表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/21

カッコいいとこ見てみたい!

 


 一週間も経てば本格的な授業が始まった。

 特進クラスは他のクラスよりも自由に授業を選択できるとはいえ、必須科目もあったりする。


 そんな科目の一つに、模擬戦闘なるものがある。

 もちろん、戦えなくて魔法も使えない生徒だっている。そういう人たちは観客席に座って観戦できる。


「俺もあっちに座ればよかったかなぁ」


 スポーツ観戦モードのクラスメイトを見て、俺は愚痴を漏らした。


「仕方ないさ。この授業は男子は強制参加だからね。うちの学園が元軍人育成学校だった時の名残りらしい」


 慣れない防具を身につけていると鎧姿が様になってるユーリが豆知識を披露してくれた。


「いつの時代だよ。俺みたいな文系は怪我しないように休ませとくべきだろ。手でも怪我したら大損害だぞ〜」


「がっはっはっ! 心配するなアッシュ・ダストン。怪我しても学園の治療を受ければすぐ治るぞ!」


 豪快に笑いながら近づいてきたのはシリウス。身長はユーリと同じくらいだが、とにかく体格が良く、クマみたいな身体つきをしてる。

 性格的に嫌な奴ではないんだが、豪胆というか、勝つか負けるかしか考えてないバカだ。……学力については俺よりも大分低い。


「ユーリ・オリオン。我がライバルよ。今日は俺が勝つぞ!」


 勝率はユーリが勝ち越してはいるが、シリウスだって十二分に強い。

 去年は三人共同じクラスだったんだが、ユーリとシリウスの二強だった。


「だそうだぞユーリ」


「参ったな。腕比べだと思ってあまり激しくするつもりはなかったんだが、そうも言ってられないようだね。お互い、ベストを尽くそう」


「だな。でも、せっかく女子達が見てくれてるんだし、ちょっとはカッコいいとこ見せないとな」


 とくにユーリ。お前はぶっちぎりでカッコいいところを見せろ。サテラとかサテラに。

 これでユーリに対して憧れとか尊敬とかが芽生えればきっと恋へと発展していくはずだ。


 現状だとユーリとサテラの関係性ってクラスメイトでお互いが友達の友達ってレベルだし。

 今まで二人とも中々都合が合わなかったし。


「さて、俺の最初の対戦相手は……」


 勝負は一本先制するか相手が参ったと言うかのどちらかで決まる。

 なるべく実力が近い者同士で戦えるように調整はするらしいけど………。


「えっと……君がオレの相手で間違いないよな?」


「あぁ。やっぱりこうなるのね」


 初戦、対戦相手は主人公だった。

 確かに、剣を持ってから日が浅いことを考慮しての組み合わせなんだろうけど、相手はいずれ学園最強キャラに成長する怪物だぞ。勝てるわけないだろうが。


「見た感じ君は戦闘向きじゃないだろうけど、これは男と男の勝負だ。遠慮なくいかせてもらうよ」


 遠慮しろ。たかが授業なんだからお気楽にいこうぜ。俺はまだ死にたくない。


「きゃあ〜、ヤマト様頑張って〜!」


 観客席からは黄色い歓声。ミランダを筆頭にした貴族派の女子たちだ。

 あぁ、ちょっとやる気出てきたかも。


「勿論さ。俺も全力で戦うよ」


 モテない男の嫉妬を武器にな!!


 ピーーーーーッ!


 試合開始の合図が鳴る。

 俺も主人公も持っているのは訓練用の木剣だ。

 ちなみにユーリとシリウスの二人はガチの真剣だ。あのレベルになると訓練用のだと手応えがないらしい。


「はぁっ!」


 勢いよく振り下ろされた剣にタイミングを合わせてこちらの剣をぶつける。

 相手の目を、身体の動きを見て狙いを見極めてまた攻撃を弾く。


 俺の動きが予想外だったのか、主人公が目を広げた。

 こっちだってな、ユーリの特訓や授業の時にサンドバッグ代わりにされてきたんだ。攻め込むのは苦手でも防御くらいならできる。


「ふっ、やるじゃないか。まだまだぁ!」


 先程よりもスピードを上げて振り回される剣。

 ユーリに比べたらまだまだのはずなんだけど、一撃一撃が重い。

 シリウス式筋トレのおかげかな?


 少し手がジンジンと痺れてきたんだけど、こいつには負けたくないので必死に歯を食いしばりながら受け止め続ける。


 右、左、右、右、左。


 先読みを間違えれば一本を取られる確率大なので、慎重に戦いたい。

 側から見たら圧倒的に俺が劣勢なんだろうけど、負けてたまるか。

 しばらく鍔迫り合いを続けていると主人公の様子が変化してきた。


「はぁ、はぁ。どうした? 全然攻めてこないじゃないか。それじゃオレに勝てないぞ」


 うん。あれだけがむしゃらに動いてたらバテるよな。

 しかも防具という重りがあるなら尚更。


「そう? じゃあ本気出してやるよ!!」


 とりあえず相手から一本を取ればいいルールなので、俺は持っていた剣を全力で主人公に投げつける。


「なっ⁉︎」


 いきなり飛んできた木剣に驚いて、主人公の動きが止まる。

 その隙に体勢を低くして全力でタックルをする。

 予想外からの攻撃を受け、足腰が疲れた始めた状態で耐え切れるわけもなく、二人揃って地面をゴロゴロ転がる。


「君、見かけによらず中々強いね……」


 そう呟いた主人公の顔には俺の拳が寸止めで突きつけられている。

 体勢的には俺が馬乗りになっているし、勝負ありだ。


「学園最強に鍛えられてるからな。あれに比べればまだまだだぞ」


 泥仕合だった俺たちとは違い、少し離れた場所では衝撃波でも出そうな勢いで死闘が繰り広げられていた。


「もっと、もっとだ! 熱くなれよユーリ・オリオン!!」


「はぁあああああああああああああああああっ!!」


 なんかもう手元見えないくらいなんですが。

 シリウスもユーリも凄い笑顔で怖い。


「……オレ、あのレベルになれるのか?」


「まぁ、頑張れや勇者」


 いずれお前が有名になったら俺は今日の勝利を一生ネタにしてやるよ。





 ♦︎






 みんなが一番強い二人を応援している中、私はアッシュくんの試合を応援していた。


 普段はおちゃらけて笑顔でお話をする彼が、必死になって剣を振るう姿。

 ちょっとだけいつもよりカッコよく見えたのは内緒にしておこう。


 本当はおめでとう!って声をかけてあげたかったけど、近くに座っていたミランダさんの圧がちょっと怖かったので大人しておきます。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ