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聖邪混濁 〜寒い冬から暑い夏へ〜  作者: anishina
第三章 青年時代〜サンガル
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近衛騎士団到着

前話を改編したため、最初の一文を削除しました。

また街を村に変更しました。

ヨルンはお昼に目を開けて、昼飯を食べて少し身体を動かし始めた。

看病はもう必要ないというので、スレイと一緒に村へ出る。


状況を検分しに家に入ると、神殿の者が言うとおり、ベッドに腐った死体があった。

テーブルの上にうっすらホコリがある。

ヨークとサンガルでは気候が違うだろうが、

それを考慮に入れても、死んでから2週間以上は経ってるか?

サザンの街に物資が入らなくなったのも、おそらくこれが原因だろう。

いや、そもそも物資はどこからサザンに送ってたんだ?

ここを経由しないと周りは荒地で他に道はなさそうだった。


ブルーがここへきたのは、腹の減り具合から数日前だろうか。

だが、どうやって?歩いてくるのは流石に無理だろ。

と言うことは、馬か馬車で連れてこられたんだよな。

置いて帰ったのか?

昨日も今日も他に生きている人間はいないのだから、

そういうことなんだろうな。


「よくこんなところにブルー、一人を置いていったな。」


「え?ああ、あの子供ですか?サンガルは一体何を考えているのやら。

あんな小さい子に人を殺させるなんて、狂ってますよ。」


「なあ、疫病の原因が水だとして、ブルーは数日何も飲み食いしなかったんだろうか。

お腹が空けば、目の前にある物を食べそうなもんだが・・・

そういえば、家の中に食料を見てないな・・・

スレイ、数軒回って他の家も同じか見に行こう。」


「はい。わかりました。

病気で死んだとしても、食料は腐ったとしても残りますよね。」


スレイと一緒に何軒か見て回る。

どこにも食料がない。


「もっと、奥の方の家も見よう。」


「はい。もしかすると・・・」


「ああ、俺も多分同じ事を考えてる。」


道をどんどん歩いていき、奥にある家に入った。

やはりここもベッドで死んでいる。

そして食料がどこにもない。


「腐っていてわからないが、餓死の線もあるのか。」


「ええ、ですが、サザンは餓死者いませんでしたよね。」


「アソコは、ヨークから荷馬車が通るから。

ヨークの商人は荷をサザンで下ろして帰ってるかもしれないな。


俺達がダイバオに着く前から、戦争が起こるかも知れないって噂だっただろう?

サンガルへ行こうと思ったのは、その噂を聞いたからだから。

商人はそういうのに鼻が聞くってロガンが言ってた。

あれから何日たった?」


「公爵領を出たのが、アツイ様がジャックに話してから3日後でしたよね。

そこからダイバオまで7日、ダイバオで5日間潜伏し開戦。

開戦後、3日でここへ今日で19日目です。」


「もし、商人がその噂を聞いて、サンガルへ行かなくなったのなら

この惨状はあり得るのか。

あ、そういえば、この村、人は死んでるが、馬とかの動物の死体が無かったよな。

水が原因なら、動物の死体もあっていいはず。」


「一度、宿に戻りましょう。

アイス達ももう帰って来てるはずです。」


「ああ、そうしよう。」


スレイと色々考えながら、宿屋まで戻ると、

サザンの方から騎士団がやってきているのが見えた。


「おーい!ここだー!」

俺が手を振ると、一番前の馬だけ物凄い勢いで駆けてくる。

俺の前で馬をいなして降りたのは、

「グレイ!お前か!」


「はい!アツイ様!やって参りましたぞ!

王都騎士団はまだダイバオに着いていなかったので、

我らアツイ様の近衛騎士団が先に来させていただきました!」


「グレイがいれば心強い。それはそうと何人連れて来たんだ?」


「はい。騎士200、従者20の総勢220名。ああ、糧食については心配ご無用ですぞ?

キチンと一人ひと月分は持って来ております。」


「騎士200だって?近衛騎士全員じゃないか!レイグリットの防衛どうするんだよ。」


「大丈夫ですよ。王都騎士団と話がついております。

日数的な観点からも、戦闘の経験からも、うちの騎士団をこちらへ連れてくる方が万全です。

レイグリットには、王都騎士団から200名きてもらってます。」


「そうか。グレイありがとな。」


「いいえ。それより、神殿の者から話を聞きました。

このクロス村の民が全員死んでいると。

今から早速、埋葬の準備をしましょう。

あまりそのままにしておくと、衛生上よくありません。

ただ、もうすぐ夜になってしまうので、

数の把握と、埋葬の場所の確保だけをいたしましょう。

アツイ様、よろしいか?」


「ああ、頼む」


グレイと話をしている間に、騎士が続々と集まってくる。


「ウルマ!いるか!」


「はい!ここに。」


「各隊長を連れてきてくれ。」


「は!」


うちのレイグリット近衛騎士団は200人を20人ひとつのグループで10隊に分けている。


「集まったか?

これから馬番の従者を残して隊で分けて行動する。

1番隊2番隊はこの村に埋葬用の土地があるか探せ。

なければ外でも構わん。

3番隊4番隊は全隊の野営の準備をしろ。

5番隊以降は村中の遺体の数を調べろ。

その際、遺体を丁重にシーツに包んでおけ。

何か意見はあるか?」


「はい!神殿の者が疫病かもと言っていました。

処置はどうしますか?」


「ふむ。アツイ様、死体は見ましたか?」


「ああ、見た。死んでから日数が経ってるようで腐っていたよ。」


「では、死体の身体に何か変わった所はありましたか?

例えば斑点とか、痣とか、自分で喉を締めたままとか。」


「ん?いや、そのようなものは無かった。

手はみんな・・・胸に・・・

あ!スレイ、俺達が見た死体って、全員、手を胸の前に組んでたよな。

祈るみたいに。」


「え?ええ、そういえば。」


「では苦しんで死んだと言うわけではなさそうですね。

それと、はあ、アツイ様達は、この村に昨日から滞在しているわけですよね。

もう少し危機管理をしっかり学びましょうか。

疫病があったかも、といった情報が入った場合、口に布を当てるかして下さい。

空気で移る病気だったらどうするんですか?

または近くに発生源があった場合も同様です。

まあ、今回は先に神殿の者と会ったから、大丈夫と判断しましたが。」


「なぜ、神殿の者と会ったら大丈夫なんだ?」


「一晩、既にこの村で過ごしていたからです。

ダイバオで簡易検査をしたところ、異常無しでした。

実際、肝が冷えましたよ。」


「す、すまなかったな。グレイ。心配かけた。」


「いいえ。

みな、聞いていたか?そう言う事だ!

ただ、死体が腐っているようだから、口に布は当てていけ!

腐った死肉が飛び散って、口に入ってくるといけないからな。

では、行動しろ!」


「「「「は!」」」」


「では、アツイ様、昨日泊まった所へお連れ下さい。」


「ああ、すぐそこだ。」

と宿屋へ向かうと、アイス達も帰ってきていた。


「アツイ様、グレイ団長!大勢の声が聞こえたのでそうかと思いました。

急ぎ報告したい事が。」


「わかった。アツイ様、中に入りましょう。」


「ん」


皆で宿屋に入り、食堂に座る。

ヨルンも部屋から出てきて、グレイに挨拶した。


「で、何があったんだ?アイス。」


「はい。昨日来た時に疫病かもと話があり、私は水が怪しいと思いました。

それで、水の調査をしていたのです。

この村の水源は雨水と井戸水です。

雨を貯める貯水槽に水は一滴も残っていませんでした。

なので井戸水を調べたのですが・・・

毒が検知されました。疫病では無く、人為的な毒です。」


「!!少し待て!」

グレイが宿屋のドアを開けて、大きな声で怒鳴る。

「井戸の水は使うなあーー!!毒だ!!馬に与えるなよー!!」


「はいーーー!!わかりましたーーーー!!」


「ふう」

グレイが元の場所に戻る。

「従者には、疫病の話をしていなくてな。

馬の水は大抵、近くの水を使う。毒であれば馬が使い物にならなくなる。

この荒地で移動手段が無くなるのは致命的だ。」


「あ!そうだ、俺も報告がある。

スレイと一緒に何軒か家に入ったんだが、どこの家も食料が全く無かったんだ。

テーブルにはうっすらホコリも積もってたし

餓死の可能性もあるし、死んだのがだいぶ前というのもある。

あと、子供が一人、ここにわざと置き去りにされてた。

俺達を殺すために、銃を持たされてた。」


「なるほど。先ほども言いましたが、このサンガルでは移動手段が無いと致命的です。

このクロスからサンガル行きの次のスピカは、ここから馬で半日かかります。

またそのスピカから半日かけて次のリゲルに着き、

そこからまた半日かけると王都に着きます。

ここで言う半日は朝から昼までの事を言います。

馬車だと1日、朝から夜までです。


わかりますか?

ヨークからサンガル王都まで4日かかりますが、

荷馬車が停泊するためにのみ村や町が作られています。

荷馬車で1日毎に寄って行き、4日かけて王都へ行くのです。

この間には荒地しか存在しません。

このサンガルの村や町は、ヨークの食料が無いと存在出来ないのですよ。」


「サンガルには自給出来るものが無いと言うことか?

じゃあ、なんで戦争なんて!

ヨークの食料で食い繋いでいるなら、断たれれば国が終わるじゃ無いか!」


「20年前、なぜ戦争が起きたと思いますか?

サンガルはヨークが欲しいのです。

あの時、ヨークの街を襲い、略奪した物でサンガルは補給していたのです。

サンガルはあの時も自分が正義だと信じて戦っていました。

なんとか、押し留めましたが、こちらからサンガルへは攻め入りませんでした。

なぜだかわかりますか?」


「ヨークはサンガルの土地が要らないから?」


「そうですね。この土地は農作物が全く育ちません。

王都近くに鉱山があるため、鉱業でなら貿易をすれば

なんとか国として成り立つでしょう。

ですが、ただ、それだけでもありません。


攻め入れば、サンガルの王都まで何もないのです。

物資を持って、4日かけて攻め入り、また4日かけて帰って来なくてはならない。

王都でどれだけの日数を戦えるのかもわかりません。

あのころは、魔道具も今のような遠征に特化した物はありませんでした。

馬車に食料を積み込み、それを守りながら戦場に行くのです。

そして勝ったとしても、得られるものは何もない。

ヨークでは、誰もこの土地を欲しがらない。

昔話の言い伝えです。

この土地は、神から見放された土地。関わるな と。」


「そうか。俺、不思議だったんだ。なぜ休戦なのかって。

攻めていれば、勝てただろうにって。

そうだな。不要な戦いはしなくていい。」


「ええ、ところで、神殿の者から、サムイ様が同行していると聞いたのですが

会えたのですか?ここにはいないようですが。」


「あー、それな。色々あって、ジャックと神殿騎士とその子供も一緒に

次のスピカに先行させたんだ。

俺抜きで成長して欲しくてな。」


「「 え? 」」


驚きの言葉が重なったのは、グレイとヨルンだった。

そういえば、ヨルンには伝えてなかった。


「この村でこんな状態なのに、あの人数だけで先行させたのか。また無茶な事を。」


「何人同行していたのですか?」


「神殿騎士親衛隊10名、あ、いや、一人は伝令でダイバオに。今は?」


「ああ、一緒に来ている。流石に往復は疲れるだろうからと

ゆっくりくるように言ってある。」


「では、神殿騎士9名と、近衛騎士と子供一人であってるか?」


「ああ、それで合ってる。今朝ここを発った。」


「そうか。今頃はスピカか。何も起こってなければいいが。」


「ああ。でだ。俺としては、グレイが来た事だし、この村の実情も大体わかった。

なんで、明日、次のスピカに行こうと思ってる。

あまりゆっくりしている訳にもいかないからな。」

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