城塞都市レイグリット 後話
パンパカパーン
おかえりなさあいー、公爵様ー!
クラッカーが鳴り、紙吹雪が舞った。
は?何これ。
「公爵様。やっと、やっと会えましたな!
首をながーくして待っておりました。
私がまだ生きている内にお会い出来て、嬉しゅうございますーヨヨヨ〜」
おじいちゃんの歳くらいの人が、ハンカチで涙を拭う。
「今か今かとお待ちしてました。
お疲れでしょう。温かいお風呂を用意しましょうね。」
と母親くらいの歳の女の人がメイド服らしきものをきて笑顔で話す。
「公爵様ー、お部屋を綺麗にしておきましたよー」
「ご用があれば、いつでも呼んで下さいねー」
「お食事は、嫌いなものはありますかあー?」
「今度、庭に好きな花を植えましょう。いつでも言って下されー」
「お召し物は何色がお好みですかー?」
「何かお飲み物でも、お持ちしましょうか」
「こらこら、みんな、そんなにいっぺんに話しをしたら、
アツイ様が困るだろう。
今日は着いたばかりでお疲れだから、明日また挨拶をさせていただこう。
ではアツイ様、部屋へご案内いたします。」
グレイが寄ってきて耳打ちをしていく。
「アツイ様、眼鏡をしていて良かったでしょう?
皆の顔がはっきり見えた方が良いかと思いましてな。」
え!そっち?
はあああああ、緊張して損したー。
「なあ、グレイ、ここにいるみんなは、
俺がとんでもないスキル持ちだって知らないのか?」
「いいえ、知っておりますとも。
生まれた時に立ち会った者もおります。
皆、古くから公爵家で奉公しているものばかりです。
王都での非運も知っております。
そしてあなた様の心根も。
マントの事も。
どうぞ、お気を張らず、ゆっくりお過ごし下さい。
王もわかっているからこそ、静養と言ってらしたのですよ。」
「そうか、わかった。ありがとうな、グレイ」
「いえいえ、感謝など勿体無い。では、お部屋へ」
「うん、みんな!快く出迎えてくれてありがとう!」
きゃあ、きゃあ と喜ぶ女性達と
腕で目をゴシゴシする者達と
微笑んでこちらを見る者達
三者三様であったが、王都にいた時の下女のような
冷たい反応を誰もしない。
アツイをアツイとして見てくれる。
涙が出そうだ。
俺は、やっぱり、寂しかったのか。
嫌われても気にしないって思おうとしてただけ。
本当は傷ついてたんだな。ハハ。
精一杯のお礼のお辞儀をした。
「さあ、部屋へ案内してくれ。」
「はい!こちらへどうぞ」
手が指し示す方向へ歩き出すと、斜め前で案内してくれる男が
話しかけてきた。
「私は執事のバルと申します。
公爵様のお名前はアツイ様と伺っておりますが、
どのようにお呼びすればよろしいですか?」
「俺の事は、名前で呼んでくれ。」
「城内の者達も、お名前のがよろしいか?」
「ああ、公爵って言われてもピンとこない。
全員、名前で呼んでくれ。」
「承りました。」
「なあ、なんでみんな俺を怖がらないんだ?」
「そうですね、」
と話しながら、階段をどんどん上っていく。
「怖がる感情よりも、仕えたいと思う感情の方が上回っているからでしょう。
グレイなどがいい例です。
近衛隊長という役職のおかげでアツイ様の近くにおられましたが、
本当であれば、私が一番近くでお世話をする役目だったのです。
それなのに、今まで、お側におられず、心苦しく」
「いいよ。仕方ないよ。王様の命令だったんでしょ?
そうか、王都は王様管轄だから逆らえないけど、
ここは公爵領だから、別に王様の言う事聞かなくても罪にならないってこと?」
「アツイ様は凄いですね。その通りです。
グレイから話は聞いていましたが、理解力が高いですね」
俺、何度も言うけど大人だから。ね。
「さあ、だいぶ上まで来ましたが、ここがアツイ様のお部屋です。
窓からの見晴らしがいいですよ。」
「うわああー、本当だ!すごい!すごいよ!」
俺、ここに住めるんだ。ちょー感動!
王都よりよっぽどいいわー。
良かった、ここに来れて。
王様、グッジョブ!




