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38.内情確認バッチグー

 ガラティア様のお仕事は、はぐれ魔物を狩る兵士たちのサポートとそれから、もうひとつある。


「まったく。もう年なんじゃから、鍬は一回り小さいのにせえ言うたじゃろ?」

「ま、まだ行けると思ったんですよ!」

「力仕事は若い衆に任せなさいや。おたくのドラ息子、力は有り余っとるじゃろうに」

「いだああああああ!」


 べっちん、とガラティア様に額をひっぱたかれて叫んだのは、この集落の村長さんである。畑を耕してたら、鍬の重さに腰をやられたらしい。腰痛を治めるのはできるんだな、ガラティア様。


「おじいちゃん、鍬を振り上げたらその勢いで後ろにばったんて倒れちゃったんですよー」

「勢いが付きすぎたのねえ。それに持っていかれるようじゃ、ガラティア様のおっしゃる通り小さい鍬にしないと。またばったんて倒れちゃうよ」

「おとうさんに言っておくね!」

「そうしてね。えらい」


 ガラティア様を呼びに来た、村長さんの孫娘の頭を撫でるとえへへ、と嬉しそうに笑ってくれた。二人とも栗色のくせっ毛で、なんとなく似てるんだよねえ。おじいちゃんと孫ならまあ、あるか。

 そう、集落の人たちのサポートもガラティア様のお仕事。もっとも、この集落だけではなく周辺の複数の村や集落を定期的に回るんだそうだけど。

 今この集落にいる兵士さんたちのうち、ここに常駐しているのは基本的に数名らしい。他は全部、ガラティア様の護衛として彼女に付き従い、あちこちを回る。大変だなあ。


「ほうれ、メリカちゃん。おじいちゃんの腰は落ち着いたぞえ」

「ありがとうございます、ガラティア様! ほら、おじいちゃんもお礼!」

「あ、ありがとうございました」

「ほっほ。今度こそ、鍬を小さいもんにせえよ? でないと次は、力で治すからのお」


 脅すなガラティア様。村長さん、孫の肩にしがみついてビビってるじゃないか。お孫さんの方は言葉の意味理解できなくて、おじいちゃん治ってよかったねってにこにこ笑ってるけどさ。

 エイクに鍬を渡されて、「それじゃ、失礼します」と頭を下げて帰っていった二人を見送っていると、ガラティア様が上機嫌で戻ってきた。


「やれやれ。あのじじい、年を考えて欲しいもんじゃな」

「……ガラティア様も、人のことを言えないのでは」

「何じゃ? 若造」

「申し訳ございませんっ!」


 エイク。この世界でも、女性の年齢をみだりに尋ねるのは失礼なんだぞ。そのへんのマナーとかを考えると、まだまだ騎士見習いの域を出ないなあ、この子は。

 いやまあ、直接尋ねてるわけじゃないけどさ。そりゃ、どう考えても村長さんよりガラティア様の方が年上だと思うけど、うん。


「まあ、よいわ。カリーニの三番目だったかの、あそこは二番目以降に甘い部分があるでな。そんなでは来てくれる嫁も婿に取ってくれる家もなかなか見つからんえ」

「……き、気をつけます」


 って、おや。


「ガラティア様、エイクの実家のことご存知なんですか」

「ちと付き合いがあってのう。ドナン坊やも洟垂れ小僧のときから知っておるぞ」

「……洟垂れてたんですか、あの人」

「そうなんじゃよ。今や侯爵家出の聖女のお付きでえばり倒してるらしいがの、わしの前には顔を出したくないんじゃよね」


 まーじーかー。

 そうか、あのおっさんガラティア様に子どもの頃見られてるのか。それで、会うと多分当時のこと言われるから、それが嫌なんだ。


「他の貴族ともそこそこ面識があるでな。逆に、平民から出てきた聖女のお前様は新鮮でのう。ぜひ、うちによこしてくれと陛下にお願いしたんじゃよね」

「え」

「そうしたら、そちらの事情も聞いたでな。故にわしの護衛を、あちこちにばらまいておるんじゃよ。いつでも敵を、ぶん殴れるようにの」


 ええー。

 そういう理由で面倒見てくれようと思って、そうしたらお城側とある意味利害が一致したってことかよ。

 ……なんかさ、すっかり『のはける』と違う話になってる気がするんだけど、それでも大変なことは大変なんだ。私。

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