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3-16 兄妹ですか

馬に乗った武装集団が、こちらに向かって走ってきていた


地響きのような音を立てながら近づいてくる


その先頭には、昨日の赤髪の隊長、テッサの姿が見えた


テッサは近くまで来ると手を上げて部隊を止めた


そして馬から飛び降りると


ラミルを見るなり、顔色を変えた


すぐにナルたちのもとまで歩み寄り


三人の前で地面に這いつくばって頭を下げた


「頼む! ラミルを見逃してやってくれ」

「そいつとはずっと一緒に頑張ってきたんだ」

「私にできることならなんだってする」

「だから、命だけは助けてやってくれ」


するとラミルを乗せた砂のクッションが、テッサの前に移動した


何か言おうとしたリンを制するように、ナルが言った


「だったら、ラミルを連れて帰ってよ」

「別にどうこうしようなんて考えていないから」

「それから、昨日はごめん」

「あれはわたしが悪かったわ」


テッサはナルを見て言った


「あんたは?」


「昨日あなた達に喧嘩を売ったのは、変装したわたしよ」

「だから謝ったの」


テッサはまだ状況を飲み込めていない様子で言った


「ラミルを許してくれるのか?」


「うん、早く連れて帰りなよ」


「ありがとう!」


テッサがラミルを抱き上げた


ナルが横目でテッサを見ながら声を掛けた


「一つだけ、聞いてもいい?」


テッサはラミルを抱え直しながら振り返る


「なに?」


ナルは少しだけ言いづらそうに視線を泳がせた


「イナクとあんた達って、その……付き合ってたりとか」

「そういうのなの?」


テッサは困惑した表情をしたあと、あっさり答えた


「まだ違うけど、私達はイナクと結婚するつもりだよ」

「あいつはいい男さ。独り占めする気はない」


「な!?」


ナルの表情がゆがむ


テッサは悪気もなく続けた


「イナクは身持ちが堅くてね、誰が最初に手を付けてもらえるか賭けてるのさ」


ナルの顔は引きつっていた


「じゃ、そういう関係じゃないのね」


「そうだけど……」

「イナクだって男なんだから、そのうちそうなるさ」

「私達、ノア長官に頼み込んで、あいつの直属にしてもらったんだ」

「長官も、イナクに家庭を持たせて、第三軍に腰を据えさせたいみたいでさ」

「最初に子供を身籠った奴には、褒賞まで出すってさ」

「つまり、長官公認ってことだよ」


ナルの目がすっと据わり、声を荒げた


「なによそれ!?」


ミナが慌ててナルの口と体を押さえた


「はい、そこまで!」


リンが言った


「余計なことを聞きましたね。もう立ち去りなさい」


そう言われ、テッサたちは馬にまたがり、来た道を引き返していった


ナルが大人しくなったのを見て、ミナは手を離した


ミナは困ったように言った


「もう……おちついてよ」


ナルは少し考えるような顔をしてから言った


「わたし、ちょっと寄り道してくる」

「二人は先に帰ってて」


ミナは少し呆れた顔をしながらも、ナルを刺激しないように言った


「ナル、それはダメだよ」

「イナクに迷惑だよ」


「ちょっと釘を刺しに行くだけよ」

「何もしないから」


リンが口を挟んだ


「なりません」

「あなたは昨日、反省したと言ったではありませんか」


リンはナルをまっすぐに見た


「腹を立てるなとは言いません」

「ですが、感情に、自分の行動を決めさせてはなりません」


ナルはリンと目を合わせようとしなかった


リンはナルの前に回り込み、逃げる視線を捕まえるように顔を覗き込んだ


「イナクさんについては、わたくしの方で手を打ちましょう」

「近日中に、あなたにも報告すると約束します」

「ですから、わたくしの言うことに従いなさい」


ナルは唇を結んだまま、しばらく黙っていた


リンの声は静かだった


けれど、背くことは許さない声だった


「ナル、分かりましたね」


ナルは渋々返事をした


「……分かったよ」


ナルは大人しく馬車に乗る


三人を乗せて、馬車がゆっくりと動き出す


ナルは窓の外を見たまま黙っていた


ミナも、何を言えばいいのか分からず、困った顔をしている


リンはそんな二人を見て、小さくため息をついた


「兄妹……ですか」




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