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65.行く先はダンジョン

「……魔女?」


 取り調べ担当さんはその言葉にほとんど思い当たる節がないらしく、尋ね返した言葉にはおもいっきりでっかい疑問符が付いている気がした。


「幼い頃に、物語で聞いたことはありませんかしら。かつて、聖女と相対する存在として魔女という者がいた、と」

「それは、自分もおとぎ話として知っています。しかし、現在ではその存在はないものだと」

「それが、おられるのですわ」


 ワリキューア帝国、魔帝陛下をよく思っていないスヴァルシャ家の令嬢が自分を呼ばせている単語、魔女。

 グランブレスト王国まではほとんど伝わってきてなくて、私たちが知っているのはラハルトさんが情報をくれたから……ってことにしよう。前世の話なんざ面倒くさいし。


「わたくしはその御方のご助力を得て、グランビレこそが我が国の長たる存在だと証明したかったのですけれど」


 言葉はともかく、スクトナ様はまるで諦めていないような口調でそう言う。要は、今回は駄目だったけれどまた次回、という感じ。

 王城にとっ捕まって尋問受けてる段階でそれって、まるで誰かがどうにかしてくれるんだと信じ切っているみたいね。あと、スヴァルシャ家ってセイブランとつながっていたはずだから……あーあーあー、そこら辺まるっと繋がってたかこんちくしょう。


「魔女と名乗る女性は、どちらにおられるのですか」

「わたくしが、申し上げるとお思いですの?」

「いえ」


 多分スクトナ様は、魔女がスヴァルシャ家令嬢だと知ってるよね。だから、じっと黙っている。これは帝国と王国の仲をややこしくしたくないとかそういうことじゃなく、単に魔女の素性を隠しておきたいんだろう。彼女にとって、今の王家とかは敵みたいだし。

 取り調べの人はおそらく、その魔女こそがこの事態の黒幕であるとか思ったんじゃないかな。まさか、我が国の大公家のご令嬢が、なんて思い込みありそうだし。


「お話は、ここまででよろしいかしら?」

「ええ。ありがとうございました……城からは出すわけには参りませんが、失礼ながら地下の牢に移っていただくことになります」

「そうでしょうね。わたくしがどのように扱われるか、楽しみですわ」


 おー、やっと取り調べが終わったようだ。がたがたと音がして、人が出入りするのが分かる。どうやらスクトナ様は、これで罪人と認定されたようだねえ。牢屋に入れられるっていうのは、そういうことだもの。


「終了いたしました。聖女様がたには長い時間我慢を強いてしまい、申し訳ありません」


 しばらくして、カーテンの向こうから取り調べをしていた人が顔を出した。兵士みたいだけど、制服がちょっと違う。憲兵とかそういう人なのかな……まあ、犯罪者の取り調べだしなあ。


「いえ、お気になさらず」

「スクトナ様には、協力者がいらしたのですね」


 エンジェラ様がまず言葉をかけ、私が続く。魔女がスヴァルシャ家令嬢ってのは……私が言うより、エンジェラ様か殿下あたりから言ってもらったほうが良さそうだ。さすがに、国境の向こうの話だし。


「スクトナ様はあ、その協力者が助けに来てくださると思っていらっしゃるのですかねえ」

「わたくしなら見放すと思いますが……まあ、わたくしは魔女ではありませんし」


 地味に辛辣なことを言うピュティナ様と、逆にズバリとぶっちゃけるコートニア様。うん、私もスクトナ様はこのまま切り捨てられると思う。グランブレストの国内ならともかく、スヴァルシャの魔女がいるのは端っことは言えワリキューア帝国だものね。


「魔女、という存在につきましては、わたくしとフランティス殿下に少々思い当たる節がございます。殿下から書面を出していただけるかもしれませんので、少しお待ちいただけますか?」

「なんと。ぜひ、よろしくお願いいたします!」


 おお、私の考えがまるでエンジェラ様に通じたみたいだ。そうそう、王族から情報出してもらえばなんとかなるよね。

 あとは、魔女さん周りがどう動くか確認したいところだな……狙われた方としては、一発くらい殴って差し上げないと気がすまないもの。いやほんとに。

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