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アンデットだらけの2周目ダンジョンには治癒魔法が欠かせません!?~とある迷宮保安官と用心棒少女のダンジョン再攻略~  作者: 春街はる
柏ダンジョン

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20/43

20.柏ダンジョン

「佐々貴さん、魔物です。下がってください」

「う、うん」


 抜刀した執行さんが、私を庇いように前に立つ。

 目の前に現れたのは、グレイウルフという灰色の狼の姿をした魔物だ。

 大きさは個体にもよるけど2メートルから2.5メートルといったところ。中級レベルのダンジョンに良く出現する、力も強くてスピードもある手強い相手である。

 私たちを睨みつけて、グルル……と唸り声を上げていた。

 

 そして、執行さんが刀を構えたことで戦闘のスイッチが入ったのだろう。

 グレイウルフが鋭い牙を剥いて接近してきた。

 的を絞らせないようにか、右へ左へ素早く移動しながら執行さんの元に迫る。

 

 だけど。


「――ッ!」


 執行さんは流れる様に移動すると、飛びかかってきたグレイウルフを目掛けて刀を振るった。

 目にも止まらない速度の一振り。

 グレイウルフが真っ二つに切り裂かれた。

 同時に核も捉えて破壊したらしく、グレイウルフの身体は地面に落ちることなく影が散らばるように消え去った。

 

 魔物の核は、人間でいうところの脳であり、心臓でもある。

 人間と違うのは、核を綺麗に破壊された魔物はダンジョンに存在できなくなるという点。今みたいに死体が残ることなく、初めからいなかったみたいに消えてしまうのだ。


「佐々貴さん、大丈夫ですか?」

「私は全然。執行さんは?」

「問題ありません」


 刀を鞘に戻して、執行さんはグレイウルフが消滅した辺りに目を遣った。


「……今のも違いましたね」

「そうだね。普通の魔物だったね」

「今回もアンデッドではないのでしょうか」

「うーん。報告があったのは一番奥、主の魔物みたいだから、そこまで行かないと分からないかも」


 現在、私たちがいるのは柏ダンジョンの地下4階層。

 柏ダンジョンは地下10階層までで構成されている。

 その地下10階層にいる主の魔物の様子が変だったと、探索者パーティーから報告があったようだった。


「……柏ダンジョンの主の魔物って、ミノタウロスでしたっけ」

「そうだよ。知ってるの?」

「いえ……私もダンジョンについて知っておこうと思って、少し調べてて」

「えー! 偉いね!」


 思わず、胸の前で小さく拍手をしてしまう。


「そこまで褒められることでは……」


 ほんのりと頬を朱に染めながら、執行さんが言う。


 びっくりしたのと嬉しかったのとで思わずしてしまったけど、子供を相手にするみたいだったかもしれない。反省反省。


「もし、ミノタウロスアンデッドがいるんだとしたら、当然だけど今までよりずっと大変だと思う」


 ミノタウロスは牛の頭に人の身体をした、巨大な斧を持った魔物だ。

 人の身体と言っても、とんでもなく筋肉モリモリマッチョマンで背丈は3メートルは超える。これはもう人間ではない。

 今でこそ柏ダンジョンの規格はDⅢだけど、出現したばかりの頃はDⅡの規格が与えられていたほどだ。その強さはキングゴブリンやキングリザードマンの比ではない。

 

「最深部まで、できるだけ戦闘は避けて進んでいこう」

「私は全然」

「執行さんの腕を疑ってるわけじゃないよ? でも、今日は最深部で調査するのが目的だから」

「あ、そうですね……。すみません」


 執行さんと一緒に行動をするのは今日が3回目で、たくさんのことを知っているわけじゃない。当たり前だけど知らないことの方が多い。

 だけど、分かってきたこともある。

 一見すると表情があまり変わらない風に見えるけど、注意深く見ると僅かに変化が見て取れるところとか。観察していると、案外表情や感情が豊かなのかもしれない、なんて思っていた。


「……佐々貴さん?」

「ううん、行こうか」

「はい」


 最深部を目指して、再び歩き出す。

 攻略済みダンジョンだから、内部構造も当然把握されている。端末で地図の情報を見れるから、魔物が居そうなら迂回しても迷うことはない。

 

 出来る限り戦闘を避けて進んでいくこと、しばし。

 地下8階層まで降りて、まもなく9階層へ降りる階段というところで執行さんが足を止めた。


 怪訝そうな顔をして、携えている刀の柄に手を掛ける。


「佐々貴さん、何か……いえ、たぶん誰か来ます」

「誰か? 人ってこと?」

「おそらく」


 そんなはずは……。

 今日は午後から柏ダンジョンは一般探索者の出入りは禁止のはずだ。

 実際に、管理事務所の探索者受付は閉まっていた。

 午前中に入っていた人がまだ残っているのなら、管理事務所で教えてもらえるはず。


 ということは勝手に入ったってこと!?

 いや、たまにいるけど……。

 知らずに入っちゃう人もいれば、それが面白いと勘違いしてわざと侵入する人もいる。

 もし後者の場合は……。

 

「執行さん、気を付けて。危ない人かもしれない」

「……そうですね」

 

 警戒して待っていると、段々と下の階から上がってくる足音が聞こえてきた。

 たしかに、これは人っぽい。

 そして姿を見せたのは、


「お? あんたら、どうしたんだ?」


 探索者の衣装に身を包んだ男性と女性の二人組だった。


お読みいただきありがとうございます。

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