魔道具師 オリーブ
はっ、なんだい、もっと面白い事が起きると思ったら、案外しょーもなく終わったねえ。
公爵の襲爵のあった、災厄が王都を覆った日
勿論、王都の魔道具屋も黒いモヤが覆った。
しかし魔道具師はその能力で、どんな状態異常も効かない身体を持つ。
マントの能力が足りなかったか?
あーいや、もしかしてあの小僧、マントを着ていた期間が短かかったか?
小僧が6歳ごろに渡したはずで、そこから4年も常時着ていれば、もっと大きな災厄が起こっていたはずだが。
チッ、
あの公爵が兄である王に会えば、きっと感情が抑えられなくなる。
マントが感情を持つかを見たかった。
感情の発露で、内包しているスキルが勝手に放出されるように作った。
公爵にも小僧にも誰にも言ってはいないが。
面白いものが見れるかもと、期待していたんだが。
少し残念だが、感情を持つ事が分かっただけで良しとしよう。
ただ、もう次はそういった事は起こらないだろう。
マントは思考する事が出来る。
あの公爵なら、必ず対策を自分で考えるはず。
つまらん。
10年前、公爵に子供が授かった。
だが、授かった辺りから、公爵領で穀物の病やら、人の病やらが出始めた。
子供のスキルが影響しているのは、占い屋で見てもらってわかったそうだ。
公爵はどうすれば我が子を生かす事が出来るか悩んだ。
子供に非はない。殺すなど考えたくもない。
妻にも相談したら、同じ考えだったと。
なんてめでたい頭をしてるんだか。
とここを訪れて話を聞いた時、そう思った。
公爵は自分を行方不明という事にして、子供を救う方法をあちらこちらの国へ行き、
公爵という身分を伏せて、聞いて回ったそうだ。
子供が産まれた時も、よその国にいて、自分の妻が亡くなったのも人伝に聞いたと。
薄情なもんだ。
結局、方法を見つける事が出来ず、王都にコッソリ舞い戻って
私に頼る事になるなら最初から頼ってくればいいものを。
そんなに頭を下げるのが、嫌なのかねえ。
だから、何度頼まれても断ったさ。
金だけの問題じゃない。面倒くさいのは嫌さね。
ああ、だけど、王都に帰って来た時には、公爵は病に冒されていたね。
身体がだんだん動かなくなる病さ。
町医者から1年持てばいい方だと言われたと。
だから、公爵自体を対価にした。
上手く行けば、誰も作った事が無い、私が初めての新しい魔道具を作れる。
それも、人を使ってだ。
こんな面白い話はない。
公爵に言ったら、即断で了承を得た。
シシシ、こんな楽しい魔道具作りはしばらくぶりだ。
ただ、公爵があれもこれもと追加機能を言い出したのは、呆れたが。
それを差し引いても、色んな実験が出来るのはいい。
5年もかかっちまったが、まあ、良い出来になった。
私も、あとどれくらい生きれるかわからんが、
これまでの中でも最高傑作だろうと思う。
小僧は、公爵領に行くと聞いた。
あそこには弟弟子がいる。
さて、あのマントを見てどう思うかね。
あいつには、作れないだろう魔道具だ。
羨ましがるのか、哀しむのか。
あいつは心根が弱いからね。
どんな顔をするのか、見れないのが残念さね。




