第13話 裸踊りしてみた
「……」
ここまで来ると、もはや「虚無」だ。あまりにも再生されないもんだから「悲しい」とか「悔しい」とか「辛い」という感情が湧かない。
何なんだ俺は? 俺って何なんだ? 自分のやってる事に「虚しさ」を感じていたが、それでももう2度と動画は撮りたくないとは全く思えないし、YouTuberへの道を諦めるつもりは一切無かった。
それこそ幼稚園児の頃からYouTuberになる夢を見続けたんだ。それを諦めようという気持ちはカケラたりとも無かった。
炎上でも無理なのなら……いっその事、イカレてしまおうか?
そう決意してから1週間後、通販で買った荷物……ブーメランパンツとブラジャーが届いたのを契機に俺は撮影を開始した。
7月初め、大学ではそろそろ試験の時期を迎えた頃、俺は覚悟を決めて動画配信を始めた。
「はいどうもー! マックスありさわでーす!」
アパートの自室にカメラを三脚で固定し、普段以上にハイテンションな勢いで撮影を開始する。テンションが高いのか、股間もギンギンだ。
その俺の姿は……通販で買ったブーメランパンツを穿いて、胸には同じく通販で買った女物のブラジャーをつけているという奇抜な物、少なくとも常人ではまずしない格好だ。
股間や乳首は見えないからYouTubeの規約には触れないはずだ。
両手には100均で買ったプラスチック製のいかにも安っぽいお盆を持って、股間と胸を隠していた。
目には競泳用のゴーグルをかけ、頭には水泳用の帽子を被っていた。
「今日は裸踊りをしてみたいと思います! ミュージック、スタート!」
そう言って最大音量にしたスマホから音楽が流れ出す。確か「タブー」とか言った、昔流行った曲らしい。裸踊りをするには良い曲らしい。
聞きなれないBGMが流れる中、俺はお盆を持って股間を隠しながら踊りだす。
「ハイッ! ハイッ! ハイッ! あヨイショ! あヨイショ! あヨイショ! あソレソレソーレ!!」
カメラに対し前や後ろを向いてお盆で股間や尻を隠しながら踊り続ける。
やってて虚しくなるというか「俺は何をやってるんだ……」とふと我に返る事もあるが、それを無視して踊り続ける。
全ては再生されるため。例え笑われ者になったとしても笑われるだけまだマシ。無視され続けるよりは断然いい。
やがてBGMが止まると最後の締めに入る。
「安心してください! ちゃんと穿いてますよ!」
そう言って股間を突き出してブーメランパンツをはいていることをアピールする。
ギンギンに勃起した股間がデカデカと映ってしまったが、まぁこれ位の事はやらないと視聴者は出てこないだろう。
……終わった、やり切った。達成感なんてこれっぽちも無いし謎の虚無感は終始離れなかったが、それでも最後まで撮影を終えた。
「本日の動画は以上となりまーす! この動画が良いなと思った方は、チャンネル登録と高評価を是非よろしくお願い致します!
チャンネル登録の後、ベルのマークの通知をオンにしていただければ最新の動画も見れますのでそちらもよろしくお願いしまーす!
こんな企画してくださいとか、コメントも何でもOKですのでお待ちしています!
それではご視聴ありがとうございました!」
YouTuberお決まりのセリフを言って撮影は終わった。
作業中に宅配の人が来ても大丈夫なように普段着に着替えたうえで編集を始める。もう何も言わなくても手順はハッキリと分かっていて、難なくこなしていく。
7時間で作業を終えてアップロード。気づいた時は夜中の11時を過ぎていた。
翌日の朝、YouTubeの管理画面を見てみると……。
『マックスありさわ 裸踊りしてみた』
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