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1-9 帰宅

ナルはギルドの前に立っていた


数日しか経っていないはずなのに、ひどく懐かしく感じる


中へ入る勇気がなかなか出ずにいると、不意に横から声がした


「お~、なつかしい~」

「全然変わってないね~」


驚いてナルが振り向く


そこにはミナがいた


くせっ毛の方だ


「な、なんであんたがここにいるの!?」


「ナルについてきたに決まってるじゃん」


「なんでついてきてるのよ!?」


「心配だからに決まってるじゃん。友達でしょ~」


「あなたが見つかったら、ミナとソラ君びっくりしちゃうでしょ!?」


「あ~、それもそうだね」

「わたしもあっちのミナとは会いたくないんだよね~」


するとミナの体が光りだした


光が収まると、姿が変わっていた


黒いボブヘアー


大きな眼鏡


顔立ちまで変わっている


「なにそれ!? あんた変身できるの?」


「うん。光の屈折でちょちょいって感じ?」


二人の話し声に気づいたのか、ギルドからソラが出てきた


「ナル?」


ソラを見た瞬間、ナルの胸が大きく跳ねた


「ソラ君」


「やっぱり! ナル」


ソラはナルに駆け寄ってくる


「心配したよ」

「急に帰らないって連絡がきて、それから音沙汰なしで、どこにいるかも分からなくて」


「ごめん。リンに弟子入りしてさ、組合にいたんだよ」


「でも良かった。元気そうで」


そこでソラは、ナルの隣に立つ女へ視線を向けた


「この人は? 知り合い?」


「どーも。わたしはクロ。ナルの友達」


リンの猫の名前じゃん、とナルは心の中で突っ込んだ


「クロさん? ナルの友達? 俺はソラ」


するとギルドからミナも出てきた


「ナル! どこ行ってたの? 心配したんだから」


「ごめんね~」


ソラが言う


「とにかく中に入って座ろうよ。クロさんもどうぞ」


その時、ミナの目がクロに向いた


「クロさん?」


ミナは時間を忘れたみたいに、しばらくクロを見つめていた


「どーも」


ミナの横をクロが通り過ぎ、ギルドへ入っていった


ナルとクロ、そしてミナが椅子に座る


ソラは飲み物を取りに厨房へ向かった


クロがナルに耳打ちする


「なんか鏡見てるみたいで気持ちわる~い」


ナルも小声で返す


「もう、なんでついてきちゃったのよ」


「ってかさ、こっちのミナって髪の毛サラサラのストレートじゃん」


「なんでわたしはくせっ毛なの? ずるくない?」


「そんなの知らないわよ」

「あんたの根性が毛根から出てるんじゃないの?」


「ひどーい」

「小さいころに、わたしのくせっ毛好きだよって言ってくれたじゃん」


「いつの話よ」

「しかもそれ、あんたに言ったんじゃないわよ」


「わたし昔からくせっ毛だよ?」

「あっちのミナの時だけ褒めるとか差別じゃない?」


言い合う二人を見て、ミナが声をかけた


「あの、ナル?」


「あ、ごめんミナ。なに?」


「二人って、どういう関係なの?」


クロが即答した


「恋人同士だよ!」


「え!?」


ミナが目を丸くする


「違うでしょ!」

「この子もリンの弟子なのよ」


そこへソラが飲み物を持って戻ってきた


水差しからカップに飲み物を注ぎ、それぞれの前に置く


それから自分も椅子に座った


それを見て、ナルは目を細める


相変わらず、近いんですけど


ソラはミナと肩が触れそうなくらい近くに座っていた


「改めて、俺はソラ。こっちはミナ」

「ナルと一緒に暮らしてるんだ」


「クロで~す」

「どうでもいいけどさ、あんたたち距離近すぎない?」


「え?」


ソラとミナが目を見合わせる


「横、空いてるじゃん」

「なんでそんなに近くにいるわけ?」


「そ、そうかな」


「新婚だからって、人前でイチャイチャしないでくれる~?」


ナルは慌てて、クロの腹を肘で小突いた


「あんた! いらないこと言わないでよ!」


「言ったほうがいいよ」

「無神経すぎない?」


ソラはあたふたと立ち上がる


「あ、えっと、俺、食事の支度するよ」

「ナルもお腹すいてるだろ?」


ナルも立ち上がり、クロの腕をつかんだ


「この子、ちょっと変わってるからさ」

「わたしたち部屋にいるね」


そう言って、ナルはクロを引っ張るように自分の部屋へ連れていった


中へ入ると、クロは嬉しそうに言った


「ナルの部屋だ~」

「意外と入ったことなかったよね」


クロは枕に顔を押しつける


そして、くんくんと匂いを嗅いだ


「ナルのにおいがする~」


「やめなさいよ! 気持ちわるい!」


ナルは枕を奪い返す


クロはそのままベッドに寝転がり、天井を見ながら言った


「ねえ、ナル~」


「なに?」


「ほんとにあの薬、飲ませる気なの?」


ナルはベッドに腰を下ろして答えた


「どうだろうね」


「そんなにあいつが好き?」


「……そうかもね」


「あいつと一緒にいたいってこと?」

「諦められないの?」


ナルは答えなかった


「そっか……」


クロは大きく伸びをしてから言った


「あーあ、わたしが男ならな~」

「絶対ナルのこと幸せにするのに」


ナルは小さく笑った


「なによそれ」


クロは起き上がり、ナルを見た


「ナルがそうしたいなら、応援してあげる」


ナルは返事をしなかった


その時、扉がノックされた


ドア越しにソラの声がする


「ごはんできたよ~」


二人は顔を見合わせ、立ち上がる


その拍子に、ナルのポケットの中で小瓶がかすかに鳴った





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