闇の女王、革命の始まり
王城の夜が明けようとしていた。
セレスティアが王を打倒し、革命の火種が燎原の炎のように広がっていく。
王城の門前には、多くの民衆が集まっていた。
彼らの顔には希望と不安が入り混じった表情が浮かんでいる。
「……セレスティア様、本当にこれでよかったのでしょうか。」
ルードが隣で問いかける。
彼はセレスティアの判断を信じていたが、同時に懸念も抱いていた。
「王を殺さず、生かしたまま追放する。それが最善だったのか……。」
「それでよかったのよ。」
セレスティアは静かに答えた。
「王を殺せば、新たな憎しみが生まれる。それでは、私たちが壊そうとした“支配”の輪廻を繰り返すだけ。」
「……。」
「私は闇の力を使ったけれど、それは破壊のためではない。新しい時代を作るためよ。」
ルードはその言葉に深く頷いた。
「では、これからどうなさるのですか?」
「まずは、秩序を取り戻すわ。」
セレスティアは王城の門へと歩を進める。
民衆が静かに彼女の言葉を待っていた。
「聞きなさい!」
彼女の声が響く。
「王は失脚した! これからこの国は、新たな道を歩む!」
民衆の間からどよめきが起こる。
「……ですが、これからどうなるのですか!」
ひとりの老人が前に進み出て尋ねる。
「新たな支配者が現れるだけではないのですか?」
「違うわ。」
セレスティアは断言する。
「私は王にはならない。これからは、この国の未来を人々自身が決めるのよ。」
再び、ざわめきが起こる。
「では、あなたは……?」
「私は、闇の女王として、この国を外から見守る。」
その言葉に、民衆は驚きの表情を浮かべた。
だが、すぐに誰かが叫んだ。
「セレスティア様こそ、新しい国を導くべきではないか!」
「そうだ! あなたがいなければ、また権力者に支配される!」
「あなたがいなければ、何も変わらない!」
次々と民衆が声を上げる。
しかし、セレスティアは静かに首を振った。
「私は、闇に生きる者。この国を導くのは、あなたたち自身よ。」
そう言うと、彼女は背を向けた。
「私の役目は終わったわ。これからは、新しい時代を作るのはあなたたちよ。」
そう言い残し、彼女は王城を後にした。
――
数年後。
セレスティアの名は伝説となった。
王が倒れた後、民衆が立ち上がり、新たな政府が樹立された。
そして、闇の女王の名は、歴史の中に刻まれた。
しかし、彼女はどこかへ姿を消し、二度と公の場には現れなかった。
彼女はどこへ行ったのか。
それを知る者は、誰もいない。