↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
80/460

vol.77 女子会ミドヴァ④

 こはるちゃんの「けんたろうちゃん」発言は、スタジオに地獄を召喚した。


 人気YouTuber二人も、配信で頭を抱えていた。


 直山

「こはるぅぅぅ……!!!

 誰だよ!!

 けんたろうって!!」

 日本一熱い音楽系YouTuber・セブ直山は、笑いすぎて涙目のまま叫ぶ。


 小泉

「こはるちゃあああああん!

 ちょっと待って!

 けんたろうってメンバーいないでしょ!!!

 けんたろうってSynaptic Driveでしょ!!

 共通点ユーロビートしかないでしょ!!」

『騎士団長が乱れてる!!』

『もしかして、Midnight VerdictとSynaptic Driveって仲いいのか?』


 ♪ ♪ ♪


 MC岡田は、顔にかかったお茶を拭くのも忘れ、引きつった笑いを張り付けている。

「は、ははは……面白いですね!

 ぬいぐるみかな!?

 ペットかな!?」

 目が泳ぎまくり、額には玉のような脂汗が滲んでいる。


 けいとさんは、真っ赤な顔で咳き込みながら、絶望の表情でうつむいた。

 あの完璧な女王が、「もう殺してくれ」と言わんばかりに震えている。

 隣のあやさんは、お茶を噴いたショックと怒りで半泣きになりながら、こはるちゃんに詰め寄ろうとして――岡田に制止されている。


 常にクールなかおりさんですら、眉を寄せた。


 さやかさん

「こはるちゃん!

 だ、だめだよ、そんなこと……」


 ひなちゃん

「こはる!

 マジでどうするのこれ!」


 メンバーの視線が、カメラ、客席、MC、スタッフ――あちこちに散る。

 けいとさんは顔を手で覆った。

 クールな女王が、今だけは助けてのポーズになっている。


 スタジオ中がパニックに陥る。

 しかし、当のこはるちゃんだけが、ふわふわした笑顔のままだった。

 何が起きているのか、本気でわかっていない顔。

 彼女は、まるで自分だけの世界から、無邪気に口を開く。


「ふふふ…そんなことは置いておいて~」


 置いた!?

 今、核弾頭を道端に置いた!?


「ねえねえ、岡田さん!

 桜木さん!

 この前、みんなで美味しいケーキ屋さん見つけたんですけど、今度、番組で紹介してもいいですか~?」


 その瞬間、日本中から音が消えた。


 静寂の後――。


 岡田・桜木

「「はぁっ!?」」

と絶句し、膝から崩れ落ちた。


「こはるぅぅぅ!!!」

 けいとさんが叫びながら、文字通り椅子からずり落ちた。

 怒りを通り越し、魂が口から抜けていくような、悟りの境地だ。


 あやさん

「あ……あいつ……天然通り越して、悪魔だ……」

 床に手をついて、笑うのか泣くのか自分でもわからない顔。


 さやかさん

「こはるちゃーん!

 今、それどころじゃないよ~!」


 かおりさん

「……こはる、恐ろしい子……」


 ひなちゃん

「マジかよ……最強すぎる……もう何も言えねぇ……」


 ズコーッ!

 昭和のコントのような効果音が聞こえた気がした。

 スタジオ全体がひっくり返る。

 カメラが下を向く。

 テロップを流すスタッフの手が止まる。

 前代未聞の事態。

 スタッフが一斉に頭を抱える。

 誰かが小声で「CM……!」と叫んだ気がした。


 ♪ ♪ ♪


 CMが明ける頃には、SNSはすでに伝説となっていた。

『#こはるちゃん神回』

『#こはる放送事故』

『#こはるの天然は世界を救う』

 トレンドを独占し、数百万件のツイートが飛び交う。


 ネットの反応


 @MV_Fanclub_Official「こはるちゃん、マジで神だよwwwwwあの状況でケーキ屋さんの話とか、天才かよwwwww」

 @Music_Analyst「これは計算された笑いなのか、それとも純粋な天然なのか…おそらく後者だろう。いずれにせよ、こはるちゃんの天然ぶりは、Midnight Verdictのイメージをより親しみやすいものにした。まさにピンチをチャンスに変えるアイドルだ」

 @Anti_Haters_Club「なんだこの番組www放送事故レベルだろwwwでも、普通に面白かったから許すwww」


 そして、この歴史的瞬間の目撃者となった二人のYouTuberは、それぞれの言葉でこの夜を締めくくった。


【セブ直山 生放送中】


 直山は、興奮で声を震わせながら、カメラに向かって熱く語りかけた。


「見たか、お前ら!

 これが伝説の瞬間だ!

 こはる爆弾投下からの、『そんなことは置いといて~』って…

 天使の顔で爆弾ぶん投げるやつがいるか!

 どれだけ音楽が上手くても、どれだけ可愛くても、あんな天然爆弾は作れねぇ…。

 天然は才能だ。

 ミドヴァ、今日も伝説!」


【ザッツ小泉(「女王の騎士団長」のチャンネル)生放送中】


 一方、小泉は一度静かに目を閉じ、心を落ち着かせるように深く息を吸った。

 そして、いつもの紳士的な口調で、しかしその奥に熱い情熱を秘めて、視聴者に語り始めた。


「我々が今日、目の当たりにしたものは、決して単なる『放送事故』などという陳腐な言葉で片付けてはならない、一つの『奇跡』です。

 こはる様は、その天真爛漫さで、我々が知り得なかった女王様たちの人間らしい、愛らしい一面を引き出してくださいました。

 嵐のあとに虹がかかるように。

 我々騎士団は、今宵もMidnight Verdictへ永遠の忠誠を!」


 ♪ ♪ ♪


 こうして、Midnight Verdictの初冠番組は、音楽と笑いと冷や汗にまみれた、伝説の夜として幕を閉じた。

 僕たちの恋はまだバレていない。

 ……たぶん。


 女子会ミドヴァ。

 それは、僕の心臓を物理的に止めにかかる、恐ろしい番組の始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。