45.研修完了グッドバイ
それから、三箇所ほどの集落を回ったところで研修タイムアップとなった。一応、半月ほどっていう期限は決められていたんだけどまあ、主にセイブラン残党のせいでちょっと延びたというか。
「お世話になりました!」
「いやいや。キャルン様こそ、ようついてきなさった」
馬車に乗る前にご挨拶すると、ガラティア様はにっこりと笑って答えてくれた。いや、ついていったと言ってもコトント村で両親の仕事についていったのとあんまり変わらないし。
「いえ、大丈夫でしたよ。それに、体力と根気はあるもので」
「それは平民に学ばねばならんのう。貴族の聖女は人にもよるが、すぐへたばる方が多かったでな」
あー、そうなんだ。もっとも、貴族の人だと歩くより馬車に乗るほうが多そうだしなあ。それに私は農作業とか、いろいろお手伝いもしてたから……もしかしたら、前世より体力ついてるかもしれない。
「移動に馬車を使うのは分かるんですけど、せめて街を出て欲しいんですよね……街中のあっちからこっちまで馬車っていうのはどうも」
「ま、それは理由にもよるぞえ。権力者絡みじゃとな、暗殺者に狙われているやもしれんでな」
「あー、それなら分かります」
一応ぶっちゃけてみたところで、ガラティア様からきっちりした理由を出されてしまった。
そりゃそうだよなあ……私ですら刺客差し向けられたんだ、普段から重要な地位にいる人なんていつどこで狙われるか、分かったものじゃない。
「キャルン様とて、ここからお城まで向かうとしたならどう考えても馬車一択じゃろ?」
「暗殺者の話を聞くと、さすがに歩きたくないです」
「また、どこからか刺客が湧いてくるかもしれませんし」
そういう話を聞いてしまうと、そりゃ徒歩での帰参はないわ。エイクも横で、うんうんと頷いてくれてるし。
「騎士殿のおっしゃるとおりじゃな。お城までは歩いてもせいぜい三、四日ちゅうところじゃが、馬車で一日より三倍、四倍も狙われる時間が延びる」
あーあーあー。時間短縮って、そういう意味合いもあるのか。そりゃ、三日や四日よりも一日の方が狙われる時間は短くなるよね。
「エイクや護衛の人たちに、お手間をかけさせるわけにもいきませんものね……」
「そういうこっちゃな。聖騎士部隊も、怪我は負いたくなかろ」
「だから兄に、腰抜けとか言われるんですけどね」
「騎士っちゅうもんは、いざというときにきちんと働きゃええんじゃ。面倒な仕事はなしにこしたことはねえ」
「暗殺者の相手なんて、面倒にも程がありますもんね。冗談抜きで、どこから湧いてくるか分からないし」
結局、そういうことになるんだよなあ。少しでも面倒を減らさないと、周囲への被害が増えるばっかりで。
それもこれも、主にセイブラン残党どものせいだ。おのれー。
「まあ、聖騎士部隊はそこまでおろかでもないはずじゃ。お城までしっかり、キャルン様をお守りするんじゃぞ」
「はい、分かっております」
「お願いね、エイク」
「はい!」
ガラティア様の言葉と私の言葉に、エイクはびしっと背筋を伸ばして答えてくれた。ガラティア様はともかく、私はエイクがちゃんと頑張ってくれないと生き延びることはできないわけだし。いやもう、戦闘能力ないのって悲しいねえ。
「では!」
「うむ。今後のご活躍、お祈りしておりますぞ」
二人して同時に頭を下げて、ガラティア様に見守られながら馬車に乗る。いやもう、馬車さえひっくり返されなければ大丈夫なんだけど……周りに他の騎士さんたちもいるし、大丈夫か。
つーか、たかが小娘一人の移動にがっつり護衛のつくこと。他の聖女はだいたいが貴族出身で、家柄とかいろいろあるからいいんだけどね。私は形式上は養女だけど、結局の所平民だし。
……こういうところを、『のはける』のフランティス殿下は気に入っちゃったのかなあ。ただの育ちの悪い娘、なのにね。




