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聖邪混濁 〜寒い冬から暑い夏へ〜  作者: anishina
第三章 青年時代〜サンガル
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サンガルの思惑

グレイがクロス村に着いた数時間後、神殿騎士と荷馬車が到着した。

荷馬車は6台、それぞれ人と馬の食料と魔道具が積み込まれていた。

神殿のが2台、公爵領からのが4台。

ロガンとラックも一緒にやってきたので、宿屋で再会のハグをした。


既に日は落ち、ランタンをいくつも立てて、テントも設営されていた。

村の中という事で、獣対策はせず、門に見張りを交代で立てる。


宿屋を本部にして、グレイは3人の隊長から報告を受けた。

ロガンとラックには今の状況を既に話し済みだ。

2人には凄く驚かれた。


「1番隊!2番隊と共に村中を探して、埋葬場所を確保しました!」

「3番隊!4番隊と共に全隊のテント設営を終えました!」

「5番隊!6番隊から10番隊までを統括して遺体の数を報告いたします。

 大人106人、ほとんどが年寄りと女のようです。

ほぼ全員が胸に手を置いておりました。

1番大きな屋敷の一人だけ、ベッド横に水を飲んだコップが置いてあり

ベッド下で亡くなっておりました。

全てシーツに包めました。以上です!」


「皆、ご苦労だった。各自休んでくれ。」


「「「 は! 」」」


「さて、これでおおよその見当がついたな。」


「ああ、口減しか。」


「食料が限られてくるんだ。自ずとそうなる。」


「井戸の毒は、我ら向けだが、恐らくはここの村長が民に飲ませたな。」


「ああ、それで合点がいく。」


「食料は全て王都に持ってかれたんだろう。

男と子供は兵士として徴兵されたか。」


「だが、解せん。戦争をするつもりだったのだろう?

なら、ヨークに近い所へ兵士を置くべきだろ?

なぜ、この村を放棄するんだ?」


「何か考えがあるのか。逆に何も考えてないのか。

食料を絶って時間が経てば経つほど、自分の首を絞めるだけでしょうに。

サンガル王都に潜伏している密偵から、何も報告はないのですか?」


「今の所、何も。」


「なあ、俺、気になってる事があるんだ。

ロガン、言ってたよな。

サンガル人は良くも悪くも、素直だって。

最初にルールを決めればその通りに従うって。

サザンではそれで諍いなく並んで商売出来たんだけど、

それってなんだか・・・」


「洗脳、ですか?」


「んー、そうなのかも?てくらい。」


「ありえますね。王がそのようなスキル持ちと言う事であれば、

あの子供が言っていた、王のスキルで殺せるっていうのも

洗脳であれば、納得がいきます。」


「ああ、民全員が素直なのは、王がスキルを持つせいだな。

ただ、死ねと言って遠くにいる民が死ぬ程の力はないはず。」


「王と対面したら、俺らも洗脳されるのか?」


「そうですね。精神力の問題ですが、弱いと洗脳されるでしょう。」


「密偵からそんな話、聞いた事ないが、これはもしかして」


「嫌な想定だが、既に洗脳されているかもな。」


「だったら・・・ああ、マジで嫌な考えが浮かんだ。」


「私もです。」


「20年前は、サンガルがヨークに来たから負けた。

戦場をサンガルにすれば、俺らは補給が無くなった時点で詰みだ。

ただし、サンガルにとってもリスキーな賭けになる。

食料が無いんだからな。

サンガルにヨークがやってこなければ意味がない。

だから、戦争を仕掛けて自国に来るよう仕向けたのか。」


「そうですね。この村を放棄したのもそれならわかります。

こんな所に食料を置いて敵に接収されるような事させないでしょうから。」


「ああ、俺がまんまと引っかかったのか!

みんな。すまん!」


「いいえ、アツイ様が動かなくても、何か仕掛けてきていたでしょう。」


「そういえば密偵から、噂でサムイを狙っているとも言っていた。

もし、サムイが拉致されたら、取り返しに行く事も仕掛けの一つか!」


「まずいですね。サムイ様を次の町に送ってしまいました。

その想定だと、拉致される可能性が高いです。

否が応でも王都まで行かざる得なくなります。」


「それって・・・」


「はい。向こうからしたら、罠に自らハマりに来る格好の獲物でしょう。」


「くっそう!何で俺、行かせてしまったんだ!

サムイの事は、俺が見てやれば良かったんだ。

考えが甘かった。ここが余りに酷かったから、次の町も同じだとばかり。」


「恐らくそれも、考えのうちでしょう。

良くも悪くも、ヨーク人は優しいですからね。

マイカール王がそうですから。」


あ!そうか、そうだったんだ。

この世界の民は、王のスキルか性格に引っ張られるのか。

でも今はそんなことより


「俺、どうしたらいい?

俺には、経験が乏しいってよく分かった。

だから、下手に自分で動くより、みんなで考えて動きたい。

俺は、いや、サムイを助けてヨークが勝てる戦を考えよう!」


「アツイ様・・・ええ、皆で考えましょう。

我らもここでは未経験の事ばかり。

色んな視野から勝率を上げましょう!

ウルマ!隊長クラスを全員集めろ。

ここで皆で意見を出してもらう。」


「はい!呼んできます!」


「そういえば、アツイ様。先程我々が馬で来た時、すぐ気付きましたよね。」


「ああ、周りに何も無いから、すぐ分かった。」


「ここから先の町も、同じような風景だと聞いています。

と言う事は、先程アツイ様が認識したように、

街道を来る者はすぐ見つかると考えてよいかと。

そうだな。ロガン。」


「はい。次のスピカはここより規模が大きいです。

通常なら、門の上から見張りがこちらを見ております。

ヨークの商人のほとんどは、次の町で荷を下ろし、

そこで鉄製品や布製品などを買って帰ります。

大商隊などの荷馬車に沢山積んでいる者は、王都まで行く事もありますがね。」


「我ら騎士団はサンガル王都まで行った事がない。

ロガンだけが頼りだ。すまないが色々教えて欲しい。」


「私でよければ、いくらでもお手伝いさせて下さい。」


バタバタ

「グレイ団長!皆集めてきました。」


「招集に応じて、全隊長、揃って馳せ参じました。何事でしょうか?」


「ヨークの未来の為に、皆の知恵を貸して欲しい。」


「「「「 は! 」」」」


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