根っこ広場~オンボロ橋
リッスとともに、キレイな池のほとりで果物をむさぼるお姫様。
よく見たら、木々にたわわなリンゴや梨、メロン? やスイカ? がなっていました。
「なんで木にメロンやスイカが……おかしな世界む」
「ファンタジーには良くある事よ。それより……この森から出たいんだけど。道案内してくれる?」
リッスは、ふたたびイタズラ心がめばえてしまいます。
心の中でほくそ笑みながら、こころよく頷きました。
「じゃあ……まず根っこ広場にいくむ」
「ネッコ広場……猫が集まってるの?」
「根! 木の根の根っこ広場む! ネッコ広場じゃないむ!」
お姫様は舌打ちしながら、スイカをむさぼります。
「ところで、君はどこかの国のお姫様む? 綺麗なドレスむ」
「ありがとう。私はネコミミ王国、第一王女の娘よ。ちなみに姉は九人いるわ」
「子だくさんむ」
そんなこんなで、果物でおなかポンポン、ポンポコリンになったお姫様とリッスは森を出ようと出発します。
まず向かうは根っこ広場。
そこが、恐ろしい場所だとは知らずに……。
※
根っこ広場へとやってきたお姫様とリッス。
リッスはイタズラ心全開にしつつ、お姫様へと言います。
「ここでは……ほんとうの事を言うと根っこに捕まるむ! 気をつけるむ……って、わあああぁぁ!」
木の根っこに尻尾を鷲掴みにされて吊り上げられるリッス。
それを見たお姫様は、正直呆れ顔です。
「また嘘で私にイタズラしようとしたのね。まったく……懲りないわね」
「わぁぁぁぁん、ごめんなさいむー! もうしないむー!」
しかし、素直に謝るリッスへと、さらに根っこは絡んできます。
「う、うそじゃないむー! 僕、本当に……こりごりむー!」
半べそをかきながら謝るリッスを、根っこは離します。
お姫様は根っこから解放されたリッスをキャッチしつつ、周りを見渡しました。
「ここは嘘をつくと根っこが絡んでくるのね。どういう仕組みなのかしら……」
「し、しらないむ……ここは昔からこういう所む……」
お嬢様は少し、試してみたい事がありました。
「カレーライスよりハヤシライスの方が美味しい」
かすかに、お姫様の足に根っこがからみつきます。
どうやら、少しだけウソ、と判定されたようです。
「成程……じゃあ……私の名前はエヴァン〇リオン初号機よ」
大きな根っこがお姫様を捕まえ、もちあげてしまいました!
「わぁぁぁ! なにしてるむ! っていうか僕も巻き添えむー!」
「試してるだけよ。次は……私はエヴァン〇リオン零号機よ」
更に根っこは絡みつきます。
「だーかーら! 何いってるむ! 本当の事言わないと解放されないむ!」
「仕方ないわね……私の名前は、エヴァン〇リオン一号機……エヴァン〇リオン二号機……エヴァン〇リオン三号機……」
いい加減にしろと言わんばかりに、根っこはお姫様とリッスに絡みつきました。
「わぁぁ! このままじゃあ根っこに取り込まれてしまうむ! 本当の名前いうむ!」
「当ててみなさい、私の名前」
「なんで?! この状況で何いってるむ!」
お姫様は落ち着いています。でもリッスは慌てふためき、必死に脱出をこころみています。
「うぅぅぅー、根っこ、かたいむー」
「本当の事を言えばいいのね。私は……」
次の瞬間、根っこはお姫様とリッスを開放しました。
リッスは、お姫様が何と言ったのか……聞こえませんでした。
「今、なんて言ったむ?」
「…………」
何も答えず、お姫様はスタスタと歩いて行きます。
リッスは首を傾げながら、お姫様の後についていきました。
※
そしてそして、そんなこんなで、お姫様とリッスはオンボロ橋へとやってきました。とてもボロボロ、オンボロな吊り橋です
「オンボロな橋ね。これを渡れって?」
「仕方ないむ。オンボロ橋を渡らないと、むこう側にいけないむ」
リッスによると、お姫様が帰りたい方角に向かうには、この橋を絶対に渡らなければならないそう。でもオンボロ橋は、とってもオンボロです。
「橋の下は……川?」
「そうむ。深くて流れも急だから……どこまで流されるか分からないむ」
お姫様は一歩、オンボロ橋へと足を踏み出します。
その瞬間、オンボロ橋は大きく揺れ、めきめきと音を鳴らします。
「ダメだわ。オンボロすぎるもの」
「君は体重おもいから……って、ぎゃああぁあぁ! 尻尾鷲掴みにしないでほしいむ!」
「失礼な事言うからよ。そこまで言うなら手本見せない、手本」
リッスは頷きつつ、ぴょん、ぴょん、とオンボロ橋を渡っていきます。
まんなかあたりまでくると、リッスは振り向き、お姫様へと手招きしました。
「はやくくるむー。怖がってたら帰れないむー」
お姫様はゴクっとつばを飲み込みながら、一歩、また一歩とオンボロ橋を渡り始めました。
しかし、そこで怖がるお姫様を見て、リッスのイタズラ心が再びめばえてしまいます。
「むふふ。こわくないむー、だいじょうぶだむー、ほらほら、こんなに揺れても大丈夫むー」
リッスはわざと橋をゆらしました。
お姫様は思わず、オンボロ橋のロープへとしがみつきます。
でも……しがみついた時、さらに大きく橋が揺れました。
「むむ? ぁ、わぁぁぁ!」
その時、リッスがバランスを崩し、橋の隙間から落ちてしまいました!
「モッフ!」
「リッスむー!」
お姫様は、躊躇う事なく橋から飛び降り、高高度降下低高度開傘で培った技術を用いて急降下。そのままリッスを抱きかかえます。
「息吸って!」
そのまま……お姫様とリッスは……川の中へと落ちてしまいました。