王城への侵入
牢獄を抜け出したセレスティアとルードは、王城の外へと続く地下通路を進んでいた。
長い石造りの道は湿気に満ち、壁には苔が生えている。
「この先を抜ければ、王城の庭園に出るはずです。」
ルードが低く呟く。
彼はまだセレスティアの新たな姿に完全には慣れていなかったが、主への忠誠は揺るがない。
「庭園に出れば、一旦身を隠す場所を探すわ。正面から攻めるにはまだ時が早い。」
セレスティアは冷静に戦略を考える。
今の彼女は強大な闇の魔力を手に入れているが、それをただ無謀に使うつもりはなかった。
だが、運命はそんな彼女を待ってはくれなかった。
「侵入者発見! 止まれ!」
突然、兵士たちの怒声が響く。
すでに逃げた牢獄からの異常が伝わっていたのだ。
「やれやれ……予定より少し早いわね。」
セレスティアは黒いマントを翻し、ゆっくりと振り返る。
彼女の指先に再び黒い炎が宿る。
「どうなさいますか?」
ルードが剣を構える。
「殺すか、恐怖で追い払うか……」
セレスティアは少し考え、微笑んだ。
「少し遊びましょう。」
彼女の瞳が深紅に光る。
次の瞬間、黒い魔法陣が地面に広がり、兵士たちの足元から漆黒の手が這い出した。
「うわっ……!」
「な、なんだこれは……!」
兵士たちは恐怖に包まれた。
彼らの足を掴む黒い手は、まるで亡霊のように呻きながら、彼らを地面へと引きずり込もうとしている。
「これは……闇の呪縛。」
セレスティアは優雅に歩を進めながら囁いた。
「私の力を恐れるがいいわ。」
兵士たちは次々と恐怖に耐えきれず、武器を手放し逃げ出していく。
「ふん、雑魚ばかりね。」
セレスティアは不敵に笑い、手を振ると闇の手が霧散した。
「さあ、王城へ向かいましょう。」
闇の魔術師の復讐劇は、まだ始まったばかりだった。