護衛の名前はジャック
サムイ様を迎えに行ったら、学校が早めに終わったのか、学生がほとんどいなかった。
辺りを見回したが、サムイ様が見当たらない。
どこにいるのだろう。まだ校舎の中かもしれない
と、学校の敷地内に足を踏み入れたとき、後ろから声がかかった。
「ジャックー、ごめんーここにいるよー!」
「サムイ様!学校の外にいたのですか?どうしてまた!」
「ごめん、ジャック。今日は学校が早く終わってねー。
ジャックが来るまでに修理した眼鏡を取りに行ってたんだよー」
「そうだったのですか。それは申し訳なかったです。」
「ううん。急な事だったから仕方ないよー。
さあ、帰ろうかー」
「はい。」
学校が終わっていたとは!知り得ていたら迎えにこれたが、こればっかりは。
「何事もなかったですか?」
「え!う、うん、何も?無かったよー?」
「!!」
怪しい。怪しすぎる。
だが、サムイ様が隠したがっていることを、問い正してもいいものか。
うーーん。
「サムイ様、今日は魔道具屋以外にどこか行かれましたか?」
「え?うー、うん!屋台が出てるとこーそこのベンチでお弁当食べたよー」
ん?お弁当をそんな所で?
ひとりでか?益々怪しいー
「サムイ様、お弁当美味しかったですかー?誰かと食べるともっと美味しいですよねー」
「うん!そうなんだよ!一人より二人、二人より三人だよねー!! あっ」
「サムイ様?お弁当はどなたかと一緒に食べられたのですね?それも三人で。なぜ隠そうとするのです?」
「んーん、別に隠そうとか思ってないよー。でもどんな人かは内緒なんだー。」
「内緒にするのは、知られると困った事になるからですか?その人達は信用できるのですか?」
「うん。それはもう。信用も何もすっごいおうちの人達だったよ」
これは不味いかもしれないな。サムイ様の言うすっごいおうちとは恐らく貴族かなにかだろう。
魔道具屋で出会い、その流れで囲い込もうとしているのではないか。
「その人達は、また会おうと言ってましたか?」
「んー?んー内緒ー」
「サムイ様??そこで内緒とは!会う約束をしたのですね?そうなのですね?
はっ!もしかして紙に何か書いて、血を垂らしたりしませんでしたか?」
「ジャック!どうしてわかるの?すごーい!あっ!これも内緒だったっけ?」
ああーー遅かったか!
これは相当不味い事になったぞ。
ダン様に報告しなければ!
どんな内容だとしても、今日会って、即契約するなど、どんな奴だろうと悪い奴に決まっている。
ああ、もう取り返しがつかないかもしれない。
契約の内容が知りたいが、今の様子だと聞いても答えられない恐れがあるな。
「サムイ様、契約の内容は喋れますか?」
「ええ?んー誰かを言わなければ良かったんだっけ?
そうだ!言ったら牢獄に入れられるって。だから言えないよー」
「な!な!なんてことだぁ。脅されて書いたのですね?何て卑怯な奴らなんだあ!」
「違う!違うよおジャック!僕が行くって言ったんだ!18になったら行くって!あの子を助けに!
だから脅されてとか、悪い奴とかじゃないんだ!僕を信じて!」
18?あの子?
「サムイ様、契約した人は、子供なんですか?」
「そうだよ!僕より背は低かったからきっと年下だと思うんだ。けど年は教えてくれなかった。」
うんー?貴族の子供のいたずらか?
子供でも契約は血を垂らした時点で有効だ。
いたずらでは済まされない!
どこのどいつだよ!
「その子の名前は言えないんですね?」
「うん。言えないよ。可哀想だからね。」
「可哀想、ですか。」
ここまでの情報でわかる事は、
すっごいおうちの貴族の子供、もう1人は恐らくその子の護衛だろう。
サムイ様より年下で、会話ができ、隠し事があり、それを言えば牢獄に入れられる。
そして18になったら助けに行くと約束する。そんな可哀想な人物。
年は5歳以上9歳未満の子供。
ま、ま、まさか。
今から7年ほど前、公職家で乳母の募集があったものの、その後、なんの話も出て来なくて
子供は産まれたのか死んだのかもわからない。
なんの噂も流れて来ないから不思議だよなって飲み仲間と話した事がある。
最悪だ。もしそうなら、どこへ助けを求めても誰も手を出せない。
「く、なんてことだ。」
「ジャック、そんな顔しないで?
僕が行きたいって思ったんだ。
みんなに言わずに勝手に決めちゃったのは悪いとは思ってる。
けどね、僕なんだかあの子に出会って、心がザワザワしてドキドキしてー
よくわからないんだけど、ずっと一緒にいなきゃって。
そう思ったんだよ。
本当は今すぐ一緒にいてもいいと思ったけど、
成人したらって、あの子が言ったんだ。
きっと今でも辛い思いをしているはずなのに。
僕の事を大事に思ってくれてる。そう思えるんだ。
だから、ね!ジャック。そんな悲しい顔しないで?」
「サムイ様・・・そうでしたか。サムイ様もその子を大事に思っているんですね?」
「うん!」
「わかりました。帰ったらご両親にもそのお話をしましょう。
その子の事さえ言わなければ牢獄に入る事もないでしょう。
ただ、18で家を出て行かなければならない事は言っておいた方がいいと思いますよ。」
「うん、わかった。」
はあー、このままいけばあと、10年足らずでサムイ様とお別れになるのかー
一生を捧げるつもりだったのだが。
いや、待てよ。
行く先は、ほぼ決定してるんだから、
そこへ入り込めば、またサムイ様に仕えられるのでは!
よし!今後の目標が決まった。
公爵家の兵士になり、出世して、サムイ様の護衛にまでなってやる。




