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交錯する刃、決戦の前夜

 王城の夜は騒然としていた。


 大司教マルクスの死を境に、城内は異常な緊張に包まれていた。

 兵士たちが慌ただしく駆け回り、聖騎士団が武装して動き出す。


「……リリアの反応が早いわね。」


 セレスティアは王城の屋根の上から城内の動きを見下ろしながら、冷静に分析していた。


「まるで、私の動きをすべて把握していたような……。」


 彼女の脳裏に、不快な可能性が浮かぶ。


(……裏切り者がいる?)


 それはあり得る話だった。

 彼女の復讐計画は慎重に進めていたが、どこかで情報が漏れていた可能性がある。


 その時、遠くから激しい金属音が響く。


「……ルードが戦っているわね。」


 セレスティアはすぐに屋根から飛び降り、音のする方向へと向かった。


――


 王城の中庭。


 そこでは、ルードとガラハドの激しい剣戟が繰り広げられていた。


「貴様は昔から……無駄に頑丈だったな!」


 ガラハドが重い一撃を繰り出す。


 ルードはそれを受け止めながら、静かに息を吐く。


「頑固で何が悪い。」


 火花を散らしながら、二人の剣が交錯する。


「今回は私が勝つ。」


 ルードは渾身の力でガラハドを弾き飛ばす。


 だが、ガラハドもすぐに体勢を立て直し、剣を振るう。


「聖騎士団の名にかけて、貴様を討つ!」


 次の瞬間、彼の剣が光を放つ。


「――《神聖斬》!」


 黄金の光がルードを包み込む。


「くっ……!」


 聖騎士の力は本物だった。


 だが、その一撃が振り下ろされる直前、黒い閃光が割って入る。


「遅かったですね、セレスティア様……!」


 ルードがわずかに苦笑する。


「まったく、セレスティア様が助けてくださらなければ、私はここで終わっていたでしょう。」


「あなたが情に流されるからよ。」


 セレスティアは無表情のまま、ガラハドを睨みつける。


「貴様……!」


 ガラハドは即座に構え直した。


「……復讐鬼が、ついに姿を現したか。」


「そうよ。」


 セレスティアの手には、黒炎が灯る。


「あなたも、私の標的の一人よ。」


 次の瞬間、彼女は一気に間合いを詰めた。


 黒炎の刃が宙を裂き、ガラハドを襲う。


「ぐっ……!」


 ガラハドは剣を振るい、防御する。


 だが、その衝撃は計り知れなかった。


「なんて力だ……!」


 聖騎士の剣が軋みを上げる。


「終わりよ。」


 セレスティアがとどめを刺そうとした、その瞬間――。


「やめなさい!」


 澄んだ声が響く。


 次の瞬間、金色の光が二人の間に割って入った。


「……!」


 セレスティアは目を細める。


 そこに立っていたのは、リリアだった。


「久しぶりね、セレスティア。」


 彼女は微笑んでいた。


「あなたとこうして対峙する日が来るとは思わなかったわ。」


「……いいえ、あなたはずっとこの時を待っていたのでしょう?」


 セレスティアは冷たい視線を向ける。


「私が生きていることを知りながら、私を討つ準備を進めていた……違う?」


 リリアは微笑みを崩さなかった。


「さて、どうかしら?」


「……ならば、聞くまでもないわね。」


 セレスティアの手に、再び黒炎が灯る。


「ここで決着をつけましょう、リリア。」


 リリアもまた、聖なる魔力を放ち、対峙する。


 聖女と悪女。


 二人の戦いが、ついに始まろうとしていた。

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