サムイの記憶
アツイ様が僕を置いて次の町へ行ったってジークから聞いた。
なんで?僕避けられてるの?
なんで?なんで?僕が必要なんでしょ?
助けられるのは僕だけなんでしょ?
だったら、僕を愛してよ。
ジャックは子供と一緒に馬に乗ってるし。
ジャックは僕の護衛だったんだぞ。
なんで僕だけを守らないんだよ。
なんで?
「サムイ様、アツイ様とお会いしたかったでしょうに、申し訳ありません。
今の状況をお話しします。」
「う、うん」
「まず、ヨルン団長ですが、昨日銃に撃たれて癒していただきましたが、
意識が戻らず、先程の街で養生のため置いてきました。
そして、ジャックが乗せている子供ですが、ヨルン団長を撃った子供です。
サンガル王の子供らしいですが、幸運スキルを持っているのと、
案内出来るかもという理由で同行させております。
今から向かう町ですが、先程の村同様、疫病で死んでいるか、
また、生存者がいればサムイ様に癒していただきたい。
これは私の希望ですので、
サムイ様が見て感じたまま行動をお願いします。
こちらからの指示はありません。
・・・・昨夜、アツイ様とお話しさせていただきました。
あなたが、もっと成長されるのを希望されており、
それには、アツイ様がいては、妨げになるとおっしゃっておりました。」
「え?アツイ様とお話をしたの? 僕が寝ている間に?
なんで一緒だとダメ? 僕にとってアツイ様が邪魔になる??
よくわからないよ・・・
アツイ様は僕が必要なんでしょ?
僕がいないと可哀想なままでしょ?
僕だけが助けられるんだ!そうでしょ?」
「サムイ様・・・
先日、アツイ様にあって、可哀想だと感じましたか?
確かに、あのスキルをお持ちなのは不幸と言わざるをえませんが、
アツイ様はそれでも、公爵としての立場で物事を考えておりました。
そして、公爵家の騎士達からも慕われておいでです。
アツイ様はもう精神的には大人になっていると感じました。
だからこそ、サムイ様には対等の想いで会いたいのでしょう。
サムイ様、アツイ様が可哀想では無いと愛せませんか?」
「そんな事ない! 僕は、アツイ様の側にいたい。
その気持ちは、可哀想とか助けたいとかが無くても変わらない!
僕は、愛し愛されたい って思ってる。
愛すのも愛されるのも、神殿で教わったよ?
あれは違うの?」
「うっ・・・、それを言われると自分の愚かさを悔やんでなりません。
本当に申し訳なく思っております。
神殿での行為は、サムイ様に愛の方向性を一つに固めてしまいました。
愛し、愛されると言うことは、あの行為だけではありません。
あれは、愛の行き着く先の一つです。
アツイ様も我々も、他の愛をサムイ様に知って欲しいのです。」
「そうなんだ。・・・・
ジーク、成長ってなに?
僕、背は伸びて大きくなったよね。
どう成長すればいいの?」
「サムイ様。大人なるには、背の高さだけでは足りません。
心、精神をもっと成長させねば、アツイ様の希望している大人にはなりません。
今、サムイ様は、アツイ様の事だけを考えておられる。
そのお心を他者にも向けていただきたい。
どう感じて、どう行動を起こすのか。
その結果の責任も取れるのが大人と言われるものかと。
あなたは神殿に来られる前に、家々を回って奉仕活動を行っていましたよね。
なぜそうされたのか、どう感じたのかを思い出していただきたい。
前提にアツイ様の為というのがあるとしても、
あなたの奉仕で助かった人々は、あなたを天使様と呼んだ。
その崇高なる行いをあなたは神殿でもされておりましたが、
お顔も見ずに衝立越しで、流れ作業のように癒しをさせてしまった。
これは我々の罪、あ、いいえ、過ちです。
多感な時期に、もっと、サムイ様のお心を考えてあげれば良かったと
今更ながら後悔しております。」
「なんだか難しくてよくわからないよ。」
「そうですね。その思考力を奪ったのも我々です。
本当に申し訳ない事を致しました。
今から取り返しがつくかわかりませんが、
アツイ様は期待しているとおっしゃってました。
サムイ様、我々は支えることしかできませんが、
どうか、サムイ様に神の祝福が在らん事をお祈りいたします。」
「僕、考えてみるよ。」
ジークの言う事はよくわからないけど
神殿にくる前の僕を思い出すの?
うーん、なんだか頭にモヤがかかってあまり思い出せない。
2年前の事だよね。
うーん、うーん。
ジャック、カイ、ルルと一緒に家を回ってたのはボヤっと思い出すけど
その時、どんな気持ちだったかが思い出せない。
あれだ、時々変な言葉思い出すけど、なぜその言葉を知ってるのかが出て来ない。
そんなもどかしさ。
僕、こんなに記憶力悪かったの?
あ、神殿でスキルの勉強してたとき、
なんかそういうのが書いてあったような・・・
うーん、思い出せー!思い出せー!
「あ!思い出した!ジーク!思い出したよ。
神殿でスキルの勉強してた時に、本棚の裏に隠してあった本を読んだんだ。
人に大きく影響するスキルは、本人の許容範囲を超えて使うと何かを失っていくって。
その何かは人によって違うって書いてあった。
僕はきっと記憶力かもしれないね。」
「ええ? そんな本が神殿に? 本棚の裏ですか?
それは・・・きっと過去の神殿長の誰かが隠したのかもしれませんね。
今の神殿長ならそれを知っていたなら、あんなに癒しのスキルを使わせなかった。
ああ、本当に神殿の罪は重い。どうお詫びすればいいか。」
「んーでもね。今のを思い出せたってことは、
スキルを使ってなければ、過去のも思い出せるのかも。
だって、僕、昨日ヨルンを癒しただけで、それ以外使ってないんだ。
神殿だとほぼ毎日朝から夜まで癒していたでしょ?
流石に、それは許容範囲とかを超えてたのかもね。
てことは、あまり使わないでいたら、思い出すよ。きっと。
失うのは一時的って事じゃないかな。
だから、僕、それまでアツイ様に会わない。
今度会う時は、全部思い出した時だよ!」
「はい。サムイ様!そのお気持ちを聞けただけで、心が救われました。
どんなことでもお手伝いさせていただきます。
早くアツイ様にお会い出来るよう、頑張りましょう。」
「うん!」




