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非日常メイドスカート  作者: ローリング・J・K
横雨の下の文化と人間について。
10/12

レインコート

それにしてもなんという責任の重さだ。

1つの生物を、ましてや5人の遺体を継いだ生物を手違いで創り出してしまうとは。


取り敢えず目の前の少女に俺の着替えを着せた。麻布の服でうろつく訳にも行かないからな。と思ったが、見る見るうちに着せた服が体液に染みて黒ずんでいく。


「はぁ...じゃあ好きな色はなんだ?」

「ピンク、青。」

「どっちだよ...」

「ピンク、黄色、オレンジ、紫、ピンク。」


どうやらこのスライムの記憶は、5人分の記憶が断片的に入り乱れている状態らしく、自分の好みでさえもこの様に不確定なようだ。


「分かったよ...ちょっと待っててくれ」

「...んあ。」


どちらにせよこの様な形でこの世に生み出してしまった俺には責任がある。


そして俺が向かったのはこの二傘流(にさんりゅう)の傘を買った、あの雨具を取り扱う店だった。

店内に入ると以前と同じ艶やかな髪をした店員が迎えてくれた。


「あら、またいらしてくれたのね。」

「ああ、どうも。」

「今回は何をご所望かしら?」

「あの、水分を...いや雨をよく弾くような服ってありますよね。」

「ええ、レインコートを探してるのね。」

「はい。」


俺は店の奥の方へと案内された。

以前と同じ品揃えだが、前回のこともあってやはり値段にばかり目がいってしまう。


「こちらは種類が多いですけど、どれに致します?」


ううむ。

たしかに種類が多い。そう言えばあの少女はあの瓶の中にあった花を随分と大事そうにしていたな。ならば...


「花柄ってありますか?身長はこのくらいで...」

俺は自分の首元に手刀を伸ばしてジェスチャーをした。


「ありますよ!

この腰の辺りに細かな花柄が散りばめられたデザインなんか如何でしょうか!?」

「ああ、いいですね。」

「他にもカラーもございますが、如何なさいますか?」

「ああ、じゃあピンクで。」

なんとなくだが、あの少女にはピンクが似合うような気がした。さっき一番連呼していたしな。


「かしこまりました!ところでお客様。

お足元の方はよろしいのでしょうか?」


「足元?」

俺は自分のハイヒールを見た。

靴か。確かにあの少女には履くものも必要だろう。勿論撥水性のあるものをだ。


「ええ、じゃあそれも。」

「ありがとうございます!」


これもピンク色の花柄の長靴を選んで会計に向かった。


「ではレインコートの640ガレルと雨靴の720ガレルで、合計1360ガレルを頂きますわ!」

「1360ガレル...」


シンプルな見た目だったので、もう少し安くなると思っていたが、シンプルなもの程いい値が付くという事だろうか...


マジックテープの財布を開くと、中にはもう1900ガレルしかない...


「わかりました...」


俺は昨晩、明日のことは明日考えればいいと思っていたが、やはり前もって金の管理をしておくべきだったと後悔した。


俺はトボトボと宿に戻った。

「あと540ガレルかぁ...」

もう朝食の時間を過ぎていたので、受付にいた店主に部屋から荷物を出したらチェックアウトするという旨を伝え、俺は自室の扉を開いた。


するとそこにはあの少女の姿は無く、床一面が粘つく液体で満たされていた。


「おい!大丈夫か!」

まさかこの気温で溶けてしまったというのか!?


「うあ〜わ。」

床一面の液体は部屋の中央に吸い寄せられ、集まった液体は見る見るうちに棒状に高さを増し、やがて少女の形に変わった。


「びっくりした...お前そんなことが出来るのか...」

どうやらこのスライムは床で液状になって遊んでいただけの様だった。


彼女は真っ裸だったが、自身の体を床から持ち上げる際に巻き込まれた麻布で身体を隠している。

どうやら生前の女の子らしい恥ずかしさは一応持ち合わせているようだ。


「ほら、これ着て。」

俺は先程購入したレインコートと長靴を手渡した。

彼女はそれを受け取ると、再び身体をドロドロに溶かして床全体に広がり、その液体をレインコートと長靴の中に満たした。

再び少女の形に戻ると、雨具一式を身にまとった普通の少女が立っていた。


「随分と派手な着方だな...」

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