ネコミミ王国
リッスが気が付いた時、そこは知らない場所でした。そして傍らにはお姫様が眠っています。
「む……ここどこむ……? 目をさますむ!」
リッスはお姫様の肩を揺らします。しかしお姫様は目を覚まそうとしません。
「ぼ、僕のせいだむ……」
リッスは後悔しました。自分のイタズラのせいで、お姫様が目を覚まさなくなってしまったからです。
「うわぁぁぁん……そんな……目を覚ますむ!」
どれだけ揺らしても、どれだけ呼びかけても……お姫様は目を覚まそうとしません。リッスは心の底から悲しみました。
「ごめんなさい……ごめんなさい……もうイタズラしないむ……だからお姫様を助けてむー!」
リッスは空を仰ぎ、大粒の涙を流しました。
その時です。リッスの涙の中に虹がかかりました。
その虹はだんだん大きくなり、突然目の前に虹が現れたリッスは驚いて尻餅をつきます。
「に、虹……逆さ虹む!」
リッスが住む森で有名な逆さ虹。
それが今、リッスの目の前に現れたのです。
巨大で幻想的な虹に呆気にとられるリッス。
そんなリッスの耳に、誰かの声が聞こえてきます。
『さあ、泣くのはおしまい。虹にお姫様を乗せて』
リッスはその声で涙をぬぐい、お姫様をひっぱって虹に乗せます。
すると、リッスとお姫様の体は虹に流されるように空へ。
「ふ、ふおぁぁぁぁ!」
必死にお姫様のドレスにしがみ付くリッス。
みるみるうちに、地面は遠のき、野を越え山を越え……ドラゴンの巣を越え奈良の大仏も越えると、リッスの目の前に大きな国が見えてきました。
そこはネコミミ王国。お姫様の国です。
※
リッスとお姫様が逆さ虹に乗ってやってきたネコミミ王国は大騒ぎ。
突然逆さ向きの虹が出来たと思えば、お姫様とリッスがやってきたからです。
「誰か……助けてむ! お姫様が……僕を助けようとして……お願いむ、助けてむー!」
すぐにネコミミ騎士団が駆け付け、お姫様を抱きかかえて宮殿へ。
しかしリッスは、騎士団に捕まってしまいます。お姫様を危ない目に遭わせたと、牢屋に入れられてしまいました。
「おねがいむ……僕はどうなってもいいむー! お姫様を助けてむー!」
牢屋の中で叫ぶリッス。
暗い、蝋燭の火だけがゆらゆら揺れる空間で……リッスは一人、ひたすら祈り続けました。
※
何日か経ったある日、リッスは冷たい牢屋の中で、自分の名前を呼ぶ声を聞きました。
「リッス! リッスは何処?! なんで牢屋に入れたりするの! リッスは私の命の恩人よ!」
「し、しかしシェルス様……あのリスは怪しい事この上なく……」
「あんたの顔の方が怪しいわよ! なんで騎士団長のくせに眉毛が濃くないのよ!」
「え、えぇー!?」
リッスは牢屋の外に目を向けます。するとそこには、元気に騎士団長を叱るお姫様の姿が。
「お、お姫様……よかったむ……目を覚ましたむね!」
「リッス!」
お姫様は右ストレートパンチで牢屋を破壊。
そのままリッスを抱きしめます。
「リッス……よかった……本当に……生きてて……」
「うわぁぁん……お姫様……ごめんなさいむ……」
お姫様は首を傾げます。
「なんで謝るの?」
「だ、だって……僕のイタズラのせいで……」
その時、お姫様は思いだしました。
リッスがわざとオンボロ橋を揺らした事を。そしてそのままリッスの尻尾を鷲掴みにすると、振り回します。
「ふぎゃぁぁぁ! ご、ごめんなさいむ!」
「はい、これで許してあげるわ。でも今度からは……誰かが泣いちゃうようなイタズラはしない事。いいわね、リッス」
「も、もちろんむ! 誰かが泣いちゃうのは……悲しいむ……」
リッスはこんな悲しい思いは、もうしたくありませんでした。
力一杯、リッスを抱きしめてくるお姫様。
そんな時、ふと、リッスの脳裏にある場面が思いだされました。
「そういえば……根っこ広場で根っこに捕まった時……お姫様、なんて言ったむ?」
「……そうね。じゃあ教えてあげる……。私の……最初の友達は……リッス……って言ったの」
ネコミミ王国で笑わない事で有名なお姫様。
でも今は、リッスに素敵な笑顔を向けています。
「友達……でも僕……お姫様の名前知らないむ……」
「あぁ……私の名前は……」
それからしばらく……リッスは森に帰るまでの間、ネコミミ王国でお姫様と共に過ごしました。
笑わない事で有名だったお姫様は、相変わらずあまり笑いません。
でもたまに見せる素敵な笑顔が、人々の心を射抜きます。
そして、笑わない事で有名だったお姫様は、笑顔の素敵なお姫様として……世界中に知られる事となりました。
おわり
「またね、リッス。また逆さ虹の森に遊びに行くわ」
「待ってるむー。今度は森の皆も紹介するむー」




