↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/56

第7話 筋肉も箒も一緒じゃ!


 人間の街を離れ、魔王城へ続く森の道を歩くカヅチ。しばらく歩いていると、背後にあった街の明かりがどんどん遠ざかっていく。

 そして……魔の森が近づくにつれ、辺りは次第に薄暗くなっていった。


 カヅチは足を止める。右を見る。左を見る。

 そして、もう一度右を見る。

「ん〜、やっば……迷った」腕を組み、首を傾げる。


「魔王様に作ってもらった転移魔法陣って、どこだっけ……?」辺りをキョロキョロと見回す。

「行きは普通に街に向かって歩いてきたからなぁ……。帰りも転移で楽々帰れると思ってたんだけど……転移なかったら何日かかるんだよ…」


 その時、背後から聞き慣れた声がした。

「おぉ、お主も今帰りか?」

「えっ?魔王様!?」

 カヅチは振り返る。そこに立っていたのは、ル・セポネだった。


「なんでこんなところに!?」

「いやな、ちょうどポン吉が勇者に殺されてしまったと連絡が入ったから、生き返らせに来たんじゃ」

「あぁ……」カヅチは頷く。


 だが、ル・セポネの表情は少し不機嫌だった。

「我々魔族が人間に殺されてしまうのはしょうがない……ただな……現場を見てみたら、あまりにも酷い殺され方でな……ムカついたんで、ちょっと懲らしめてきたところじゃ」

 ル・セポネは眉間に皺を寄せる。

 普段は豪快に笑い飛ばすセポネだが、今の表情には隠しきれない苛立ちが滲んでいた。

 仲間が殺されたことだけではない。その死を、面白半分に扱われたことが許せなかったのだ。


 カヅチは嫌な予感がした。

「懲らしめた……?」

「うむ!」ル・セポネは満面の笑み。

 そして、肩に担いでいた大きな袋をカヅチへ投げ渡した。

「ほれ」

「うわっ!」慌てて受け取る。

「なんですか、これ……?」袋を開ける。

 中に入っていたのは、剣や鎧。そして、そこには見覚えのある紋章が刻まれていた。


「……あの〜」

「なんじゃ?気に入らんのか?」

「いや、これって……まさか……」

 ル・セポネはニヤリと笑う。

「お主が先ほど戦った者たちの装備じゃ!お主の後だったから、楽に懲らしめられたわ!」

「あはは……バレてたんですね…」

 カヅチは頬をポリポリ掻きながら苦笑する。


 どうやら、街での一件はすっかり知られていたらしい。怒られるかと思っていたカヅチは、渡された装備とセポネの顔を交互に見た。そこにあったのは叱責ではなく、思いがけない感謝だった。


「……ありがとうございます。こんなに貰っちゃって…」

「ん?」ル・セポネが少し驚いた顔をする。

「礼を言うのはこっちじゃ!カヅチよ!魔族のために怒ってくれて……ありがとうな」

 いつもの豪快な笑顔とは違う。

 ほんの少し照れたように、ル・セポネは顔を逸らした。

「その装備は、全部お主にやる!好きにせい!」

 カヅチは袋の中を見る。

「……じゃあ…早速、使わせてもらいます!」

 ニヤリ。カヅチはその場に剣や鎧を並べていく。


「この素材なら……何かいけるかも」

 箒を地面に立て、手をかざす。

 すると……パァァァ……!

 装備が細かな光へと分解されていく。

 光はさらに細かく。肉眼では捉えきれないほどの粒子となり、カヅチの箒へ吸い込まれていく。

 最後の一片が消えた瞬間。箒の表面を淡い光が走り、柄の奥で何かが目覚めたような感覚があった。

 

 カヅチは箒を持ち上げ、角度を変えながら確かめる。見た目はほとんど変わっていない。

 だが、カヅチの目の前に急に浮かんだ表示は、明らかに今までと違っていた。


【箒】【レベル・3】【追加効果・レベル機能】

「…………ん?何だこれ?」カヅチは首を傾げる。

「レベル?箒の?」箒を見る。


「そうじゃろっ!」ル・セポネが腕を組む。

「あはは!じっくり育ててやれば良いだろ!」

「育てる……?箒を?」

「うむ!筋肉も箒も一緒じゃ!」

 ル・セポネは自信満々に頷く。


「………いや……その理屈、たぶん違うと思います」

「何を言う!鍛えれば強くなる!」

 ル・セポネは自分の腕をムキッと曲げ、筋肉を見せつける。

 セポネは自分の筋肉と箒を交互に指差し、まるで世紀の大発見でもしたかのように胸を張っている。

 その自信がどこから来るのか、カヅチにはさっぱり分からなかった。

「箒も鍛えれば強くなる!つまり一緒じゃ!」


「あはは、まあ……そういうことにしておきます」

「あははは!」ル・セポネは豪快に笑った。

「よし!納得したな!城に帰るぞ!」

「あ、はい。分かりました」


 ル・セポネが手をかざすと、地面に魔法陣が浮かび上がった。

「うわっ、これこれ。助かる〜」

「そうじゃろ!妾に感謝しろっ!」

 二人の身体が光に包まれる。

 そして……。シュンッ!その場から姿を消した。


◇◇◇


 魔王城➖➖ル・セポネの部屋。


「……んかっ!」

 転移した瞬間、カヅチはふらついた。

「相変わらずこの匂いクラクラするなぁ……」

「なんじゃ!お主っ!」ル・セポネが振り返る。

「妾の部屋が臭いみたいな言い方をしおって!」

「いや、そんなこと言ってませんよ!」

「いや、言った!後でちゃんと掃除せい!」

「いや〜……この箒、まだ消臭効果ないんですよ……」


 カヅチは部屋を見回す。

「それに、この匂い取ると勿体ないというか……」

「ん?なんで、妾の匂いを残したがるんじゃ!」

 そんなやり取りをしている間に、ル・セポネは着替えを始める。


 セーラー服から、スポブラとスパッツへ。

 カヅチは着替えをじっと見ていた。

(……なんでいつも目の前で着替えるんだろ……?)


 そして、ふと考える。

(ていうか、お出かけ用の服がセーラー服なの?てことはスポブラとスパッツは部屋着?玉座に座ってる時は、めっちゃカッコいいマントとか服着てるのに……わっかんねぇな、この魔王……)


 そんなことを考えていると……


「カヅチ」

「はい?」

「妾の頼んだ物はあるか?」

「あっ、はい!」

 カヅチは買い物袋を開ける。

「え〜っと、シュークリームと……ケーキと……羊羹と、餡子団子です」次々と甘味を取り出していく。


「おおっ!そうそう、これなのじゃ!」

 ル・セポネの顔が一気に明るくなり、嬉しそうに甘味を受け取る。

「うちのコックは、甘い物が作れんからなぁ……」

 嬉しそうなル・セポネの顔にカヅチは思わず微笑んだ。

(ふふ……味覚はちゃんと女の子なんだなぁ……)

「……何じゃ?」

「え?」


 ル・セポネがジト目で睨む。

「妾を見て何をニヤニヤしておるっ!」

「いや、別に……」

「気持ち悪いぞ!」

「えっ!?酷い!」


 ル・セポネは甘味を口に頬張り抱えたまま指を差す。

「ほれ!早く汐那に櫛を渡しに行ってこい!」

「あ、そうですね。はい。分かりました」


 カヅチは箒を肩に担ぐ。

 そして部屋の扉へ向かって歩き出す。


「……カヅチ!」

「はい?」

「これを持ってけ!」

「え?」

 振り返った瞬間、ポーン!とシュークリームが目の前に飛んできた。

「うおっ!」カヅチは反射的に口を開ける。

 パクッ!見事に口でキャッチ。

「ごひほうはまでふ!!」

「うむ!今日はご苦労!!」

 ル・セポネは満足そうに頷いた。

 カヅチはシュークリームを頬張りながら、部屋を出ていく。(………俺は犬か!)

 魔王城の廊下に、カヅチの心のツッコミが虚しく響いた。



            続

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。