闇の魔術師、復讐の始まり
闇の炎を纏い、セレスティアは牢獄の外へと足を踏み出した。
長い廊下は石造りで冷え切っており、壁には鎖がぶら下がっている。かつて自分が処刑された王都の地下牢にいることを察し、彼女の唇が歪んだ。
「……この場所で死んだのね、私。」
手をかざせば、漆黒の炎が揺らめく。
かつての聖なる力は失われ、代わりに闇の力が彼女を包んでいた。
「悪くないわ。」
牢獄の奥からは、かすかな呻き声が聞こえてくる。
彼女は静かに歩を進め、その声の主を確認した。
そこには、痩せこけた男が鎖につながれていた。
その顔に見覚えがあった。
「……ルード?」
ルードはかつて聖騎士団の一員だった男だ。
彼はセレスティアに忠誠を誓っていたが、彼女が処刑された際、何もできなかった。
彼女が近づくと、ルードはうっすらと目を開けた。
「……誰……だ……?」
彼の目に映ったのは、かつての聖女とは異なる黒衣の女。
それでも、彼の中の何かが彼女の正体を訴えていた。
「まさか……セレスティア様……?」
彼女は微笑んだ。
「ええ、そうよ。」
ルードの目が驚愕に見開かれる。
「……だが、あなたは……死んだはず……!」
「そうね。でも、神は私を見捨てなかった。今度こそ、この手で復讐を果たすために。」
ルードの目に、かすかな希望の光が宿った。
「……ならば、俺も……あなたに付き従う……」
彼女は手を差し出した。
「いいわ。私の影となり、共に戦いなさい。」
ルードがその手を握ると、黒い魔力が彼の体を包み込む。
彼の衰弱した体に闇の魔術が流れ込み、新たな力を宿した。
「……これは……」
「闇の契約よ。あなたの命は私のもの。あなたが私を裏切らぬ限り、私はあなたを力で守るわ。」
ルードは力強く頷いた。
「セレスティア様……いや、新しき主よ。俺は誓おう。あなたの敵を討つと。」
「いい子ね。」
セレスティアは彼の頬を撫で、微笑んだ。
「さあ、まずはこの牢獄から出るわよ。」
黒い炎が燃え上がり、牢獄の扉が次々と焼け落ちる。
闇の魔術師としての第一歩。
そして、復讐の始まりだった。