第十八話 ルーフスの雫
「それじゃあ、私は失礼します。レイナさん、薬はちゃんと飲んでくださいね。」
「分かってます。イヴさん、色々とありがとうございました。」
「私からもお礼を言わせてください。娘のために色々としてくださってありがとうございました。」
「いえいえ。私は試練としてお節介を焼いたまでで…。」
「それでも、助かりました。僕のこと、ルーフス様はちゃんと見ていたんですね…。」
「これからルーフス様の元へ?」
「はい。試練の合否を聞きに行きます。」
レイナさんの質問に答えると、私はレイナさんの家を後にした。私の姿が見えなくなるまで、三人は手を振ってくれていた。
「ただいま戻りましたー。」
「あら、お帰り、イヴ。どうだった?」
「はい。ちゃんと薬も渡せましたし、試練はクリア…かもしれません。」
「じゃあ、ルーフス様に会いに行こうか!」
「はい!」
前に行ったときは徒歩で灼熱の大地を歩いて行ったが、今回は箒に跨り、陽が沈みかかったイグニスの街を抜けた。
「この時間帯は涼しくて過ごしやすいですね。」
「日中は灼熱の大地はひんやりドリンクがないと無理だけど、今の時間帯ならひんやりドリンクもいらないでしょう。」
箒で飛びながら灼熱の大地に入ると、前に来た時よりも涼しく、確かにひんやりドリンクは必要なさそうだった。
しばらく飛ぶと、先に白い神殿が見えてきた。
私たちは神殿の目の前で減速し、ゆっくりと降り立った。
「じゃあ、行ってきます!」
「あいよ。行ってらっしゃい。」
私は待ちきれんばかりに、神殿の入り口でパッシアさんに別れを告げ、私一人で神殿の地下へと入って行った。
地下に入ってしばらくすると、部屋の松明が前来た時のように一つ一つとついて行き。最終的には目の前の赤き竜の姿を露わにした。
「おお。帰ってきたか。お前の決意、そして試練の合否を言い渡そう。」
「はい…。」
私は次に続く、ルーフス様の言葉にごくりと唾を飲み込んだ。
「お前は合格だ。お前の決意はどうだ?」
「えっ…?ご、合格?ありがとうございます!私の決意は…。変わりません。立派な宝石将になることです。今回の試練で自分の知識、魔法の力、その二つがあったこそ、成し遂げられたと思っています。私の力で他の人を幸せにすることができる。それがとても嬉しくて…。宝石将になれば、この国の人を助けられる、幸せにできる、そう思いました。」
「それが今のお前の決意なのだな。」
「はい。」
「よかろう。お前を認めよう。私からの雫だ。受け取れ。」
そういうとルーフス様は体をぐぐっと私の目の前まで寄せて、その瞳からぽたりと一つの雫を溢した。
「ありがとうございます。ルーフス様。私、少しは変われたと思うんです。少しずつですが、これからも宝石将になるために変わっていけたら、そう思います。」
「そうか。そうだ、お前、何故あの少女が風邪の薬を飲んでいないと判断した?」
「え…?それは、簡単です。ゴミ箱です。」
「ゴミ…だと?」
「はい。薬を飲めばその薬が入っていたであろう、包装紙があったりしたはずですが、レイナさんの部屋に入った時にちらっと見たんです。でも、ごみ箱にはそういったものは入ってなかった。それに枕の下に薬の包装紙があったのを見てしまったので。」
「そういうことか。お前は観察眼にも優れているようだな。その力、存分に生かせよ。」
「はい…!」
「お前の道に光があらんことを。」
「ありがとうございました。」
私は最後にルーフス様に向かって頭を下げると、そのまま竜の間を後にした。
私が階段を上がってくると、それを待っていたかのように、パッシアさんが駆け寄ってきた。
「イヴ!どうだった?」
「えへへ…、合格だそうです!無事にルーフス様の雫も手に入れることができました!」
「やったじゃない、イヴ!いやぁ…、私は干渉できないから、心配だったのよ…。焦りもあっただろうし…。」
「その節はご心配をおかけしました…。」
「でも、それを乗り越えたからこそ、今回合格をもらったんじゃない?」
「はい!そうだと、思います。」
「さて、次だけど…。」
「次の都市はどこに行くんですか?」
私とパッシアさんは意気揚々と次の都市への計画を立てていた。
「次はこの国を時計回りに行くと、水の都市アクアね!」
「あ、帰省ができますね!」
「まずは自分の家に帰りたいのね。いいわよ、一回雪の大地まで行ってからアクアの神殿に行きましょう。」
「ありがとうございます!久々の我が家ですー!」
私が嬉しそうに言うと、パッシアさんは苦笑いを溢した。
「試練の存在、覚えてるかしら?」
「あ…。」
私の”そうだった”と言いたげな顔にパッシアさんの笑い声が灼熱の大地に木霊した。




