないね。止む気配もないし、ここは濡れる覚悟でアクアの街まで行ってみるしかないかもしれないわね。」


「でも、この時期の雨は…風邪を引いてしまいます!」


「その時はイヴがこの間試練で作っていた風邪薬を調合すればいいじゃない。」


「あ…、それもそうですね…。」


「行かれるんですかな?」


「はい。貴重なお話、ありがとうございました。行ってきます。この雨、止むようにしてみます。」


「ありがたや…。」


そういって手を合わせて私たちに頭を下げた老人に私たちも頭を下げると、雨の中私たちは再び、アクアの街に向けて飛び立った。




数十分も雨の中を飛んでいると、身体の芯から冷えてくるが、もう少しでアクアの街に着くころだった。


「イヴ、このままだと雨も止まないし、まずは神殿に行ってカエルレウム様に会った方が良さそうだけど…。雪の大地に行くのは試練の後でもいい?」


「家に帰るのはいつでもいいですよ!まずはこの雨を止ませることが先決です!」


「イヴならそういうと思ったわ。分かったわ、先に神殿に向かいましょう。」


私たちはアクアの街境目の検問所の前で箒から降り、あっさりと検問所を通ると、走ってアクアの街を駆け抜けた。

神殿はイグニスでのように辺境の地にあるのではなく、街の中にある。

私とパッシアさんが神殿に着くころにはびしょ濡れになっていた。

先ほどから冷たい衣服が素肌に張り付いて気持ち悪い感覚があった。


「それじゃあ、行ってきます!パッシアさんは風邪を引かないように、暖かくしててください!」


私は腰のなんでも入るポーチから毛布を取り出すと、パッシアさんに向かって投げた。


「ありがとうね、イヴ。頑張ってらっしゃい!」


「はい!」


私も腰のポーチからタオルを出すと、神殿内部に入って行きながら、身体や髪の毛をタオルで拭った。


次第に魔力の泉が見えてきて、それを通り過ぎると、奥の部屋へと続く扉があった。


「(ここかな…?)」


私が扉を開けると、ふわりと魔力を感じた。それはあの近くの村で雨宿りしているときと同じ魔力だった。

やはりあの雨はここの守護竜のカエルレウム様が関係しているに違いなかった。


私扉を開けて入ってきたことで部屋の松明に火が付き、この部屋を明るく照らした。

するとそこには、濡れたような艶を放つ青き竜が鎮座していた。


「き、、君は誰…?」


竜ってどの方も荘厳なものかと思っていたが、今回の竜はそうでもないようだった。


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