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帝国一の無能兵を三年間演じた俺、最高機密を盗んで帰るはずが、処刑寸前の大回復魔道士まで拾ってしまった  作者: レイヴ


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第十三話 迎えに行く

 馬を走らせながら、何度か後ろを確認した。


 ダグたちの姿はもう見えない。


 聞こえるのは、時折響く地鳴りだけだ。


 東から戻ってきた帝国軍を止めるため、ダグとフェルの二人を残した。俺たちは負傷者を馬に乗せ、北東の〈GRAY〉跡地から西へ向かっている。


 グレンは左肩、ノアは右足を負傷している。ミラは魔力をほとんど使い切った上に左腕を火傷し、ユアンも脇腹を斬られていた。


 全員生きている。


 それでも、戦える人間は確実に減っていた。


 アルネの住民は、もう西門を出ている。


 ロイズたち五人に任せて先に逃がした。だが、国境まではまだ距離がある。


 東門を突破されれば、帝国軍はアルネを抜けて西へ追ってくる。


 だからダグが残った。


 そしてフェルも残った。


 二人なら、かなりの時間を稼げる。


 分かっている。


 俺が残るより、ダグの土魔法で道そのものを塞いだ方がいい。


 フェルの風があれば、崩した土や瓦礫も使える。突破してきた兵を押し戻すこともできる。


 理屈では正しい。


 それでも、通信機が気になった。


 まだ呼ぶな。


 二人の集中を切る必要はない。


 何かあれば向こうから連絡が来る。


 そう思って前を向いた時だった。


「レオン」


 セリアが少し先を見ている。


 街路の向こうから、一人の男が歩いてきた。


 服のあちこちが裂け、土と血で汚れている。右手には剣を持っていた。


「……ガロン?」


 見間違えるはずがない。


 思わず馬を止めた。


 いるはずがない。


 俺たちが北東へ向かったあとも、ガロンは西側でウォルターを止めていた。


 倒す必要はない。


 あの男を北東へ行かせない。


 それだけ頼んだ。


 だから、ガロンがここにいる理由が分からなかった。


 ガロンも俺たちに気づいて足を止めた。


「終わったか」


「ああ。重魔導兵器は全部止めた。〈GRAY〉も壊した」


「そうか」


 いつも通りだった。


 そんなことより。


「ウォルターは?」


「見りゃ分かるだろ。終わった」


「え?」


「斬った」


 意味が分からなかった。


「……斬った?」


「ああ」


「ウォルターを?」


「首を落とした」


 セリアまで馬の上で固まった。


「……は?」


「だから斬ったって言ってんだろ」


 あの男を。


 俺が〈雷装〉で先に仕掛けても、まともに触れることすらできなかった。


 そのウォルターを、ガロンは一人で足止めした。


 それだけでも十分だった。


 なのに。


「殺したの?」


「首落として生きてたら、俺も驚く」


「……マジか」


「何だよ」


「いや……」


 本当に想定していなかった。


 ガロンなら止められるとは思った。


 だから任せた。


 でも、勝つとは思っていなかった。


「そっちは随分やられたな」


 ガロンが馬に乗せられたグレンたちを見る。


「ああ。でも全員いる」


「ならいい」


 ガロンが俺たちの後ろへ視線を向けた。


「他は?」


「あの後、東にいた六人が北東まで来てくれた。途中からユアンとニールも来た」


「そうだったのか」


「ただ帰る途中で、東から戻ってくる帝国軍が見えた。ダグが残って道を塞いでる。フェルも一緒に残った」


「二人で?」


「ああ」


 ガロンは東を見た。


 遠くで、また地面が鳴った。


 少し遅れて爆発音も届く。


「そうか」


 それだけだった。


 俺も東を見る。


 二人で帝国軍を止めている。


 さっきまでは、それ以外に方法がなかった。


 住民を守る人間が必要だった。


 負傷者もいる。


 戦える人間も減った。


 俺たちが二人を助けに戻れば、その分だけ住民を守る戦力が減る。


 だから置いてきた。


 でも。


 ガロンがいる。


 ウォルターはもういない。


 予定になかった戦力が、一人戻ってきた。


 それも、俺より正面戦闘が強い人間が。


 これなら。


 二人を助けられるかもしれない。


「レオン?」


 セリアが俺を見る。


「何でもない。先に住民と合流する」


 まだ決めるのは早い。


 西側の状況を確認する。


 住民を守れる。


 俺が抜けても大丈夫だと判断できたら。


 その時は。



 西門を抜けると、長い人の列が見えた。


 子供を抱いた女。荷物を背負った男。杖をついて歩く老人。怪我人を乗せた荷車を、何人かで押している者もいる。


 アルネの住民たちだ。


 全員、町の外には出ている。


 それでも国境はまだ見えない。


 ここからさらに西へ進まなければならない。


「レオン!」


 最後尾付近にいたロイズがこちらへ走ってきた。


 ハンス、テオ、レナ、オーウェンもいる。


「北東は!?」


「終わった。重魔導兵器は全部止めた。〈GRAY〉も壊した」


 ロイズが目を見開いた。


「本当か?」


「ああ。もう午前五時になっても動かない」


「……そうか」


 大きく息を吐く。


「よかった」


「怪我人がいる。レナ!」


「見せて!」


 レナが走ってくる。


 グレンたちを馬から下ろし、街道脇へ移す。


 エレナもすぐに加わった。


 魔力はほとんど戻っていない。それでも傷の状態を見ることはできるし、僅かに戻った分で出血を抑える程度ならできる。


「グレンさんは左肩。ノアさんは右足。ユアンさんは脇腹。ミラさんは左腕を火傷しています」


「分かりました」


 エレナが頷いた。


「レオンさんは?」


「俺は大丈夫」


「大丈夫ではありません」


「動ける」


「そういう意味ではありません」


 返す言葉がなかった。


「後で見てもらう」


「必ずです」


「ああ」


 住民の列へ視線を戻す。


 止まってはいない。


 今も西へ進み続けている。


「ロイズ、こっちは?」


「今のところ大きな問題はない。全員町から出した。歩けない奴は荷車と馬に乗せてる」


「帝国兵は?」


「まだ見てない」


「テオ!」


「いる!」


「アルネを見てて。兵が出てきたらすぐ教えて」


「了解!」


 テオが街道脇の高い場所へ移動する。


 ガロンも住民の最後尾へ向かった。


 それを見ながら、もう一度戦力を確認する。


 ガロン。


 ロイズたち五人。


 アレン。


 リック、ノア、グレン、ミラ、ニール、ユアン。


 セリア。


 負傷者はいる。


 魔力を使い切った者も多い。


 それでも、住民を守りながら西へ進むだけなら戦える。


 俺がいなくても。


 通信機へ手を伸ばしかけた。


「来るぞ!」


 テオの声が響いた。


 アルネを見る。


 西門から帝国兵が出てくる。


 二十人以上。


 さらに後ろにもいる。


 北東にいた兵士たちは、さっき全員倒した。


 なら、こいつらは東から戻ってきた部隊の一部だ。


 東門を塞がれた。


 だから北へ回り、北門からアルネへ入った。


 おそらく最初に向かったのは〈GRAY〉だ。


 そこで見たはずだ。


 壊された五基の重魔導兵器。


 止まった〈GRAY〉。


 倒れた兵士たち。


 それを確認して、こっちへ来た。


「住民を止めるな! そのまま西へ!」


 ガロンたちが最後尾へ回る。


 土壁が街道を塞ぎ、その向こうで魔法が弾けた。


 リックとユアンも加わり、抜けてきた兵を押し返していく。


 全員が西へ来たわけじゃない。


 西門から出てきたのは数十人。


 残りは。


 東を見る。


 通信機を取った。


「ダグ!」


 返事がない。


「ダグ、聞こえるか!」


 雑音。


 その向こうで地面が鳴った。


『聞こえてる!』


「状況は?」


『見りゃ分かる!』


「見えないから聞いてる!」


『じゃあ最悪!』


 声は元気だ。


 でも、息が荒い。


「東門は?」


『まだ塞いでる! 壊されてる! また塞いでる!』


「魔力は?」


『聞くな!』


 まだ冗談を返せる。


 そう思った瞬間だった。


『ダグ! 後ろ!』


 フェルの声。


 剣がぶつかる。


 直後、風が弾けた。


「フェル!」


『今忙しい!』


「何が来た!」


『帝国兵! 北から!』


 やっぱり。


 北門から入った部隊が、〈GRAY〉の破壊を確認したあとに分かれた。


 一部は俺たちを追って西へ。


 残りは東門へ。


 正面から門を破れないなら、内側からダグを潰せばいい。


「何人いる?」


『十人以上! まだ増えてる!』


「ダグ!」


『聞いてる!』


「振り返れる?」


『無理!』


 即答だった。


『俺が東門から離れたら、あいつら入ってくる!』


 前をダグ。


 後ろをフェル。


 二人だけで挟まれた。


「フェル、怪我は?」


『ちょっと!』


「どこ!」


『肩! でも動く!』


 通信の向こうで爆発音が響いた。


『ダグ!』


『分かってる!』


 地鳴り。


 また東門を塞いだ。


『レオン!』


「何!」


『こっちはいい! 住民逃がせ!』


 返事ができなかった。


 住民を見る。


 列は西へ進み続けている。


 その最後尾では、ガロンが帝国兵を止めていた。


 土壁が崩れる。


 その向こうへガロンが踏み込み、剣を振る。


 ロイズとリックが続く。


 オーウェンが大盾で魔法を受け、ハンスが崩れた街道を土で塞ぎ直す。


 守れている。


 俺がいなくても。


「ダグ」


『何だ!』


「あと十分」


『……は?』


「十分だけ持たせて」


 少し間があった。


『長えよ!』


「分かってる」


『こっちは前と後ろにいるんだぞ!』


「分かってる」


『分かってねえだろ!』


「分かってるから言ってる」


 西を見る。


 住民は進んでいる。


 十分あれば、さらに距離を稼げる。


 その後に東門を突破されても、すぐには追いつかれない。


 何より、今はガロンがいる。


「十分後、東門を捨てていい」


 通信の向こうが少し静かになった。


『……いいのか?』


「ああ」


『帝国軍、全部入ってくるぞ』


「入ってくるまでに、もう一回塞いで」


『簡単に言うな』


「できる?」


『誰に聞いてんだよ』


「ダグに」


『じゃあできる』


「最後に東門ごと潰して、南へ抜けて」


『南?』


「北は敵が入ってる。西にも追撃部隊がいる。南から回って西へ出る」


『俺たちだけで?』


「違う」


『あ?』


「迎えに行く」


 通信の向こうが止まった。


『……お前が?』


「ああ」


『住民はどうすんだよ』


「任せる」


『誰に』


 ガロンを見る。


 帝国兵の魔法を土壁で受け、そのまま前へ出ている。


 その後ろにはロイズたちがいる。


「仲間に」


 ダグが黙った。


『……そっか』


「ああ」


『じゃあ十分な』


「死なないで」


『善処する』


「フェルも」


『聞こえてる!』


「死ぬなよ」


『そっちこそ早く来い!』


「行く」


 通信を切った。



 西側の帝国兵は、ガロンたちが押し返していた。


 倒すために追わない。


 住民との間に入り、近づいてきた兵だけを止める。


 戦うために止まらない。


 逃がすために戦う。


 それでいい。


 俺も最後尾へ加わり、何度か抜けてきた兵を止めた。


 その間にも住民は西へ進む。


 五分。


 まだ東から地鳴りが聞こえる。


 二人は持たせている。


「レオン」


 ガロンが戻ってきた。


 剣についた血を振る。


「行くんだろ」


「ああ」


「なら行け」


「でも、まだ追ってきてる」


「見りゃ分かる」


「怪我人もいる」


「それも見りゃ分かる」


「住民は国境まで――」


「レオン」


 言葉を止めた。


 ガロンが俺を見る。


「こっちは任せろ」


 迷いはなかった。


 さっきウォルターを殺したばかりの男が、もう次の役目を引き受けようとしている。


「全員、国境まで連れてく」


「……うん」


「だからお前も連れて帰ってこい」


 東を見る。


 地鳴りが響いた。


「分かった」


 ガロンの肩を一度だけ叩き、馬へ向かう。


「ロイズ!」


「何だ!」


「住民を頼む!」


「分かった!」


「アレン!」


「俺も行くか!?」


「来るな!」


「早いな!」


「エレナと怪我人を頼む!」


「……分かったよ! そっちは任せろ!」


 馬へ足をかける。


 そのまま振り返った。


「セリア!」


「何!」


「お前も来い!」


「どこに!」


「ダグとフェルを迎えに行く!」


 セリアが東を見た。


「分かった!」


 返事は早かった。


 近くにいたオーウェンへ住民の誘導を任せ、自分の馬へ走る。


「レオンさん!」


 エレナの声がした。


 振り返る。


 負傷したグレンの肩を押さえながら、俺を見ている。


「必ず四人で戻ってきてください!」


 俺とセリア。


 ダグとフェル。


「ああ」


 二人で馬を走らせた。



 何百人もの人間が西へ向かっている。


 その流れに逆らって、俺とセリアだけが東へ走った。


 アルネへ戻る。


 西門が近づくにつれ、戦闘の跡が増えていった。


 倒れた帝国兵。


 焼けた街道。


 崩れた土壁。


 町へ入ると、人の姿はほとんどなかった。


 少し前まで二千人以上が暮らしていた場所とは思えない。


 聞こえるのは、東から響く戦闘の音だけだ。


「あと五分!」


 セリアが叫ぶ。


「分かってる!」


「間に合う!?」


「間に合わせる!」


「それ答えになってない!」


「俺もそう思う!」


 大通りへ出たところで、帝国兵がいた。


 北門から東へ向かっている途中らしい。


 十人ほど。


 向こうも俺たちに気づいた。


「止まらない!」


「了解!」


 セリアが片手を前へ向ける。


 風が街路を走った。


 兵士たちが踏ん張る。


 吹き飛ばすほどの魔力は残っていない。


 それで十分だった。


 体勢が崩れたところへ馬を走らせる。


 剣が来る。


 受け流す。


 槍を避ける。


 セリアがもう一度風を放ち、道を開ける。


 二頭でその間を抜けた。


 後ろから魔法が飛んでくる。


 振り返らない。


 今は一人倒す時間すら惜しい。


「ダグ!」


『おう!』


 返事がある。


 まだ生きている。


「あと少し!」


『こっちもあと少しだ!』


「フェルは!」


『生きてる!』


 少し離れたところから声が入った。


『勝手に殺すな!』


「南へ抜ける準備して!」


『してる!』


「時間になったら東門を潰して、そのまま南!」


『了解!』


 馬を走らせる。


 東へ行くほど、音が大きくなる。


 爆発。


 地鳴り。


 風。


 剣がぶつかる音までは聞こえない。


 それでも、二人が戦っていることだけは分かる。


 もう時間がない。



『レオン!』


 ダグの声。


『門、次で持たねえ!』


「時間!」


『待ってました!』


「東門を捨てろ!」


『了解!』


 直後。


 アルネ全体が揺れた。


 馬が一瞬怯むほどの振動だった。


 東の空へ大量の土煙が上がる。


 ダグが残った魔力を全部使った。


 東門だけじゃない。


 周囲の道も、建物も、崩れた瓦礫も巻き込んで塞いだ。


 あれなら帝国軍もすぐには抜けられない。


「ダグ!」


『走ってる!』


「南へ!」


『分かってる!』


『後ろ来てる!』


 フェル。


「何人!」


『知らねえ!』


「戦わないで!」


『戦ってねえ! 逃げてる!』


「そのまま南!」


 頭の中でアルネの道を組み立てる。


 東門から南へ。


 二本目の道。


 広場。


 そこから南西。


 俺たちは南側から回る。


 ぶつかる場所は。


「セリア、次右!」


「分かった!」


「その先を南!」


「分かったって!」


 二頭の馬が路地へ入る。



 ダグとフェルは走っていた。


 ダグの足はもうまともに上がらない。


 魔力は空だった。


 フェルも肩から血を流し、呼吸を乱している。


 それでも止まらない。


 後ろから帝国兵が追ってくる。


「お前……もうちょい速く走れねえの?」


「魔力全部使った奴に言うな!」


「俺もねえよ!」


「風使いだろ!」


「風がねえんだよ!」


「ただのフェルじゃねえか!」


「元からフェルだよ!」


 角を曲がる。


 前に帝国兵がいた。


 六人。


 二人が止まる。


 後ろからも足音が近づいてくる。


「……最悪」


 フェルが剣を構えた。


「レオンの真似?」


「うるせえ」


 ダグも隣に立つ。


 土魔法はもう使えない。


 剣を握る。


「死ぬなって言われたな」


「ああ」


「善処したよな?」


「まだ終わってねえよ」


「厳しいな」


「帰ってから文句言え」


 前の帝国兵が動く。


 後ろからも来る。


 二人が背中を合わせた。


 その時だった。


 馬の蹄が聞こえた。


 横の道。


 近づいてくる。


「伏せろ!」


 二人が同時に身体を落とした。


 頭上を風が通り抜ける。


 前にいた帝国兵がまとめて体勢を崩した。


 その向こうから二頭の馬が飛び出してくる。


 ダグが目を見開いた。


「……マジで来た」


「来るって言っただろ!」


 馬を走らせたまま剣を抜く。


 道を塞いでいた兵士の剣を弾き、その横を抜ける。


「遅え!」


「急いだ!」


「死ぬとこだったぞ!」


「生きてる!」


「結果論だろ!」


「ダグ、乗れ!」


「お前の後ろ!?」


「嫌なら走って!」


「乗る!」


 ダグが馬の後ろへ飛び乗る。


 横を見る。


 フェルはもうセリアの後ろへ乗っていた。


「ちょっと! 腰掴まないで!」


「落ちる!」


「服!」


「破ける!」


「じゃあ落ちて!」


「死ぬだろ!」


「行くよ!」


 セリアが馬を走らせる。


 俺も続いた。


 後ろから帝国兵が追ってくる。


 相手にしない。


 南へ抜け、次の道を西へ。


 東門が完全に破られる前に、できるだけ距離を取る。


「ダグ」


「何だよ!」


「生きてる?」


「今さら確認すんな!」


「フェル!」


「生きてる!」


「よかった」


「ほんとに死ぬかと思ったわ!」


 ダグの額が俺の背中へ当たる。


「寝るな」


「寝てねえ」


「重い」


「助けに来た奴が言うな」


 横を見る。


 セリアの後ろで、フェルもぐったりしている。


 それでも二人ともいる。


 まだ終わってはいない。


 住民は国境へ向かっている。


 東門の向こうには帝国軍がいる。


 負傷者もいる。


 ここから全員で逃げ切らなければならない。


 それでも。


 さっきは二人で戻った道を、今度は四人で走る。


 誰も置いていかない。


 今度こそ、全員で帰る。

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