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聖邪混濁 〜寒い冬から暑い夏へ〜  作者: anishina
第二章 青年時代〜王都
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城塞都市レイグリット 前話

あれから3年経ったんだな。


アツイ 13歳


アツイは今、見張り塔のてっぺんから、公爵領を見下ろしている。


公爵領は王国の一番外側の領土を持ち、外敵から国を守るため、

堅牢な城があり、城塞都市となっている。

アツイはその城で、蟄居という名の静養をしている。

ことになっている。


実際は、蟄居でも静養でもなく、公爵家騎士団に混ざり、日夜、鍛錬に励んでいる。

まあ、たまに監視を掻い潜って、こっそり遊びに出ているのだが。



あれは3年前、王都を出発する日、

馬車に乗る前に、王城からの監視兼見送りの従者から

王からの餞別だと、サムイと色違いの眼鏡を貰った。

スキル遮断の魔道具だ。


ふっ、お揃いかよ。


馬車の中で、

サムイみたいに、効果があるといいが、

と眼鏡を掛けてみた。


おおお!顔のモヤが、見えない!!やったあー

周りが良く見える!!

これで俺も・・・・って、顔だけかーい!

おい!なんだよ!身体のモヤも取ってくれよおーー。

ちぇーー、マントは着たままかー。

ま、無いよりはいいけどさー。

仕方ない、顔だけでも有難いと思わなきゃな。


でも、ふっふっふ!

やっと俺の顔を拝めちゃうぜーー!

って、馬車の中に、鏡なんてあるかーい!


「あーー、くそおーーー」


馬車と並走して、馬に乗るグレイが、

馬車の窓に近寄ってきた。

「アツイ様、何かおっしゃいましたか?」


「!、何でもない!近寄んな!」

眼鏡ごと、顔を隠す。


「あっはっは、アツイ様のお顔を見れなくて、残念!」


俺の顔は、俺が最初に見るんだ!

それまでは、眼鏡外しとこ。


「もうじき、ルーバ様のお墓がある墓地に着きますので。」


「ん。」

そう、俺は公爵領へ行く前に、ルーバに別れの挨拶がしたかったんだ。


墓地の前で馬車を降り、墓守りに、ルーバの墓まで案内してもらう。

公爵家に咲いていた花を、自分で切って持ってきた。


墓の前に、花を置き、手を組み合わせて祈る。


ルーバ、俺のせいで死なせてごめんな。

ルーバが俺に教えてくれた5年間を、絶対無駄にしない。

どんだけ年が経とうと、俺の心にずっとお前は消えずにいる。

なあ、ルーバ、もし天国にいるなら、俺が死ぬまで見守っていてくれ。

ああ、そうだ。神様に会ったら、転生させてもらえ!

俺なんかが転生出来るんだ、きっとルーバなら神様も喜んで転生させてくれるさ。

再会を楽しみにしてる。

じゃあな。ルーバ。


アツイは前を向き、踵を返して、馬車まで歩く。


俺は、やっぱり、俺なんだ。

何がどうしたって、魂のあり方は変わらない。

なら、受け入れて、前に進むんだ!


王都に別れを告げ、公爵領へ向かう。

馬車で3日の道のりだ。

一切、街へは寄らず、野宿をして向かう。


俺がそうしたいって言ったら、

なんか勘違いされて、グレイに泣かれる羽目になったが、

俺は、街へ行って、うざったい思いするより、

絶対キャンプを選ぶ。

前世でも、キャンプでBBQとか好きだったし。

日本よりは、危険だろうけど、

近衛のみんなも一緒なんだぜ?

楽勝、楽勝!!


めっちゃ、楽しい3日間を過ごし、

俺がこれから住む場所を見た時、

口を、あんぐり開けたまま、固まった。


城塞都市レイグリット。

公爵家の名前がそのまま都市の名前だ。


なにこれ、すっっっげーーかっけーー!

男のロマン!マジでここに住むん?

やっばい、俺、異世界来て初めて感謝したわーー!

神様!さんきゅううー!


うっきうきしながら、馬車の窓から上半身を乗り出した。

城塞都市の門が近付いてくる。


うわあ、門でけえー


「アツイ様、もうじき門に着きますので、身体を引っ込めて下さい。」


「ああ、わかった。」


ここで何で?とか子供みたいに聞かない。

俺は大人だからな。


ソワソワ、ソワソワ、ソワソワ

あかん!テンション上がりすぎて落ち着かんー

後でゆっくり見れるんやから、我慢だ我慢!


門の前で馬車が止まる。


「レイグリット公爵様のご帰還だ! 門を開けろ!」


「は!」


おおー、すんなり入れるんだ。

誰だー!とか顔を見せろー!とかならないんだな。

あ!そういや、馬車に紋章付いてたわ。

あと、一緒にいるの公爵家の近衛騎士だしな。

まあ、これで疑われたら、門番移動させられるわな。


門が開いて、馬車が動き出す。

中は石畳の道のようで、馬の蹄の音と車輪の音が変わった。

窓から街並みが見える。

王都とは違い、堅牢な作りになっていた。


おおおおおー、我慢、我慢。

俺は大人ー、大人ー。


馬車はどんどん進んで行き、

一際、高い所にある城の前で止まった。


「アツイ様、着きましたぞ。」


馬車の扉が外から開かれた。


一呼吸置いて、馬車を降りる。


目の前に、これでもかというほど、高くそびえ立つ城があった。


俺、もう泣きそう。

神様、ホントにほんと?

俺ここに住んでいい感じ?


馬車がそのまま前に進んで行ったんで、後ろを振り向いた。


「うひゃあああああ」

もう我慢の限界だった。


眼下に城下町が広がり、その周りをぐるりと高い塀が囲む。

これが、城塞都市レイグリット

俺の街だ。


「アツイ様?いかがしました?体調でも崩しましたか?

大丈夫ですか?聞こえていますか?」


グレイがなんか言ってるが、もう俺の耳には届かない。


「うひゃああ?とは一体?何かの暗号ですか?

それとも、」


「あああーグレイ!さっきのは忘れてくれ。いいな。もう何も言うな?」


「はは!サムイ様のうひゃああ、は忘れまする。」


「もう!わかったってば!で?俺、中に入るんだよね。」


「はい。出迎えの者がいると思いますので、

出来れば眼鏡をしていただいた方が良いかと。」


あー、そうだよな。初対面でモヤ人間を見るのは、可哀想だよな。

マントはしてるから、モヤは目元だけだけど。

いや、普通に怖いわ。

この城でもやっぱ、嫌がられるのかなあ。はあー。


眼鏡装着っと。

俺、結局自分の顔見るの最後なんじゃー。

もういいや。

この城に住めるんだ!そんな些細なことで愚痴るな俺!


「グレイ、行くぞ」


「は!」


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