conclusion
土曜、日曜とずっと気が重かった。どうしても同じ過去は繰り返すべきじゃないと思っていた。ただ、拒絶されるようなことを言った自覚はもちろんあった。
時間は、止まってはくれなかった。
日曜日は心配のあまりずっと発作が続いた。そして月曜日になり、祈るように学校に向かう。
胸を押さえ、深呼吸しドアを開け、教室を見回す。
三浦_____いた!
「三浦!」
「陽介くん…、陽介くん!」
「…!」
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
三浦は、僕に気付いてからすぐに駆け寄ってきた。三浦の腕が、僕の腰に回されていた。綺麗に巻かれた前髪が、目の前にあった。
「お父さんに言われて、今日の朝、新聞…見たの。そうしたら、高速道路でトラックが逆走した、って…私たちがちょうど、行こうとしてたところ。…陽介くんが教えてくれてなかったら、私が乗ってた車、ぶつかってたかもしれない」
「三浦…あの、ちょっと…あの」
三浦が…生きてる。
三浦が、死ななかった。
「あの時、関係ないなんて言ってごめんね。やっぱり、言われたこと…ちょっと気になって。違うところに行こうって頼んだ。あの高速、乗らなくて良かった。お父さんも、そう言ってた」
周りが興奮して叫んでいるのも、ひゅうひゅうと指笛を吹いているのも、全く気にならなかった。
「陽介くん、…好き…実はずっと、好きだった。たまたまなのかもしれないけど…本当に、本当に、ありがとう」
これは、夢かな。
そうじゃないと…いいな。
そして僕は、また目を覚ます。
***
ブブ、ブブ、とバイブ音が聞こえる。これは…僕のスマートフォンから発せられている音だ。…23歳の時に、買った物。近くに置いてあるだろうそれを、取る気にはなれなかった。
長い夢を見てたのか。
…そりゃ、そうだよな。
ブブ、ブブ、…鳴り止まぬ音の正体が気になり、スマートフォンを手に取る。電話の着信のようだ。名前は…
「…美沙?」
美沙、なんて知り合い…三浦しかいなかったはず。
もしかして___。
「…タイムパラドックスだ!」
思わず叫んだ。応答ボタンを押し、三浦!と呼びかける。
「陽介?今は三浦じゃないよーだ。…苗字で呼ばれるの、中1の途中らへん以来かな。ははっ、懐かしいな。私たちって、本っ当に長い仲だよね。それで、えっと…さっき買い物終わったから、今から家帰るね!なんか電話したくなっちゃってさ…、かけちゃった。えへへ___あ、起こしちゃったならごめんね!…って、陽介、本当にどうしたの?ねえ、喋ってってばぁ___」
一方的に話している彼女がどうしようもなく愛おしく、笑いながらも涙が止まらなかった。
喉も頭も全く痛くなかった。
ごめんね。すぐ帰ってこいよ、また喋ろう、と言い、電話を切った。
自分の左手の薬指にはめられた指輪を右手で撫でながら、思いっきり声を上げて泣いた。